先日、映画監督の鈴木則文氏が亡くなったニュースを受けて、私のなかで完全消滅したものがある。浅草名画座である。2012年10月21日に閉館したのだけれど、一年とちょっとではまだあるような、ないような曖昧とした感覚だった。子供の頃からヤクザ映画の三本立てを観に行ったなじみ深い映画館だからで、鈴木則文監督の緋牡丹お竜からトラック野郎まで観た。
以下の画像は名画座以外で観た作品である。
後年、マンガ原作の映画が多く、原作ファンは顰蹙以外のリアクションを見せなかったが、私は邦画ならではの泥臭さそのものを愉しみに観に行っていたので、そんなに拒絶反応は出なかった。
その通り、鈴木則文監督は戦後邦画の娯楽専門の職人的存在であった。
ゲージツに走ったATG組、インディーズ組と違って、会社の意向に従って撮るものを淡々と撮る。それゆえに、彼の名前が俳優たちより広く知られなかったのである。監督に徹した、監督のなかの監督・・・みんながグイグイ前へ出たがるなか、独り黙々と銭湯の壁にペンキで富士山を描くような行為を続けてきた・・・
そんな偉大な男が静かにこの世を去ってしまった。浅草名画座はこれからドンドンおぼろげな記憶となってしまうだろう。あらためて合掌、南無阿弥陀仏。
犬神図書館には鈴木則文監督作品をほとんど揃えてあるので、この機会に観たい方は是非。以下にプロフィールのサイトを。
http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=120764
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