H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて』の映画化を長年にわたって熱望してきたものの、テーマが似ている「プロメテウス」が製作されるというニュースを聞き、一度は断念を明言したギレルモ・デル・トロ監督だが、最新のインタビューではその考えを改め、再び映画化実現に意欲を燃やしていることを明らかにした模様。また、かねてから名前の挙がっているトム・クルーズも、依然としてプロジェクトに関わっていることも明らかにした模様。
ラヴクラフトはドラキュラ、狼男、フランケンシュタイン、その他の怪物どもを使い切った映画界において、いまだ、未知の世界であり続けている。
確かに映画化されたラヴクラフト作品は多い。しかし、「完全映画化」されたものは皆無である。どれもがイメージをほんの少し頂戴したものとしかいえないし、ラヴクラフトにこだわり続けているスチュアート・ゴードン監督でさえ不完全燃焼であった。
ジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X」の登場で、ラヴクラフト作品の映像化の実現に望みが持たれたのはすでに遠い昔の話で、リドリー・スコット監督の「プロメテウス」でようやくラヴクラフト自身が終生夢想していた宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)の表現にメドがついたといっていいくらいなのだ。
それだけラヴクラフトの世界は映像化が難しいのである。
それだけに。
最新作「パシフィック・リム」以降、ギレルモ・デル・トロが一度は断念した「狂気の山脈にて」に再挑戦しているという今回のニュースを私は大いに歓迎したい。
「狂気の山脈」については以下のウィキをご参照あれ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%82%E6%B0%97%E3%81%AE%E5%B1%B1%E8%84%88%E3%81%AB%E3%81%A6
私は小学五年生の時に創元推理文庫の「ラヴクラフト傑作集」二巻組(この後ラヴクラフト全集として続刊)でタイトルのみを知り、一体どんなハナシなんだろうと胸を躍らせながら、1985年に全集の第四巻でついにその全貌を読むことが出来た。
アメリカの幻想小説の最高傑作である。
私がギレルモに期待するのは、レトロに対して美学を持っている人なので、1930年代の、ラヴクラフトが書いた時代そのままに再現してくれるだろうという点だ。
今までにラヴクラフトが書いた時代そのままに映画化した作品はひとつもないので、そのへんは特に期待したい。
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