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2015年02月24日22:48

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みんな勝ったやつが大好きさ


 今回は、久しぶりに訳詞を。
 3月末の初来日にちなんで、BSR誌で、ウィリアム・ベルの曲を取り上げることになった。 私が候補として挙げたのは、「You Don't Miss Your Water」 (1961)、「Everybody Loves a Winner」 (1967)、「Trying to Love Two」 (1976)、そしてアルバート・キングが歌った「Born Under a Bad Sign」」 (1967) の4曲。
 ベルは優れたソングライターで、ほかにもいい曲をたくさん書いているけど、ごくごく正攻法で選ぶと、こんなところじゃないすか。
 4曲をから「Everybody〜」と「悪い星」の2つに絞って、両方の試訳をH編集長に送ったら、後者で行きましょう、という裁定が出た。 で、あぶれた前者のほうを手直しして、ここに掲載します。

 ベルは、60年代後半にはよくブッカー・T・ジョーンズと組んで曲を書いてて、「Everybody〜」も「悪い星」もそう。 ベルが作詞、ブッカー・Tが作曲を担当というのが、基本パタンだったみたい。
 ブッカー・Tは、ファンキーにもメロディアスにもなれる人で、この曲の美メロラインでもピアノのバッキングでも、後者の線で冴えたところを聞かせる。

 曲はこちらへ。
 William Bell - Everybody Loves a Winner:
 https://www.youtube.com/watch?v=GrWVTpMm49k

 ついでにカヴァーをいくつか:
 LINDA RONSTADT ~ Everybody Loves A Winner:
 https://www.youtube.com/watch?v=17F7gpJIdwc
 Delaney & Bonnie Everybody Loves A Winner:
 https://www.youtube.com/watch?v=FW7U9R52oa0
 Dandy Livingstone - Everybody Loves A Winner (Trojan Reggae) :
 https://www.youtube.com/watch?v=BC287LSA5is

 でもって、対訳です。


 みんな勝ったやつが大好きさ

 おれにだって、人気者だったときはある
 自信と自慢で、はち切れんばかりだった
 たくさんの友だちが
 おれのそばにぴったり寄りそっていた
 でも、人気が落ちたら
 友だちはみんな逃げ隠れするようになった

 どこへ行っても
 「こんちは」ということばと笑顔が迎えてくれた
 それがなくなるときがくるなんて
 思いもしなかった
 友だちがおれを見限るようになり
 笑顔はしかめ面に変わった

 みんな勝ったやつが大好きさ
 みんな勝ったやつが大好きさ
 でも、負けたら人はひとりぼっち

 恋人がいたこともあった
 でもおれは、浮気者だった
 その人の心を取り戻すためになら
 どんなことだってするよ
 愛して、そしてその愛をなくした
 その代価をいま支払っているんだ

 みんな勝ったやつが大好きさ
 みんな勝ったやつが大好きさ
 みんな勝ったやつが大好きさ
 でも、負けたら、負けたら人はひとりぼっち

 EVERYBODY LOVES A WINNER
 Written by William Bell and Booker T. Jones
 Recorded by William Bell in 1967

 Once I had fame
 Oh, I was full of pride
 Had lots of friends
 Always here right by my side
 Well, my fame, oh, it died
 Now, my friends all try to hide

 Everybody loves a winner
 Everybody loves a winner
 But when you lose, you lose alone

 Everywhere I turned
 There was a hello and smile
 I never thought
 They'd be gone after a while
 Well, my friends let me down
 And the smiles turned to frowns

 Everybody loves a winner
 Everybody loves a winner
 But when you lose, you lose alone

 Once I had love
 Ah, but I couldn't be true
 To get back that love
 There ain't nothing I wouldn't do
 Well, I've loved, and I've lost
 And now I'll pay the cost

 Everybody loves a winner
 Everybody loves a winner
 Everybody loves a winner
 But when you lose, you lose alone

 
 昔からよくあるタイプの詞で、ベシー・スミスの「Nobody Knows You When You Down and Out」  (ニーナ・シモンやオーティス・レディング、ボビー・ウォマックなど多くのカヴァーがある)  の系統の歌、という言い方もできるだろう。 ただし3番の、”でもおれは、浮気者だった”というくだりはたぶん、ベルの出世作の「You Don't Miss Your Water」を想い出させるための仕掛けなんだろうけど。

 本名 William Yarborough、1939年、メンフィス生まれ。
 「You Don't 〜」は22歳のときのスタックス初吹きこみで、以来54年間、アーティスト、ソングライター/プロデューサーとして、また1969年にジョージア州アトランタに引っ越してからは、Peachtree や Wilbe といったレーベルのオウナーとして、アクティヴな活動を続けている。
 派手じゃないし、強烈なクセもないけど、繰り返し聞いても聞き飽きない、彼のヴォーカルの基調は「やさしさ」だと思う。
 そのおかげで、この「みんな勝ったやつが大好きさ」も、歌詞の中身のわりに、ストレートな恨み節には聞こえない。 人生って、そういうもんなんだよね、あーあ・・・、という深い深い溜息。
 そういう歌に聞こえる。 それが、ウィリアム・ベルの持ち味なのだ。
 
P.S.
 右上は、ベルとブッカー・Tが、メンフィス・シンフォニー・オーケストラと共演している写真。 
 Wilbe レコードのHPに掲載されているものです。  http://wilbenews.blogspot.jp/2012/10/william-bell-booker-tjones-pr.html

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