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2014年11月07日17:52

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豊中市史跡巡り21　豊中稲荷　／　金禅寺

　10月26日日曜日は、阪急バス豊中本町４丁目BSで下車後、豊中稲荷神社〔村社〕へ向かいました。宇迦御魂神(ｳｶﾉﾐﾀﾏﾉｶﾐ)の外、天照皇大神(ｱﾏﾃﾗｽｵｵﾐｶﾐ)と月読命(ﾂｸﾖﾐﾉﾐｺﾄ)も祭ります。

　この近くの本町８丁目付近には新免廃寺とも呼ばれる金寺(ｶﾅﾃﾞﾗ)がありました。伝承では、奈良時代に行基菩薩が開いたとされていますが、実際には飛鳥時代後期まで遡る古刹でした。その金寺へ鎌倉時代に五摂家筆頭近衛家から寺領数十町歩の寄進があった際に、守護神として勧請(ｶﾝｼﾞｮｳ)されのが豊中稲荷の始まりだとされています。

　以後、三車之荘（新免乃荘）の産土神(ｳﾌﾞｽﾅｶﾞﾐ)として栄えましたが、永正元(1504)年、室町幕府第10代将軍足利義稙(ﾖｼﾀﾈ)により社領を没収され、荒廃したとされます。しかし、当時の義稙は管領細川政元に追われて周防国に逐電中だったんですけどね…。

　更に天正６(1578)年、織田信長が伊丹城の荒木村重攻略に当たり、高山右近に命じて摂津国一円の社寺を焼き払わせたため、当社の宝物も、神璽を除き烏有に帰してしまいました。

　その後、仮殿を経て慶安４(1651)年に再建されたものの、往時に比べればささやかな小社に零落してしまいましたが、昭和45(1970)年に至り、再建320周年記念行事として幣殿・拝殿・社務所を改築し、本殿は旧来のままで覆殿を新築しました。

　境内の南隣は稲荷山公園となっており、豊中市中枢部に於ける貴重な緑の空間となっています。

　続いて、豊中稲荷の南方にある黄檗宗大應山金禅寺へ向かいました。

　金禅寺は、金寺の法灯を継ぐ寺院です。金寺は荒木村重の乱で焼亡してしまいましたが、江戸時代に入り、この一帯を飛び領地として支配していた上総国飯野藩主保科正景(ﾎｼﾅﾏｻｶｹﾞ)が、寛文11(1671)年に摂津国大坂難波の瑞龍寺の鉄眼禅師に依頼して復興、山城国宇治の黄檗山万福寺の末寺に属しめました。

　その後、文化３(1806)年に火災で焼失、再建されたものの、小規模な寺院となってしまいました。

　金禅寺の本堂右前には在銘の三重宝篋印塔〔重要文化財〕があります。塔は各部分とも花崗岩を用材とし、現在失われている相輪の部分を加えて六個の部材から出来ていました。初笠の上端に第二層塔身を、第二層塔身の上に第三層塔身をそれぞれ造り出し、笠の上端にある造り出しの段型は、二段・三段となっています。初層塔身の四面の四仏は一面が像容で三面が梵字で現されています。基礎の一面には刻銘があり、貞和５(1349)年の年号が記されているため、金禅寺前身の金寺の時代に、数十人の信者が浄財を出しあって建立したと推定されています。

　金禅寺の本堂中央の厨子(ｽﾞｼ)の内部に秘仏として安置されているのが、木造十一面観音立像〔大阪府指定文化財〕です。
　本像は、左手に宝瓶(ﾎｳﾋﾞｮｳ)を持ち、右手は下に垂れ、掌を外に向け、与顔(ﾖｶﾞﾝ)のに印相を示しています。像高は145.8cmで、桧材の寄木造(ﾖｾｷﾞﾂﾞｸﾘ)です。口髭・顎鬚(ｱｺﾞﾋｹﾞ)と両肩の上に垂れた頭髪を墨で描いた形跡が見られる外は、彩色は殆ど無く、素地のままです。目には玉眼を、白毫(ﾋﾞｬｸｺﾞｳ)には水晶を嵌入(ｶﾝﾆｭｳ)しています。容貌は生々しく表現され、衣紋(ｴﾓﾝ)も力強く彫り出されています。頭内四面には陀羅尼(ﾀﾞﾗﾆ)のような梵文があり、胎内四面にも観音経・般若心経等が書かれています。また、胎内の左太股のあたりに、正安２(1300)年の墨書きがあり、金禅寺の前身の金寺の仏像であった事が明らかです。

　次に、阪急豊中駅に近い浄土真宗大谷派四明山三車院看景寺(ｶﾝｹｲｼﾞ)へ赴きました。

　この寺院は金寺の塔頭(ﾀｯﾁｭｳ)の一つだと伝えられます。

　看景寺境内には金寺廃寺塔刹柱礎石(ｶﾅﾃﾞﾗﾊｲｼﾞﾄｳｻｯﾁｭｳｿｾｷ)〔大阪府指定文化財〕があります。

　この礎石は文化年間(1804～18)に近くでこの辺りで発見されて看景寺へ移置され、手水鉢(ﾁｮｳｽﾞﾊﾞﾁ)として利用されていた物で、金寺山廃寺の塔の心礎(ｼﾝｿ)と推定されています。
　長さ約200㎝・幅170㎝・高さ70cmを測る花崗岩の自然石の上面に、径64cm・深さ11cmの柱穴を穿(ｳｶﾞ)ち、さらにその中央に径10cm・深さ8cmの小穴を設けて舎利穴としています。この構造は飛鳥時代後期に盛行する型式とされており、金寺廃寺跡出土の最古形式の瓦が飛鳥時代後期の物と見られる事と合わせて、金寺の創建年代を推察する貴重な手掛かりとなっています。