mixiユーザー(id:6859258)

2014年11月10日16:41

60 view

「 トワイライト ささらさや 」

 
「用意しといて、良かっただろ。
何をって? とぼけなさんな。
ティッシュだよ、ティッシュ。 何枚も使ってたね〜」


少し感じは違うが、こんな風な口調で進行役を務めるのは、幽霊となった噺家のユウタロウ(大泉 洋)。
【 突然の事故でこの世を去った彼は、愛する妻・サヤ(新垣結衣) と生後2ヶ月の赤ん坊・ユウスケの事が気がかりで成仏できず、霊の見える人の体に入りその人ごとに一度だけ数時間のみ甦ることが出来るのだった。 】

予告編でも泣かされかけたので、覚悟はしていた。
期待していた(笑)。
それ以上だった。
3度も4度も、鼻をかんだ。

【 葬儀の日、死んだと聞かされていたユウタロウの父(石橋 凌) が突然やって来て、「女手ひとつで育てるのは無理だろうから赤ん坊を引き取ろう」 とサヤに迫る。 その時、ある人に乗り移ったユウタロウは、サヤ母子を会場から逃がし、どこか遠い街へ移るように言う。
母子が電車から降りたったのは、” ささら ” という町だった。 】

語り口が上手い。
惚れ惚れするぐらい。
泣かされながら、その一連の流れで、すぐ後には笑わされてしまうことも。
監督は、深川栄洋。
山室有紀子さん(「長い散歩」 「武士の献立」等) と共同で脚本も担当しています。

加納朋子さんの原作小説は、数年前に読了。
面白く読んだものの、泣かされそうになるほどではありませんでした。
映画的に大胆にアレンジした脚本の巧みさを讃えたいと思います。

役者でまず取り上げたいのは、富司純子さん。
乗り移られた時の演技が見事だし、その後に、あそこまでよれよれになった姿をさらけ出すなんて・・・・!
脱帽です。
私が映画賞の予想で名前を挙げて応援する人が受賞する事が多い、という印象の 『報知映画賞』 で助演女優賞に選ばれるかも。

主演の2人も、なかなかのものでした。
大泉 洋さんは、見せ場となる乗り移りシーンはその俳優が頑張りその俳優が光っていたため、「清須会議」 や 「青天の霹靂」 ほどではなかったものの、やはり、彼が演じたからこそこれだけ温かい作品になったのでしょう。

嬉しい誤算は、新垣結衣。
ガッキーがすごく良かったのです。
女優としての素晴らしさを感じたのは、もしかして初めてかもしれません。
今夏に撮影されていた彼女の最新主演作 「くちびるに歌を」 の来年の公開が、かなり楽しみになってきました。
そして、赤ちゃんが無意識の名演技を披露しているのは言うまでもありません。

ところで、本作を鑑賞したのは、公開2日目の日曜日(9日)。
【1ヶ月フリーパスポート】 は今月1日で期限切れになったし通常ならメンズデーの木曜日まで待って観るのですが、TOHOシネマズの会員向けキャンペーンで今月は10日間ほど1100円で観られる日が増やされており、それに該当したので有難く利用した次第。
もしフリーパスの使える期間だったなら、2度目に足を運ぼうと思ったかもしれません。

そうそう、紙一重で危うく陳腐なものになりそうな不思議な美術が、面白い味わいを醸し出していました。
決して探せない感じの風景ではないのにロケでの実写にせず、ジオラマで撮っている場面が幾つも出てくるのです。
却って、手間暇がかかったことでしょう。
ああしたことで、物語の舞台 ” ささら ” により自然に入っていけたのでした。

母親は、赤ん坊に育てられると言います。
サヤもいつしかちゃんとした母親へと成長しますが、それは取りも直さず、ユウタロウの成仏する時が来たということ。
彼が、最後に乗り移ったのは――。

深川作品は、やはり見逃せません。


「せっかちだねえ、エンドクレジットで監督の名前が出るか出ないかの時に、席を立つなんて。
もっとゆっくりと余韻を楽しみ、場内が明るくなってからにすりゃ、イイのに。
え? 泣いた顔を、他のお客さんに観られるのが恥ずかしいからだって?
なら、仕方ねえな」


 
2 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する