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2014年04月01日01:17

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OさんとSさん

大阪の北新地に畳4畳ほどの大きさ
しかないバーがある。
名前はない、ここは隠れ家的飲み屋
なので入り口には白い張り紙で
「入るな」と書いてある。

ここは世俗から離れてゆっくり
過ごしたいものが通う店であって
マスターも話さないし、客同士も
会話しないのである。

先日、店に行くととても小綺麗な女性が
カウンターにうつむいて
いたのでどうしたのかと思っていた。
気分でも悪いのかと声を掛けると
あのSTAP細胞で名を馳せたO女史
その人だった。

聞くと研究所で四六時中監視されて
いたのだがトイレと偽って逃げ出して来た
のだそうだ。彼女は世話になった
教授たちへの愚痴と不満を語った。
彼女は他の教授たちが女子研究者に
セクハラをしていることや、
女子研究者たちも教授に気に入られるために
ボディタッチや胸元のあいた服
短いスカートとめかしこんでいると言った。
論文なんてコピペは大学の頃から
他の生徒もやっていたし教授も
気がつかなかったそうである。

それでも、あそこまで世間を騒がせた以上は
公で謝罪すべきでしょう。
研究は最初からやり直すしかない。
と返すと、
何でハーバード大学を出た私が
謝らなくちゃいけないの?
私は何も知らなかったんだもん。

この対応にカチンと来た私は
知らないなんて言い訳だと
反論するも
私のことをわかってくれる人は
もうこの世にいない。
私は孤独のまま死んでいく。
と彼女は言った。

そこへ、カクテルグラスがやって来た。
あちらのお客様からですとマスターが
振り向いた先に、黒いスーツの男がいた。
まさにあのゴーストライター問題で
一躍天才から悪人に落ちたSさんであった。

Sさん今までの会話を全て聞いていたと
仰天発言した。
あんた、やっぱり耳が聞こえるんじゃないか!嘘つき作曲家め!
そう言ったのだが、彼は聞こえませんと
返した。

SさんはOさんの隣に座り
会話は世間への愚痴と、
マスコミへの批判、
さらに誰だって間違いの一つや二つ
あるという共通認識の元
意気投合していた。

周りの人間は黙っているが
二人の会話に煮え切らない
何かを感じていた。

夜3時を回って、Sさんは右手にOさんの
細い腕を抱えて店を出て行った。
2人が同じ時期に同じ苦しみを味わったのは
運命だとOさんはSさんに言った。

2人がどこへ行ったのか
誰も知らない。
知りたくもなかった。

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