ストーリーに興味があったので、「蜩の記」を映画館で見てきた。
3年後に切腹を命じられた、役所公司演じる侍の日常を描いたちょっと救いがない映画。
死の時期が判ってしまった人間が残された人生でどのような行動をとるか、興味があるのでこの映画を見たいと思った。
しかし、実際に映画を見てみると、ストーリーの中心は、死の時期が判ってしまった人間が残された人生でどのような行動をとるかというよりも、役所公司演じる侍がどうして、3年後に切腹しなければならなくなったのかの謎解きが中心であることが判り、ちょっと期待外れ。
今をときめく映画スター、岡田准一も堀北真希も、あまりに地味な脚本のせいか、ほぼノーメークで、映画の前半は音楽もなく、役者のセリフだけでたんたんと進んでいく。
私は映画の素人だが、地味な脚本にも関わらず、観客を飽きさせないために、激しい祭りのシーンや、鮮やかな居合抜きのシーンや、美しい日本の自然などが、要所要所で効果的に使われていた。このような観客を飽きさせない工夫が無いと、この作品は単調でつまらない映画になってしまっただろう。
ラストの40分は、それまでの単調さを打ち破り、ストーリーが急展開し、クライマックスでは観客の目をくぎ付けにさせる。なるほどと感心させられた。
ネタバレすると迷惑をかける人がいるかも知れないので、詳細は書かないが、映画の結末にはがっかりした。もっと別の終り方もあったと思うのだが、、、
個人の命よりも、お家が大事とされた江戸時代の物語である。
現代では起こりえないおとぎ話なのだが、それでもこの空想の物語が胸を打つのは、主人公の役所公司演じる侍がまったく非の打ち所がない善人として描かれているからだろう。非の打ち所がない善人が冤罪で死刑になる不条理な話には誰でも涙する。
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