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2006年03月29日05:35

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「耽奇館主人の日記」自選其の八十

2004年11月05日(金)
糞蛇のこと。

見附の変人神主、イエアゴー伯父が大の蛇嫌いになった理由は、伯父の言葉を借りると「糞蛇」である。
糞蛇。
とぐろを巻いたうんこのことだ。
伯父は子供の頃、いかにうまくとぐろを巻けるか、友達と競争していたことがあって、子供らしく、うんこにそれなりの熱心な研究心を持っていたのだそうだ。
私も子供の頃は、雪合戦の最中にうんこを垂れて、雪球の中に仕込んでぶつけるという裏技を連発したものだ。
ある日、伯父は、餅をたらふく食うと、うんこが蛇のように長くなってうまくとぐろが巻けることを発見した。
妙高の白蛇屋敷の、まだ汲み取り式だった頃の和式便所の中で、汲み取り穴の中に泳ぐ、自分のも含めた家人たちのうんこの形状を観察しているうちの発見だったのだが、子供だった伯父はもっと観察しようと汲み取り穴に首を突っ込んだところ、足が滑って、中に落ちてしまった。
高床式なので、汲み取り穴は子供にとっては恐ろしく深い。
ほんとうに死ぬかと思ったそうだ。
そして、そこで、伯父は死よりも恐ろしい目にあった。
蛇のように長くうねったうんこが漂う中で、本物の蛇が十数匹も泳いでいたというのだ。
糸ミミズのように固まって泳いでいたのが、ばらけて、自分の身体にまとわりついてきたので、伯父は外側も内側も糞尿まみれになりながら、必死で助けを求めた。
その時、飲んだ糞尿の味は決して忘れられないと聞かされる度に、私は伯父と同じ目にあわぬことを一生懸命祈って、骨の髄から身震いした。
家人たちに救出されてからは、伯父は当分の間、畑のど真ん中とか田んぼのあぜ道でしか、用が足せない心になってしまった。
そして、当然、蛇を見ただけで気が遠くなるほど、蛇嫌いになってしまったのである。
現在、伯父はトイレが水洗式に改装されていることを、本家の誰よりも心から喜んでいるに違いない。
天井も、昔ながらの梁丸出しではなく、板張りになったし。
押入れも乾燥剤を置いてからは、全然大丈夫。
風呂は、私も経験があるが、沸いた風呂の板を外すと、中で蛇がゆだって死んでいたりするので、ごく最近、最新式の、ボタンひとつでお湯が沸くというユニットバスになった。
ただ、天井裏をごそごそ這い回る音が響くだけである。
姿は見えない代わり、気配は昔より色濃く漂っている。
今日はここまで。
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