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2009年12月07日03:01

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よみがえる “ジェラール・フィリップ” 唯一のカラー映画。 『赤と黒』

  







   起きたのは、土曜日の午前10時だった。

映画 それから寝ていないのである。最近、“ねる” とはどういうことであるか、ナントナク疑念をいだいている。

   夜中から朝にかけて、インターネットで調べ物

をすることが多い。文章を書くための “下調べ”。

   ぢっと座って、ひたすら、Google とニラメッコ

が多い。もしかすると、

   この状態は “冬眠” に近いんではないか

と思うことがある。体温が下がり、アタマがボーッとしてくる。しかし、

   裏付けのための調査なんぞの場合はアタマを使わない

ことが多い。すると、

   起きながら、寝たような状態

になる。

   …………………………

映画 ってんで、土曜日の午前10時に起きてから寝ていない。昨夕は、4時半に外出。

   ジェラール・フィリップの 『赤と黒』

を見るためである。銀座テアトルシネマだ。

映画 ウワサでは、

   満席で座れない

ということだった。どうやら、これは、モーニングショーと、1回目、2回目の上映のことらしい。これは説明せにゃわからない。

映画 クロード・オータン=ララ Claude Autant-Lara の 『赤と黒』 «Le Rouge et le noir» は、当初、4時間の映画にする予定だったそうである。休憩時間を入れての2部構成。
映画 黒澤明の 『白痴』 が、やはり、4時間の予定だった。松竹の意向で 166分までにカットされたのである。だから、『白痴』 の冒頭には黒澤明の “うらみぶし” がネチッコク語られるのである。
映画 そう言えば、ギリシャのテオ・アンゲロプロスの 『旅芸人の記録』 がちょうど4時間だった。

   …………………………


映画 昔の映画には、長時間ものというのは時々あったようだ。ソ連邦の文芸モノに多い。

   『戦争と平和』 セルゲイ・ボンダルチューク 484分 (8時間) 4部
   『静かなるドン』 セルゲイ・ゲラーシモフ 330分 (5.5時間) 3部

などである。『静かなるドン』 は、錦糸町に 「マールイキノ」 というソ連映画専門上映館があったときに見たが、上映は昼に始まり、第2部と第3部のあいだに1時間の休憩があった。映画館の外に行って食事してくるシステムだったのである。そのため、実質的な上映時間は7時間だった。

映画 上には上があるもんで、ギネスが認定する世界一長い映画は、

   “The Cure for Insomnia” 1987 米国

だそうである。5220分 (87時間) だというが、はたして見る価値があるかどうか、そいつは知らない。長い映画をつくるための長い映画は、他にもいろいろあるようだが、興味がわかない。

映画 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの作品に 『ベルリン アレクサンダー広場』 »Berlin Alexanderplatz« というのがある。16ミリフィルムで撮られたもので、894分 (ほぼ15時間) あるが、TVで14回に分けて放送されたものだった。

映画 あるいは、クロード・ランズマン Claude Lanzmann の 『ショア』 “Shoah” も有名である。フランス版がいちばん長いらしく、613分 (10時間) である。

映画 これに比べると、4時間、5時間なんてカワイイもんか……

   ――――――――――――――――――――


映画 けっきょく、ジェラール・フィリップの 『赤と黒』 は、182分 (3時間2分)、2部構成 になった。
映画 しかし、日本で公開されたのは、なぜか、144分 (2時間24分) であったという。38分も短い。昔の輸入映画では、こういういいかげんなことは時々あったようだ。そのため、

   日本で出まわっている 『赤と黒』 のビデオ、DVDなどは、すべて 144分

だそうである。

映画 今回、公開されたのは、

   修復・復元・デジタルリマスター版

であるらしい。イタリアとフランスに残っていたネガをかき集めて、すべての部分について、もっとも状態のよいものを選び出す、という作業だけで半年かかったそうだ。

映画 昔の映画の管理などというのは、洋の東西を問わず、こんなものである。

   映画は消耗品

としか思われていなかった、のである。

映画 クロード・オーラン=ララは、4時間の予定の映画を、会社との話し合いで、210分 (3時間30分) に縮めたそうだ。ところが、これが検閲によりハネラれたシーンを抜いて、182分となった。
映画 ところが、今回、かき集めたフィルムをつなげると、182分よりも7分長くなるそうである。で、

   計 192分

である。今回は、この 192分なのだ。


映画 この映画、フランス初のカラー映画だそうである。日本初のカラー映画 『カルメン故郷に帰る』 (1951) だから、日本のほうが3年も早いことになる。

   …………………………


映画 今回、『赤と黒』 を見ていて思ったことは、

   映画の構図が 「モノクロ」 の発想だ

ということなのだ。つまり、大きな空間構成で画面を成り立たせている。なるほど、と思ったわけだ。

   初めてのカラー映画ならば、モノクロの画面づくりの
   影響が残っていてもフシギではない

のだ。だから、ふと、映画を見ている最中に、

   この映画は、モノクロに着色したものだろうか

などという考えも浮かんだ。

映画 デジタルリマスターであるだけに、色は美しい。もっとも、当時のスタッフは、監督、カメラマンを含め、すべてが故人であるから、

   褪色はげしいオリジナルネガ

から、本来の色を復元するのは不可能なハナシである。つまり、ある程度、推定になるわけだ。

映画 画面の色彩設計としては、

   藤色、ラベンダー、モーヴ、赤紫

の美しさが映える。ダニエル・ダリューのドレスなどに多用される色だ。家の周囲の壁なども、淡いベージュのような色で、これにドレスなどの淡い紫系の色がくわわると、全体に “パステル調” になる。
映画 そこに、真っ赤な軍服とか、司教の真っ青な手袋とか、強烈な色をポイントで持ち込んでいる。

映画 木下惠介の 『カルメン故郷に帰る』 もそうだったが、カラー映画の草創期、

   監督たちは、色というものに、たいへんな気を配っていた

ということがわかる。色が使えるなら、どのように使うべきなのか、ということを考えているのだ。その意味では、

   現代の映画監督は、色というものに無神経になっている

のかもしれない。それくらい、『赤と黒』 という映画は、

   画面に写るモノ、すべての色について、監督が責任を持っている

というふうに見える。


映画 最後に難点を言うなら、プロジェクタ上映であること。DLP ではなく、フィルムで見たかった。字幕のスーパーインポーズの文字が、とくに、そうなんだけれども、

   “走査線が見える”

のである。横に走っている細い線が肉眼でわかるのだ。やはり、フィルムで見たかった。

   …………………………


映画 ジェラール・フィリップについては、今さら、ナニを言うべきことがある?

映画 実は、昼間は、おばあさん、おばさん、おじさんたちが、大挙して押し寄せている、のである。だから、モーニングショー、第1回目、第2回目は、そうとう早く座席を予約しないとダメだ。

映画 第3回は、逆にガラガラである。これは、やはり、年輩者が押し寄せる 「神保町シアター」 でも同じなのだが、

   夕方から夜、という時間帯に、外出して映画を見ている

というのは、年輩者には考えられないらしい。

映画 ただし、現在の上映スケジュールでは、第3回の上映時間は

   午後 7:30〜午後11:05

である。

   …………………………


映画 で、アッシは、相変わらず寝ずに、これを書いているのだ。そろそろ、眠いが……
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