【コラム】 温泉街には必ずある!?“秘宝館”の謎に迫る!
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今でこそ、花やしきは売れてますけれど、ちょっと前まではほんとうに倒産するかしないかの瀬戸際だったんですよ。
その危機感を平成元年から感じ取っていたオヤジは、花やしきが夜でもお客さんを呼べるようにと、遺産の大部分を「秘宝館建設計画」の資金に充てる遺言書を作成していました。
名付けて、「浅草秘宝館」。笑。
「見世物小屋」は現在はなくなっちゃいましたが、あそこにあったチープな人形、そして妙に生々しいエロティシズムをたたえた人形の数々は、まさに秘宝館に通じるものがあり、三重、熱海、鳥羽、別府と秘宝館を巡ったオヤジは、見世物小屋、お化け屋敷の人形職人など、独自の連絡網(この中に児童向けの怪奇系ではおなじみの絵師、石原豪人もいました)を作り上げて、かなり本気で花やしき改造をもくろんでいました。
そんなオヤジが糖尿が進んで、柳橋病院のベッドに横たわるのが日常的になった頃、何か面白い話をしてくれというので、江戸川乱歩の「パノラマ島奇譚」を三日に分けて朗読してあげました。
テレビで天知茂が明智小五郎を演じたやつのは観ていましたが、原作を知らなかったので、あらためて乱歩のイマジネーションのどぎつい原色ぶりに、ひどく感動しましたね。
「おれはもうすぐ死ぬ」とオヤジは横目で私を見上げて、「おれに代わって、花やしきをきっと秘宝館にするんだぞ、乱歩のパノラマ島を地下にこぢんまりと造るってのもいいな」と言い残して、鬼籍に入りましたが・・・
浅草花やしきから昭和の香りが急速に失われつつある今。
私は遺産をすべて、オヤジの女性関係の清算とお寺の運営に回し、ほんとうの遺産として、人形職人の連絡先と肉筆の設計図を手元に残しました。
それこそがオヤジのほんとうの夢の形、浅草秘宝館の極彩色のイマジネーションそのもので、果たされない夢には独特の美しさがあると感じています。
昼間は子供や親子のために営業し、夜は若いカップルやエロオヤジ、エロジジイのために営業する・・・
オヤジの夢想の究極の目的は。
愛する吉原の女たちが引退後、そこで働けるようにするためでした。
特に、トルコ風呂で知り合った、金沢出身の家出少女にいれあげていて、彼女のヌード写真を大切に保管して、遺言には「人形職人に彼女に似せた人形を発注することと」という項目がありました。
その麗しい人形を奥に、受付に引退後の彼女が鎮座する・・・
精算の際、それらを聞かされた私は、頭のなかでオヤジのために想像力をフル回転させて、浅草秘宝館を展開させながら、帰り道の途中で大粒の涙を流しました。
これから先。
私は花やしきにお化け屋敷が当時のまま残っている限り、ノスタルジーを求めて足を向けることでしょう。
花やしきこそが、私にとって、私だけの永遠の秘宝館なのです。
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