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2010年03月08日13:24

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殺人プレイは秘密会員制になりました。

2003年06月11日(水)

ミッドナイト・ミートトレインのこと。

今日は以前から約束していた友人につきあうことにした。仕事の帰りに松戸駅で待ち合わせる。駅前の聖徳大学の近くに風俗店をオープンするので、その前にモニターになってほしいとのことだった。ジャンルはイメクラで、店のウリはありきたりのプレイに加えて、殺人プレイという秘密オプションがあること。もちろん、実際に殺すわけではない。マイクロマウスのPCゲームにポスタルという殺人ゲームがあるが、あれと同じように殺人のまね事をしてもらって、ストレス発散をして頂こうというプレイだ。
「最近、通り魔など陰惨な事件が続いてるでしょ。そこに目をつけてね」
「風俗もここまでしないと大変なんだね」
女の子は全部で十人いるそうだが、今日はモニターの私しかいないので、三人しか来ていなかった。齢は二十代前後というところだろうか。三人とも裸足にパンティ、Tシャツという格好だった。
元々は韓国人専用のカラオケ店だったというその店の内部は、四畳半くらいの広さの個室が五つあり、その手前にはまだ内装工事の仕上げ前だが、待機する客たちが退屈しないように酒や軽食などを注文してくづろげるようなボックス席が用意されてあった。
私は友人をボックス席に残し、三人の女の子と部屋の一つに入った。これまた内装工事の真っ最中だろうか?壁紙がところどころ破れてて、床はいたるところゴミだらけである。妙な形に膨らんだ黒いビニール袋がいくつか見えたところで、ははあと気がついた。
「袋小路をイメージした部屋かい?」
「そうでーす」
「殺人はたいてい袋小路で行われるからね、都会の路では」
「ねえねえ、店長のお友達ということだけど、こういうことに詳しいの?」
「風俗に?それとも殺人に?」
私が意味深ににやりと笑ってみせると、三人ともウッと黙り、喉をゴクリと鳴らした。一人がえへへと笑ってみせる。
「どっちも?」
「そうだね。だからこそ、私がモニターとして呼ばれたんだ」
他の四つの部屋は、吊り革と座席を持ち込んで電車をイメージしたもの、人工芝を敷いて壁に青空の写真を貼って野原をイメージしたもの、黒板と机を持ち込んで教室をイメージしたもの、流しとテーブルを持ち込んでキッチンをイメージしたものだった。普通のプレイでおなじみのものばかりだった。
「すると、この一番奥の五番目の部屋が殺人プレイ専用の部屋というわけだ」
「他の部屋でも殺人プレイは出来るんだけど、五番目は店長がどうしてもそれしか思いつかなかったんだって。あんなとこ、普通のプレイなんて出来やしないよねー」
「強姦を普通のプレイと呼んでいいのなら、そういうのもアリさ」
ああ、なるほどという声が三人から漏れた。私たちはボックス席に戻り、私は店長に友人として率直な意見を並べ立てた。一生懸命メモをとる店長を見ながら、他の女の子たちを見ると、彼女たちもシステム手帳に私の発言をいちいち書き取っている。特に熱心に書き取っていたのは、ヤバイ客に当たった場合の対処の仕方だ。
「初めて会うお客さんにさー、いきなり包丁を持たせるってのはどうよ?」
「その包丁は本物なの?」と私。
「本物じゃだめかい?」と店長。
「当たり前だろ」と私が言うと、女の子たちはいっせいにうんうんと頷いた。
「イメクラなんだから、殺人プレイもファンタジーに徹すればいいんだ。何もリアリティーを求める必要なんかない。お化け屋敷と同じように考えればいいんじゃないかな」
どうやら、店長は、プレイに使用する殺人道具はみんな本物を用意しようと考えていたらしい。ナイフ、包丁、金づち、千枚通し、ロープなどなど。それらが実際にプレイに使われることを考えただけで背筋が寒くなる。人間は遊びと分かっていても、ついつい身体が勝手に動いてしまう生物なのだ。そのことをよく知っている私は、実際に女の子とプレイしてみることにした。
店長たちも現場を参考として見たいというので、女の子にビデオカメラを部屋にセッティングしてもらって、プレイをスタートさせた。
私は女の子に私を殺人鬼だと思ってごらんと言ったのだが、えへへと笑うだけでなかなか先へ進めない。客として時間がもったいないだろと思い、顔を歪ませることにした。寄り目になって口をすぼめて舌を尖らせてみせる。滑稽な表情のはずだが、こういう部屋で二人きりというシチュエーションで眺めていると、だんだん笑えなくなってくる。女の子は部屋を駆け回り、私は後を追いかけ、ゴミ袋を女の子の背中に投げ付けたり、笑い声をあげたりしてみせる。女の子がドアノブに飛びついたところで、私は背後から羽交い締めにして、抱え上げるようにして頭上へ持ち上げてみせた。
「はい、終わり」
私はにやりと笑ってみせたが、女の子は本気で怖かったと涙目になっていた。ビデオを見たみんなも同意見だったが、大変参考になったと言ってくれた。やはり、お客をリードするように女の子の方が演技しなければならないのだ。他のプレイと同じように。
モニター料をもらって、帰ろうとすると、店長が友人の顔に戻って「店の名前、まだ決めてないんだけど、何かいいのある?」と言ってきた。私は「ミッドナイト・ミートトレイン」はどうかねと言った。クライヴ・バーカーというホラー作家の作品のタイトルだ。そのタイトル通り、血なまぐさいホラーである。しばらく考えてみるよと友人は言い、女の子たちとともに私を見送った。私は外を歩き、まだ雨は降らないな、ラッキーと呟いて足早にタクシー乗り場へ向かった。今日はここまで。

・・・・・・

昔、エンピツというサイトで書いていた「耽奇館主人の日記」からの引用だが、ここのお店の店長から久しぶりに連絡があり、あれから七年経って、ようやく秘密会員制のクラブをおこすことに成功したので(イメクラは潰れたとのこと)、是非オープニングパーティーに来て欲しいとのことである。

血糊の作り方などを教えた手前、創業者の名前に私も入っているそうだから、これは行かなくちゃダメだろう。
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