http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=14433
ホラー映画はみなそれぞれの美的感覚を持っていて、美しいこだわりを見せているけれども、そのなかでも私にとって、忘我の領域にまで導く美しさを横たえるホラー映画がある。
例えば、吸血鬼ものでは、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の「ノスフェラトゥ」だ。
ラストでジョナサンが馬を駆って、砂煙の流れる荒野を去っていくシーンは涙が出るくらいに美しかった。
涙を流すくらいに美しい幽霊屋敷もの、それが今回紹介する「チェンジリング」である。
舞台となる幽霊屋敷。
この景観だけでも、心に迫る何かがある。
子供の幽霊の登場シーンは、小学生の時に初めて観て、怖いというより、得体の知れない美しさを感じたものだ。
無人の車椅子が婦人を追いかけるシーンは、カメラワークの美しさに息を呑んだ。
そして圧巻のラスト。
炎上する階段のシーンは、美を突き抜けてしまう何かがあった。
「チェンジリング」。
“取りかえっ子”という意味で、昔のヨーロッパでは小人の妖精が人間の赤ちゃんの可愛らしさに嫉妬するあまり、醜い我が子と取り替えるという迷信があったのだが、これはもちろん、妖精ではなく人間の仕業である。
このあたりのドロドロしたドラマの果てに、取り替えられた子供の幽霊が駄々っ子のように幽霊屋敷で騒ぐというストーリーで、世に言うゴシック譚、正当派のゴーストストーリーを見事なまでに映画化した、私のなかでは五指に入るホラー映画の名作だ。
繰り言のように繰り返すけれども、どうしてこういう名作がDVD化されないのか、ほんとうに理解出来ない。
ホラー映画を語るならば、絶対に観ておかなくてはならないレベルの作品である。
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