養老 このままいくと、木造を建てられる人がいなくなるんですってね。典型的にお寺がそうですよ。鎌倉の建長寺だって、建造700年で、コンクリートに変えられたんだよ。
隈 建長寺がコンクリートになっちゃったんですか!?
養老 そうなんですよ、本堂が。何でかというと、木造でやると建築基準法に通らないんですって。
隈 何とかして伝統工法を受け継いでいかないと、木造という文化遺産が壊滅してしまうのですが。
養老孟司×隈研吾 「ともだおれ」思想が日本を救う 「計算上は正しい。でもそうは見えない」より引用。
台東区のお寺は古刹を除いて、防災上、“なるべく早く新しく建て替えるよう”急かされている。従って、ごらんになっている方々はご存じのように、木造が次々と姿を消していることにお気づきであろう。当寺は本堂のみを残して、オヤジの代に鉄筋に建て替えた。しかもエレベーターつきである。ハッキリ言ってかなり無理したので、寺町のなかではいまだに限りなくビリに近い貧乏寺だ。対照的なのが隣の臨済宗のお寺。寺町イチバンの金持ちで、その景観はとてもお寺とは思えないモダンなデザインである。総工費ン十億かかったらしい。で、あまりにもお寺らしくないので、やっかみではあるけれども、私も含めてみんな悪口を言っている。本堂はドコなんだとか、墓をビルのなかに入れやがってとか、建築そのものにケチをつけているところで、上に貼った記事を読んで肩を強烈に叩かれて目が覚める思いをした。
そもそも我々のあいだでは、木造建築、寺社専門の職人の衰退、慢性的後継不足は、お国から文化財産としてもてはやされたせいだということになっている。つまり敷居が高くなってしまったのだ。そこらへんの大工みたいに気軽に屋根を直しておくれよと頼めなくなってしまったのである。これではコミュニケーションもままならず、実際、お祭り以外顔を合わせる機会がなくなってしまった。
祖父とオヤジの代はそれはもう、気軽に縁側の修理とか風呂の拡張工事とか頼んだものだけれど、ウチはもう欄間を彫るだけですからと息子さんが言ってきたのには呆れてしまった。国から指定を受けて得意げになったあの顔は決して忘れない。欄間彫刻は下町のオンボロアパートにもあったものなのだが、敷居を上げてしまったがために、今ではどこにも見られなくなってしまった。加えて、大工なら誰でも出来るものが、限られたヒトにしか出来ないものになってしまった。欄間彫刻ひとつをとっても、木造建築の衰退のプロセスが手に取るようにワカることであろう。
従って、これはもう文化保護そのものを根底から見直さない限りは、近いうちに木造の寺社は絶滅することであろう。
経験値が増えない限り、次のステージに進めないことは、ゲームをしているガキでも知っている真理だ。
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