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2009年08月07日13:18

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今日は読書。Part0016



 ここのところ、やるべきことをおっぽって読書に沈殿してしまうことが多くなってしまった。特に小説。文学趣味は始めると時間ばっかり過ぎちまう。ちょっと、やばい、気を入れなおしていかんと。そんな中で読んでみたのが村上春樹「1Q84」。テレビでラジオで新聞でとここのところやたらと取り上げられることの多い「話題の本」。200万部も売れてるらしい。村上春樹は名前こそ聞いたことがあったけど、著書を読んだことは今までなかったので、ちょうどいいのでためしに買って読んでみた。・・・・・はーーーーーーーー。おいらのトレードマークにもなってる深いため息が自然に出てくる。文字どうり時間の無駄だった。この本を一言で表すなら甘ったれたフェイク(偽物)ってことになるかね。

 ちょっとあらすじを書いてみると、実はダブルプロットといって独立した二つの物語が同時進行的にひとつの作品で描かれてる。ご丁寧にも一章づつ交互に24章づつ48章計1055ページ。奇数章の主人公は青豆という名のフェミニズムを狂信する女テロリスト。偶数章の主人公は天吾という名の小説家志望の数学講師。二人は幼馴染で当時お互い気になっていたが、小学校の時に分かれて以来音信不通で過ごして来た。
 奇数章で青豆は普段スポーツジムでトレーナーをしており、DV被害者のシェルターを経営する「柳屋敷の女主人」の命令によって、加害者を病気にに見せかけて暗殺する仕事をしている。冒頭、一人目の男を暗殺するため男の泊まっているホテルにタクシーで向っていたが首都高の渋滞に巻き込まれ、途中で非常口から下に降り電車で現場に向かって暗殺を決行する。仕事をすませると赤坂のホテルのバーで男漁りをし、夜が明けてから柳屋敷に赴き報酬を受け取る。そして、また男漁り。そこであゆみ言う名の婦警と知り合い、いっしょに男漁りを楽しむ。再び、「柳屋敷の女主人」に呼び出され「リトルピープル」とつぶやく少女つばさをレイプした「さきがけ」教団の教祖を暗殺するよう命じられる。青豆はあゆみを利用して警察から情報を引き出すことに成功するが、そのころ柳屋敷でつばさが行方不明になる。青豆は「柳屋敷の女主人」のボディーガードのタマルたまるから拳銃を手に入れ、暗殺後の逃亡生活のために身辺整理を行う。そして、ホテルオークラに泊まっていた教祖にマッサージを名目に近づきこれを暗殺する。青豆は自分が「1Q84年」なる異世界に迷い込んでしまっていると思い込んでおり、それを確認するために隠れ家を出て首都高で下に降りた非常口を探すが、それは存在せず、「天吾を助けるため」に拳銃自殺する。
 偶数章で天吾は予備校で数学を教える傍ら、小説を書きつつある出版社の校正のアルバイトをしている。冒頭、知り合いの編集者小松と面談中、母親が見知らぬ男と乳繰り合う白昼夢を見る「発作」に襲われる。それが治まった直後、小松から「ふかえり」こと深田恵理子という女子高生の書いた「空気さなぎ」なる新人賞応募小説の感想を聞かれる。天吾は稚拙だが面白いと答える。そこで小松はこれをリライト(書き直し)して新人賞をとらせ売り出すからリライト作業をやってみないかと天吾に持ち掛ける。天吾は言語障害のあるふかえりと喫茶店で会い承諾を得た後これを引き受ける。そして、「ふかえり」の保護者である「先生」と会いに行く。「先生」は元テロリストの大学教授で、組織を乗っ取って新興宗教団体「さきがけ」を作った「ふかえりの父親」を探していると話し、自分の思惑もありリライトに積極的に賛成する。「空気さなぎ」は小松の思惑通りベストセラーになり記者会見もうまくこなす。天吾はふかえりと仲良くなり、ふかえりが自宅に泊まった翌日、人妻のSFを自宅に呼び寄せ不倫関係を楽しむ。その直後、ふかえりは失踪する。そして、天吾の予備校に牛河という「さきがけ」の代理人が現れ脅迫と買収を試みる。天吾はこれを拒絶する。自宅に帰ると電話があり人妻のSFの夫からで「彼女は失われた」と一方的に宣告して電話を切ってしまう。翌日、天吾は長らくあっていなかった父親に会いに行く。父親は千葉の病院に痴呆症で入院しており天吾は白昼夢を根拠に「僕はあなたの息子ではない」とボケた父親にこれまた一方的に宣告する。しばらくして、自宅に失踪したふかえりが転がり込んでくる。天吾はお祓いをするためふかえりと肉体関係を持つ。そして、翌日から青豆の行方を突然探し出す。空には二つの月が現れ、自宅に帰ると病院から父親危篤の知らせが入り翌日病院へむかう。天吾は検査中の父親のベットに「空気さなぎ」をみつけ、中の子供のころの青豆を見て、青豆を必ず探し出すと固く決意した所で物語は終わる。

