「黴」(詩:深尾須磨子/作曲:橋本國彦)
https://youtu.be/tSk3lfPOU6k
4年ほど前、いやもっと前か、師匠に「何か日本歌曲はありませんか」と尋ねた。「九十九里浜」(平井康三郎)を歌った後で、ドイツリートと並行して、日本歌曲にも取り組みたいと思ったのである。自分としては中田義直や大中恩もいいのではと考えていたが、どうやら師匠の好みとは少し違ったらしい。
「そうね、この2曲はどうかしら」
勧められたのが「斑猫(はんみょう)」と「黴(かび)」である。師匠は同じ作曲家の「舞(まい)」を得意とされていて、門下生コンサートで聴いたその独特の世界には圧倒された。実に渋く、いかにもプロ好みの音楽である。
もっとも、推薦の理由が「私は歌ったことがないから」というのには少し引いたが。
ドイツリートを歌いたくて始めた年寄りのアマチュアが、気軽に挑戦できる類いの作品ではない。だが同時に、絶対に自分から進んで選ぶこともないであろう曲でもある。その時は華やかなピアノと軽妙な語り口のある「斑猫」を選んだ。
今年はコンクールに出ない。秋の門下生コンサートでは、先の日曜日に歌った《ドン・ジョヴァンニ》の「カタログの歌」(モーツァルト)を再び歌う予定だ。となると、もう1曲は、保留にしていた「黴」にする。
聴きに来てくれる仲間の、いかにも渋い顔が目に浮かぶ。それもまた、楽しみ。
ログインしてコメントを確認・投稿する