私は耳が悪い代わり、嗅覚が異常なほど発達しており、その超能力のひとつはあらゆるシーンで活躍している。
そのなかでも最も得意としているのが、相手の感情の匂いを嗅ぎ取ることである。
怒り、哀しみ、笑い、悦び・・・それぞれの匂いがどんなものか少しでも想像がつくであろうか?
従って、クチではきれいごとを並べていても、匂いだけでああ、もうこのヒトとはやっていけないなと気づいてしまうことがあるし、相手の感情を演奏して残酷に匂いの色彩を愉しむこともある。
私の周囲は未成年ばかりなので、総じて乳臭い。比喩に聞こえるだろうが、ほんとうにミルキーな匂いがするのである。メラニンが沈着していない幼い肌がそう匂わせるのか、コドモ特有のピュアな感情がそう匂わせるのかは分からない。多分両方だろう。
最近、私の鋭い嗅覚に挑戦状をたたきつけるかのように、濃密な香り漂う達筆なお手紙を頂いた。差出人はマイミクさんでJDである。JKの頃に知り合った方で、当時から変人のケがあった。変人どうし馬が合ったわけで、親しくおつきあいさせているのだけれども、この匂いが私の匂いですと言われるのは初めてだった。
それはつまりそういうことなのである。
私は彼女を匂い愛人にするだろう。濃厚な匂いのなかに彼女の様々な感情を嗅ぎ取ることだろう。そのなかで悦びの匂いをじっくり育てて、他の何よりもはるかに濃厚な香りを放つようにするだろう。
彼女は私のなかで貌を咲かせ、心を花開かせて、そのかぐわしい深淵をのぞかせるだろう。
それは常人がやるような、お互いの性器をこすりつけあうような単純な性行為を真正面から裏切る、誇り高い不毛の歓喜なのである。射精なき絶頂であり、オーガズムなき性的興奮なのである。
その果てに、彼女もまた私のように嗅覚が鋭くなるであろう。
私の嗅ぎ方は感染するのだから。
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