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2011年09月16日20:08

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藤十郎百怪夜話 其の六 「処女妊娠」

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江戸時代には、八歳で子供を産んだ小娘もあるのであるから、十五歳の少女が出産をしたからといって、別に不思議はないのであるが、同少女が純真の処女であるという点に不思議さがあるのである。「処女妊娠」などということは、事実有り得べからざることであるが、その奇怪な謎が、手術によって解かれた。しかし、その解かれた謎の結果も、実に前代未聞の奇怪な事実であったのである。
別府市野口病院へ、十五歳の少女が入院したが、その少女は処女であるのに、不思議にもお腹がふくれ出したのであった。
そこで、同医院で腹部の切開手術を行ったところ、奇妙にも、異様な胎児が取り出されたのであった。正に処女のお腹から胎児が出たのであるから奇怪である。この謎は、同院の尾見薫博士によって解かれた。同博士の談によれば、
「同少女は、母親の胎内にあった時、双生児であったもので、一方の胎児が、他の胎児の卵巣のなかに迷い込んだものを、母親が産み出した。この畸形児が、十五年の間この少女の腹のなかに宿っていたという珍しい実例である」といっている。
なお右の少女は、そのころ高熱になやみ、入院したもので、入院後も重態であったが、手術後は経過良好に向かったという。とにかく、世にも不思議な双生児があったものである。

(大正十四年 蒐集記録)


久しぶりの祖父の妖怪スクラップよりの抜粋。
祖父は妖怪、幽霊の記事だけでなく、こうした「奇胎」ものも好んで切り抜いていた。
今回の記事の後に、祖父はこう書き加えている。

“人間の死は確実だが、人間の誕生は一か八かなのだ”

どんなに医学が進歩しても、人体の驚異はまだまだ完全には解き明かされていない。
従って、どんな結果になろうとも、それを受け止めて生きる心が肝要である、と。
ショックのあまり、呪術、祈祷に走ったり、おのれの因果応報を気に病んだりするのは、しょうがないことかもしれないが、非生産的だ。

精神論を説く祖父の考え方は全くその通りで、奇胎、即ち奇形嚢腫から生まれたという設定のピノコも心の強さがなければとっくの昔に死んでいただろう。

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人間は想像以上にシュルレアリスティックな存在なのだ。


以下、「藤十郎百怪夜話」のバックナンバーを貼っておきます。興味を持たれたら是非。

藤十郎百怪夜話 其の一 「怪婆」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1089198329&owner_id=1640816

藤十郎百怪夜話 其の二 「かみきり」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1089675382&owner_id=1640816

藤十郎百怪夜話 其の三 「神木の祟り」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1096788088&owner_id=1640816

藤十郎百怪夜話 其の四 「風の神の袋」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1503218612&owner_id=1640816

藤十郎百怪夜話 其の五 「王子砲兵工廠妖怪事件」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1536450799&owner_id=1640816






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