今回は、久しぶりに訳詞を。
3月末の初来日にちなんで、BSR誌で、ウィリアム・ベルの曲を取り上げることになった。 私が候補として挙げたのは、「You Don't Miss Your Water」 (1961)、「Everybody Loves a Winner」 (1967)、「Trying to Love Two」 (1976)、そしてアルバート・キングが歌った「Born Under a Bad Sign」」 (1967) の4曲。
ベルは優れたソングライターで、ほかにもいい曲をたくさん書いているけど、ごくごく正攻法で選ぶと、こんなところじゃないすか。
4曲をから「Everybody〜」と「悪い星」の2つに絞って、両方の試訳をH編集長に送ったら、後者で行きましょう、という裁定が出た。 で、あぶれた前者のほうを手直しして、ここに掲載します。
ベルは、60年代後半にはよくブッカー・T・ジョーンズと組んで曲を書いてて、「Everybody〜」も「悪い星」もそう。 ベルが作詞、ブッカー・Tが作曲を担当というのが、基本パタンだったみたい。
ブッカー・Tは、ファンキーにもメロディアスにもなれる人で、この曲の美メロラインでもピアノのバッキングでも、後者の線で冴えたところを聞かせる。
曲はこちらへ。
William Bell - Everybody Loves a Winner:
https://www.youtube.com/watch?v=GrWVTpMm49k
ついでにカヴァーをいくつか:
LINDA RONSTADT ~ Everybody Loves A Winner:
https://www.youtube.com/watch?v=17F7gpJIdwc
Delaney & Bonnie Everybody Loves A Winner:
https://www.youtube.com/watch?v=FW7U9R52oa0
Dandy Livingstone - Everybody Loves A Winner (Trojan Reggae) :
https://www.youtube.com/watch?v=BC287LSA5is
でもって、対訳です。
みんな勝ったやつが大好きさ
おれにだって、人気者だったときはある
自信と自慢で、はち切れんばかりだった
たくさんの友だちが
おれのそばにぴったり寄りそっていた
でも、人気が落ちたら
友だちはみんな逃げ隠れするようになった
どこへ行っても
「こんちは」ということばと笑顔が迎えてくれた
それがなくなるときがくるなんて
思いもしなかった
友だちがおれを見限るようになり
笑顔はしかめ面に変わった
みんな勝ったやつが大好きさ
みんな勝ったやつが大好きさ
でも、負けたら人はひとりぼっち
恋人がいたこともあった
でもおれは、浮気者だった
その人の心を取り戻すためになら
どんなことだってするよ
愛して、そしてその愛をなくした
その代価をいま支払っているんだ
みんな勝ったやつが大好きさ
みんな勝ったやつが大好きさ
みんな勝ったやつが大好きさ
でも、負けたら、負けたら人はひとりぼっち
EVERYBODY LOVES A WINNER
Written by William Bell and Booker T. Jones
Recorded by William Bell in 1967
Once I had fame
Oh, I was full of pride
Had lots of friends
Always here right by my side
Well, my fame, oh, it died
Now, my friends all try to hide
Everybody loves a winner
Everybody loves a winner
But when you lose, you lose alone
Everywhere I turned
There was a hello and smile
I never thought
They'd be gone after a while
Well, my friends let me down
And the smiles turned to frowns
Everybody loves a winner
Everybody loves a winner
But when you lose, you lose alone
Once I had love
Ah, but I couldn't be true
To get back that love
There ain't nothing I wouldn't do
Well, I've loved, and I've lost
And now I'll pay the cost
Everybody loves a winner
Everybody loves a winner
Everybody loves a winner
But when you lose, you lose alone
昔からよくあるタイプの詞で、ベシー・スミスの「Nobody Knows You When You Down and Out」 (ニーナ・シモンやオーティス・レディング、ボビー・ウォマックなど多くのカヴァーがある) の系統の歌、という言い方もできるだろう。 ただし3番の、”でもおれは、浮気者だった”というくだりはたぶん、ベルの出世作の「You Don't Miss Your Water」を想い出させるための仕掛けなんだろうけど。
本名 William Yarborough、1939年、メンフィス生まれ。
「You Don't 〜」は22歳のときのスタックス初吹きこみで、以来54年間、アーティスト、ソングライター/プロデューサーとして、また1969年にジョージア州アトランタに引っ越してからは、Peachtree や Wilbe といったレーベルのオウナーとして、アクティヴな活動を続けている。
派手じゃないし、強烈なクセもないけど、繰り返し聞いても聞き飽きない、彼のヴォーカルの基調は「やさしさ」だと思う。
そのおかげで、この「みんな勝ったやつが大好きさ」も、歌詞の中身のわりに、ストレートな恨み節には聞こえない。 人生って、そういうもんなんだよね、あーあ・・・、という深い深い溜息。
そういう歌に聞こえる。 それが、ウィリアム・ベルの持ち味なのだ。
P.S.
右上は、ベルとブッカー・Tが、メンフィス・シンフォニー・オーケストラと共演している写真。
Wilbe レコードのHPに掲載されているものです。
http://wilbenews.blogspot.jp/2012/10/william-bell-booker-tjones-pr.html
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