犬神図書館は市川の自宅が「本館」で、「別館」が浅草のお寺の土蔵という位置づけである。
しかし、「本館」よりも「別館」の方が蔵書量が多く、しかも管理がものすごく厳しい。
というのは、持ち出し禁止のなかでも、家人ですら閲覧には私の許可が必要という、トップクラスのお宝が並んでいるためである。
祖父の代からのコレクションがあるからと説明するとみんなは納得するけれども、私にとってのほんとうのお宝はそんなカビくさいものではなく、今入手しようとすると数十万からする児童向け怪奇ものや、マニア垂涎ものの海外のパルプマガジンのコレクションだ。
そのなかのひとつに、ジョン・ウィリーのコミックシリーズがあって、あちらのボンデージマガジン「Bizarre」を20代の渡米時に大量に買い込んだ際にハマッて、現在でも蒐集を続けている。
ボンデージ・アートにおいては、カリスマ的な人物で、SMをかじった程度でも上の写真とイラストはどこかで目にしたことがあるはずである。
元々ジョン・ウィリーを知ったのは、一人でこっそり観に行った「ゴールド・パピヨン」がきっかけだった。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=7726
中学生の分際で定期購読していた「ワールド映画」というポルノ雑誌で
上映するのを知って、学生服のままで堂々と観たのだが、何というか・・・寺沢武一の「コブラ」のような衣装センス以上に、レトロなロマンティシズムにすっかり心を躍らせてしまった。
オヤジは山川惣治の「少年ケニヤ」が大好きで、そのコレクションも別館にあるせいで私も幼年時代から親しんだのだが、ああいう「感覚」を鮮やかに蘇らせてくれる作品だった。
これらの映像をごらんになれば、私がノスタルジーを味わった理由がお分かりになることだろう。
このエキゾチックさ!!
思えば当然のことで、生みの親ジョン・ウィリーはシンガポール生まれとのこと、ロマン溢れる異国趣味は幼少期への回帰からくるものだろう。
そこに、小栗虫太郎や山川惣治で育った我が家の感覚がシンクロしたのはこれまた当然の帰結といえるだろう。
ここだけの話だが、祖父は本気で金髪のメイドを雇いたがっていたし(大正時代の青年期に)、オヤジは人食い人種の国の王様になりたがっていた(少年時代にブラジル移民の話を持ちかけられてすごく悩んだそうである)。
この私の異国趣味はワールドワイドに及んで、それが高じて、根本敬の怪作「未来精子ブラジル」のように、全白人を奴隷化するという「逆家畜人ヤプー」(黒人はそこでもなぜか中間管理職)を妄想するに至っていて、そういうサディズムあればこそ、ジョン・ウィリーの世界観に共感出来たと思っている。
「ゴールド・パピヨン」は、「スウィート・グウェンドリン」というコミックシリーズを元にした映画だが、映画から入ってきた私としては、原作通りじゃないとか騒ぐ保守的なマニアと違って、ほんとうに「自由に」コミックシリーズを愉しみつつ、ほくそ笑みながら熱心に蒐集を始めた。
合わせて、「シンシティ」や「300」のフランク・ミラーもコレクションしたのだが、熱の入り方はジョン・ウィリーの比ではない。
そういうわけで。
「別館」の禁断のコレクションはおいそれとお目に入れるわけにはいかないのだが、その代わり、映画「ゴールド・パピヨン」と写真集、イラスト集は本館にて常時貸し出し可能である。
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