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2025年11月13日16:31

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学びはあらゆるところから発生する

篠原 信

私たちは、能力の高い人、器用な人、実績のある人たちからしか学べない、と考えがち。けれど、とある水耕栽培農家の方の話は、ずいぶんと考えさせられる。

特別支援学校の先生たちが見学に来た時、「あの作業ならうちの生徒にもできそうだね」と言ってるのを聞いて、その農家さんはムッとしたという。
スポンジに包まれた苗の列を、フタの縦穴に植えるその作業はベテランにしか任せられない難しい作業だったから。
深く植えすぎると下に落ちて水の流れに流されてしまう。
浅く植えすぎると根が水面に届かず、苗は枯れてしまう。
絶妙な力加減で植えねばならない。
それを障害者の生徒にもできそうとは!

後日、その学校の先生が「試させてください」と、プラスチックの下敷きを持ってやってきた。
何をするのかと思ったら、苗のスポンジに下敷きを押し当て、グッと押し込むと、苗が絶妙な深さでスッと収まった!
その農家はビックリしたという。
ベテランでも難しい作業が、道具一つで解決するなんて!

特別支援学校の生徒である障害者の子どもたちは器用とは言えない。
だからこそ、そうした子どもたちでもできる方法はないか、と工夫を考え、イノベーションが起きる。
下敷きで押し込むその方法は、ベテランでなくてもきれいに苗を植えられる方法として、その農家で採用されるように。

その農家は、障害者の若者を採用することにした。
ある若者は、仕事は几帳面だけど作業が遅かった。
水耕栽培の装置の下に生える雑草をむしるように言ったら、1時間やって1メートルくらいしか進まない。
こんなのでは雑草が生えるスピードのほうがよほど速い、と呆れていた。
ところが。
その若者がむしった場所からは一切雑草が生えてこなかった。
目につく雑草をむしるだけでなく、土の中に埋もれた根っこまで丁寧に抜きとるので、雑草が生えようにも生えることができなかった。
作業が早ければ早いほどよいわけではないことを、その若者から学んだという。

とある若者は、歩くのがとても遅かった。
その農家は、苗に風を当てて虫を吹き飛ばし、回収する機械をその若者に任せた。
健常者にその機械を押させると、さっさと通り過ぎてしまって虫の回収率が悪かったが、その若者に任せるとほとんどの虫を捕まえられた。

手指の動きが不自由な若者がいた。
チンゲンサイの苗を植えようにも穴が小さくてうまく植えられない。
ここは発想の転換だと、農家は苗を植えるパネルの穴を加工し、大きな穴に苗を落としさえすれば、自然と苗がいい感じに収まるように工夫した。
この工夫は職員の誰にとっても作業効率が向上した。

この水耕栽培の農家は、「できない」からこそ学びが発生し、工夫が生まれる、というパターンを学んだ。
「できる」人は持ち前の才能で解決してしまうから、かえって何も進歩が生まれない。
「できない」人でも「できる」に変えられる工夫は、多くの人にとっても便利な工夫になる。大きな学びになる。

「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」という絵本は、静岡県の実在する水耕栽培農家の実録。
学びはあらゆるところから発生する、ということが分かる。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%81%E3%81%AD.../dp/477261480X

このエピソードは拙著「ひらめかない人のためのイノベーションの技法」にも収録させて頂いている。
賢い人、器用な人、実績のある人からしか学べない、などと考えていると、学びは発生せず、イノベーションは生まれない。
あらゆるところに学びは転がっている。その姿勢が大切。 https://www.amazon.co.jp/.../ref=books_amazonstores...

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