mixiユーザー(id:1640816)

2010年05月21日22:36

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イタコが追いかけてくる。

今日みたいな思いっきり夏を感じる日は、せめて気分だけでも涼をとろうとあちこちで怖い話をし出す現象が起きる。
マイミクさんたちも例外ではなく、三人も怖い話をアップしていて真に迫っていた。

そこで私も怖い話を。

母方の本家は祈祷師を生業にしているので、幼少の頃から拝み屋だのイタコだの霊能者だのうさんくさい連中を目の当たりにしてきたのだが、そういう人たちが語って聞かせた話のなかには、うさんくさくも何ともない、背筋が凍るような剣呑なものがあった。
今夜語るのは、いちばん飛び抜けたものなので、怖い話が苦手な方はここで読むのをやめることをオススメする。


・・・・・・

フォト


青森は黒石温泉。
親戚の妹弟子のイタコのHさんが危篤状態になり、親戚が向かって顔面蒼白になって帰ってきた。
当時幼かった母は、一週間も伏せる親戚を心配してミカンなどを寝所まで運んだそうだが、親戚がなにゆえにそうなったのかは単に恐ろしい思いをしたとしか知らされていなかった。
でも私は従姉とともにひばり書房などの怪奇マンガに耽溺していたから、親戚は大丈夫と思ったのだろう、心のなかにしまっておいた秘話をぼそりぼそりと話してくれた。

Hさんのところに刑務所から出所したての男が訪ねて、結婚の約束をしておいて殺した女の霊を呼び出して欲しいと言ってきたので、理由を聞くと直接謝りたいと。
それでHさんは女の霊を呼び寄せた。口寄せのあいだは自分が自分でなくなる感じで、それがために必ず助手を脇に置いて何と言っているのかを伝えてもらうのだが、突然の身体じゅうの激痛と激しい疲労感ではっと我に返ると、助手はおらず、それどころか雪降るなかにへたり込んで、木の電柱の真下で上を見上げていることに気がついた。
電柱の上には口寄せを依頼した男がのぼっていて、しっかり抱きついていて離れなかったので、警察がやっとの思いで降ろすと、すでに硬直していて死んでいた。死因は心臓麻痺で、何か極度に恐ろしい目にあったに違いないと。
助手はHさんに張り倒されて気絶していて、回復を待って事情を聞いてみるとこうであった。

六十近い身で若者のようにすっくと立ち上がると、自分をしたたかに張り倒し、いきなり男に飛びかかって首をぐいぐいと絞めあげたのだそうである。そこまでしか目にしなかったのだそうだが、話の流れからHさんは老人とは思えぬ体力で逃げる男を追いかけ、電柱まで追い詰めたのだろうと。

全く因果応報な話で、警察も不問にしたのだが、親戚が恐怖のあまり伏せったのは別の理由だった。
Hさんの告白を聞いて、Hさんは最初から霊を呼び寄せなかったことを知ったのであった。

殺人犯に対する怒りがHさんを発奮させたのだろうか?
そうではなかった。

男が殺した女はすでに降りていたのである。
男自身に・・・
それで、Hさんは男から霊を離そうと飛びかかったのだが、間違って助手を張り倒してしまい、その隙に男は逃げ、後を追いかけると、男の背中には女の霊がおぶさり、男はHさんではなく、背中の女の顔に恐怖の悲鳴をあげていたのだった。

語り終えると、Hさんはふっと息をつき、二度と覚めることのない眠りについたのだが、親戚は帰る際に玄関に一人の見知らぬ女が立っているのに気がついて、視線も合わさずに一心不乱に駅まで駆けて、汽車に飛び乗ったそうである。

それを聞いた当時の私は、思わず両手で鳥肌が立った自分の腕を強く擦って温めた。それから辺りを見回したが、親戚以外には誰もいなかった。
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