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2014年03月06日18:35

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はっせん様のこと。

フォト


画像は念仏銭といって絵銭のひとつである。
私が持っているのは平仮名のタイプで一銭銅貨と同じくらいの大きさだ。

フォト


といっても昭和のちっちゃいやつではなく、明治のでかいやつだから、百円玉より大き目と思って頂きたい。

私が小学二年生の頃、新潟は直江津市(現在は上越市)の戦前から建っている労働者用の木造アパートに連れて行かれて、その一室で開かれていた祈祷会(親戚が主催していた)にてつんぼ(聴覚障害)が治りますように〜と榊の葉っぱでアタマやらカラダやらをナデナデされたのだが、念仏銭はその時もらったものだ。
それを親戚は「念仏銭」とは言わずに「はっせん様」と言っていた。

はっせん様とは何か。源流を辿れば一遍上人の踊り念仏にたどり着くのだそうで、

一遍

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E9%81%8D

要は最下層の民衆のために念仏を唱えるものである。明治時代までは車夫などで食べていた日雇い労働者、怪我や病気で働けなくなったもの、そして生まれながらの障害者が死ぬと、海岸を伝ってはっせん様が鐘を鳴らしながら現れたのだそうである。そうして念仏銭を八銭分支払って(おもちゃの銭なので実際は無報酬である)、死者の前に座ってもらって唱えてもらったり、一晩じゅう踊り明かしてもらったりする。
はっせん様もまた最下層のもので、砂浜に建てた掘立小屋などを住処にしていたらしい。
私は木造アパートの襖に貼られた半紙にはっせん様の絵図が描かれているのを見たことを思い出す度に、妖怪のようにデフォルメされた人間のかたちを愛おしく想う。

ひとつ目であったり、巨大な顔であったり、一本足であったり・・・

そして大きくなってから母方の菩提寺浄林寺(浄土宗)がある高田市(こちらも現在は上越市)に出向いて、明治元年生まれだという老人にはっせん様の念仏歌を聴かせてもらった。

なんまいだ なんまいだ なんまいだ 死んでうれしい地獄極楽 なんまいだ
なんまいだ なんまいだ なんまいだ 生きてくるしい修羅畜生 なんまいだ
なんまいだ なんまいだ なんまいだ こちらにようこそ なんまいだ
なんまいだ なんまいだ なんまいだ あちらにさよなら なんまいだ


これをひたすら繰り返すのである。

「何と言いますか・・・貧乏人の方が楽しく死ねそうですね!」と当時の私。
「そりゃそうよ、富山のやつら(富山は金持ちが多いため仏壇からして巨大で立派である)とは違うんじゃ。あいつら見栄張って泣き真似しよるが、こっちは楽しく死ねるからその分真っ正直にあの世に行けるんじゃ」と老人。

私は今、手のうちで念仏銭を転がす度に、楽しく死ぬためにいかに生きるべきかを考える。
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