 おそらく、大部分の人にとって上記あらすじ読んでも著者が何を言いたいのかさっぱりわからないと思う。しかも、全部読むともっとわからなくなる様に書いてある。が、実はそれで当然。なぜなら、この「小説」にはもともと"物語"が最初から一切存在しないからだ。
 ちょっと解説するとこの本は、題名見れば一目瞭然だが、社会派小説の傑作「1984年」(ジョージ オーウェル著)のパロディーとして企画されたものに間違いない。本文中にもたびたびコメントが出ているくらい(例、book1 p421 p459など)。おそらく初期の企画段階ではビックブラザー→青豆。ウィンストン→天吾。オブライエン→ふかえり。イングソック→さきがけ。といった工程表さえあったはずでそう考えると、なぜラストで天吾が青豆を探し出すと決意するのか良く解る。(オリジナルでは主人公ウィンストンが拷問と洗脳の末に独裁者ビックブラザーに対して屈服し愛を告白する所で終わる。)
 文芸的に見てみるとおそらくバッチワークの技法が使われている。パッチワークの技法とは放送作家や漫画家がドラマや漫画を作る際に使われる技法のひとつで、「多くの人間」がアイディアやエピソードを持ち寄り、「代表する人間」がそれらを取得選択して前後をつけパッチワークを張り合わせるようにして作品(製品)を作る方法。普通、一話完結の連続ドラマ(時代劇や刑事もの)なんかを作るときに使われる。読んでみると解るけど登場人物の行動が唐突に変化して、ストーリーがぷつぷつ切れているように感じるのはおそらくこのため。ダブルプロットにしたのもこれを隠蔽するためだったに違いない。しかも、まったく不必要な極左組織のプロパガンダを大量につかって話を風船のようにふくらましている。おいらにリライトさせてくれるんなら155ページ、長くても255ページ以内にまとめてみせる、不必要な文章と無意味な文章がいくらなんでも多すぎ。その上、記憶は時間、事実は仮説、ファンタジーは現実とジョージ オーウェルが聞いたら腰抜かしそうなニュースピークがてんこ盛り。まさにさいてーー。
 結局、村上春樹は極左の編集者が持ち込んだ「1984年」のパロディー企画(本人の主観的には現代日本を舞台にしたリライト企画、でもパロディーにさえなってない!)を組織的宣伝と引き換えに引き受けたが文学的には絶望的なまでに失敗したって事だね。みんなオリジナルを読もう。とほほ。

PS この本は文学的には失敗したのは明白だけど興行的には大成功を収めたのはこれまた明白。おいらの計算では村上春樹はこのまぬけた本を書いて1ページあたりで約13万円、一文字あたりで170円の報酬を得たことになる。今後、彼がこの作品を自分でどう評価するのかが単なる作家かそれとも文学者になるのかの分かれ道。まあ、文学者への道を選択することは無いだろうな、現代日本で本物の文学を目指すことは本当に難しいね。とほほ。


  おまけにみくしー検索かけてみました。


「1Q84」
日記 検索725件件ひっと。
レビュー一覧(4件)

1Q84(1)
(和書) 2009年08月07日 12:16
平均 4.15点(1498人)

1Q84(2)
(和書) 2009年08月07日 12:01
平均 4.06点(1297人)

村上春樹の『1Q84』を読み解く
(和書) 2009年07月30日 20:25
平均 3.85点(7人)

村上春樹『1Q84』をどう読むか
(和書) 2009年08月06日 00:06
平均 3.33点(3人)


「1984年」
日記 検索137件ひっと。でも大部分はこの作品のことじゃないような気がする。
みんなのレビュー一覧(1件)こちらの検索ワードは「1984年 オーウェル」

1984年
(和書) 2009年08月05日 06:17
平均 4.43点(332人)

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