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2020年12月21日02:44

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『クリスマスは家族で一緒に』』第2話

『クリスマスは家族で一緒に』第2話

「はー、うまい…」
「体が温まります…」
 サガもカノンも熱い猪肉を食べて、ほくほくと幸せそうな顔になった。
 アケローオス河神とアルペイオス河神は器用に、サガとカノンはどこかぎこちないながらも、箸を使って四人は鍋をつつき続けた。
「あー、こうなると酒が欲しいなー」
 肉をほおばりながら図々しく要求するカノンだったが、アルペイオス河神はちゃんと用意をしてくれていた。
「あるぞ。日本の酒を冷やしてある」
 酒瓶ごと冷やしていた日本酒を、アルペイオス河神が侍女のニンフに持ってこさせた。
「おお!」
 くれ、くれ、と、カノンが要求する。アルペイオス河神が酒瓶の栓を開け、カノンが持つガラス製のぐい飲みに日本酒を注いだ。
「これ…ラベルになんて書いてあるんだ?」
 720ml入りの酒瓶のラベルには「満天星」と名前が書いてあるのだが、カノンには漢字が読めなかった。
「おれも読めんが、『満天の星々』とかいう意味らしい」
「ははぁ…星空のお酒ですか。それは我々にぴったりですね」
 星座を守護に持つ聖闘士にふさわしい酒だと、サガもまた顔をほこらばせて日本酒をあおった。
 肉をほおばり、酒を飲み、満ち足りた顔で食事をしているサガとカノンの表情は、子供のころと何ら変わらなく無邪気に見えて、アケローオス河神にもアルペイオス河神にも実に「可愛く」映る。28歳の成人男性相手にこの反応なのだから、「兄の欲目」とは凄まじい。
「大兄上、ぼたん鍋は生卵をつけて食ってもうまいらしいですよ」
「生卵か…。おれの荘園から届いた新鮮な卵があったな。やってみるか」
 弟から聞いた情報に、アケローオス河神が侍女のニンフに生卵を籠に入れて持ってこさせた。卵を椀に入れて溶いて、肉をそれにつけて食べたアケローオス河神が、目を開く。
「うん、うまい。これはいける!」
「じゃあ、おれも…」
 アルペイオス河神も兄にならって、生卵を椀に溶くと具材をそれにつけて食べた。
「あー、こりゃうまい。サガ、カノン、お前たちもやって見ろ」
「えー…」
 アルペイオス河神のせっかくの勧めだったが、生卵を食べる習慣のないサガとカノンは気味悪そうな顔になった。しかし両河神が「この卵は衛生面には問題ないぞ」と説明し、さらに二人がおいしそうに猪肉に生卵をつけて食べているのを見て、双子たちは勇気を振り絞って彼らにならってみた。
 そして。
「生卵、うまー!」
「やばい…!これ、すごく精がつきそう…!」
 猪肉と生卵の取り合わせに舌鼓をうち、「今度ぜひアイオロスに教えなければ!」と思うサガだった。何のためにアイオロスに「精をつけさせる」のかとかは、考えてはいけない。
「鍋料理もいいものだな。今度、親父の水天宮で皆を集めて鍋パーティーをするか」
「いいですねぇ。きっと皆、喜びますよ」
 アケローオス河神とアルペイオス河神が鍋をつつきながら相談を始める。
 「娘だけで三千人」というオケアノス一族を集めての鍋パーティー。さぞかし盛大な集まりになるに違いない。
 広間を埋め尽くして鍋を囲む河の神々たちの姿を想像して、そう思ったサガとカノンであった。
「はあ…。こうやって皆で食事をするのは久しぶりなので、すっごく楽しいですぅ〜」
 くいくいと調子よく日本酒をあおって上機嫌になったサガが、頬を赤く染めて気持ち良さそうに言う。
「ああ、新型コロナウイルスのせいか」
「そうなんです。会食で感染が広まるらしくて…」
 他の黄金聖闘士たちともなかなか集まる機会がないんですよ、と、サガが愚痴った。
 はあ、と、アケローオス河神がため息をつく。
「あのウイルスには、おれも困ってるんだ。酒場は閉まるし、マスクが義務化されて、つけてないと警官がうるさいし…。おかげで、おれも最近はアテネ市に遊びにも行けない」
 おれはウイルスなんかに感染しないからマスクはしなくていいのに…と、アケローオス河神は不満そうだった。確かに、神である彼が疫病にかかることはないだろう。
「え?それじゃあ、最近は館に引き籠っているんですか?」
「いや、だから最近はもっぱらオリンポスのゼウスの宮廷に行って、あそこの女官たちと遊んでいる」
 サガの問いに、なぜか「キリッ」とした顔で告げるアケローオス河神だった。
「…もげろ」
「…そこで女遊びを止めるという選択肢はないんですかねぇ…」
 人間社会の状況がどうなろうが、相も変わらず「貞節」の美徳などほっぽって派手に女性と交際しているらしいアケローオス河神の返答に、カノンは冷たく吐き捨て、サガはため息をついた。
「大兄上はまめですよね〜。おれにはとても真似できません」
 むはむはと猪肉を咀嚼しながら、アルペイオス河神が長兄をそう評する。長兄と違い、女性を追いかけるよりは、野山で野生の獣を追っている時間の方が長い実弟のアルペイオス河神であった。とはいえアルペイオス河神に恋愛経験がないわけではない。ただしそれは「アルテミス女神をストーカーして失敗した」とか「アルテミス女神に似たニンフをシチリア島までストーカーした」とか、そろってアルテミス女神タイプの女性を追いかける話で、彼の女性の好みと行動パターンがよく表れていた。
「え〜、アルペイオス様も結構、まめですよ?この前、魔鈴の家に鹿を置いていったの、あなたですよね?」
 あ、ちなみに肉は皆でおいしくいただきました、とサガが打ち明ける。
 鷲座の魔鈴に一目惚れして、彼女にストーカーしたあげく、それがばれて長兄に叱られてからは「貢ぐ君」と化し、魔鈴の家の前に鹿だの兎だの自分が獲った獲物をこっそり置いていくようになったアルペイオス河神であった。ちなみに肉の分け前にありつける聖域の住民からは、アルペイオス河神は「姿は見えないけど、なんか良い贈り物をくれる妖精さん」扱いされている。
「お前…まだそんなことをやってるの…?」
 アケローオス河神が呆れたように弟を見る。
「いいじゃないですか!好きにさせてくださいよ!」
 やけになったようにアルペイオス河神が叫ぶ。
 「朝、目が覚めて玄関の扉を開けたら、その前に熊とか猪とかの死骸が置いてあった」という魔鈴の状況は、下手をしたら単なる彼女への嫌がらせである。場所が聖域だから、「やった!肉が食えるぞ!」と皆が喜んでいるが。
「いや、まあ…。でも引き際も肝心だぞ?しつこくしても、逆に嫌われるぞ?」
 年長者、かつ、女性経験の豊富な者として、アケローオス河神が弟に説教する。
「でも贈り物を受け取ってもらえてるし!迷惑とか言われてないし!それなら、まだ脈はあるでしょ!」
 必死に言い張るアルペイオス河神であった。ちなみに魔鈴が彼が置いていく狩りの獲物を受け取っているのは、単に返す当てがないのと、生ものなので返品のしようがないからである。
「うん…まあ…。脈がないわけでは、ないかもしれんが…」
 それ以上は突っ込まず、弟に憐れみの目を向けるアケローオス河神だった。アルペイオス河神が照れでどもりながらサガに尋ねる。
「マ、マ、マ…魔鈴は…、おれのことを何か言ってたか!?」
「いえ、なにも」
「……」
 無情なサガの返事にアルペイオス河神が撃沈した。
「あ、でも、その前にもらった熊は、毛皮が暖かくて助かると言ってました」
「…そ、そうか!?喜んでた!?」
 サガの言葉に瞬時にアルペイオス河神が復活する。
「外套に仕立てたら、二人分の外套が出来たので、一着は自分用にして、残りの一着は聖域の知り合いの老人に贈ったそうです。あと、前にもらった兎とか鹿の毛皮は靴やかばんにして、これも聖域内の女性たちに分けたとか…」
 アルペイオス河神の想いを受け入れる気がない魔鈴は、サガを通じてもう獲物を持って来ないように彼に伝えようともしたが、「高価な品物でもないし、どうせ狩りが趣味のアルペイオス河神は君とは関係なく野山を巡っては獣や野鳥を仕留めるのだから、その一部くらい遠慮なくもらっておけばいい」とサガに言われ、そのままにすることにした。獣肉や毛皮の分け前をありがたがっている住民たちの期待もあるし、殺された以上は食べてやるのが供養か…とも魔鈴は思っているようだ。
 日本酒をちびちびとやりながら、アルペイオス河神は切なそうにため息ついた。
「はぁ…。そろそろ魔鈴をデートに誘ったら…受けてくれるかなぁ…」
「まあ、私は仲介はしませんけど、彼女を誘いたいのなら、ご自由にどうぞ」
 受け入れられる可能性は薄いですけどね…という台詞は、サガはのどの奥に飲み込んだ。
「冷たいぞぉ、サガ!お前もおれが贈った肉を食ってるくせにぃ!」
「それとこれとは話が別です」
 きっぱりとサガが言い捨てる。
「つーか、魔鈴ってまだ16歳だろ?このロリコンが。犯罪だから、もう付きまとうのはやめろって」
 カノンも兄に同調して無情に言い捨て、アルペイオス河神に蔑みの目を向けた。
「うう…なんて可愛げのない…。大兄上ぇ、サガとカノンがひどいよぉ。『弟』のくせに『兄』をいじめるよぉ!」
 わざとらしく長兄に泣きついてみせたアルペイオス河神だったが、
「はっはっは。この程度で泣き言とは、お前もまだまだ甘いな、アルペイオス。おれなんか、この二人にもっとひどい目にあわされてるぞ!」
 なぜか自慢そうな顔で胸を張って返したアケローオス河神だった。兄弟で双子たちによる「虐待ぶり」を競っていては世話はない。
「ひどい目ってなんだよ、ひどい目って!おれとサガで楽しませてやってるだろ!?」
 カノンがアケローオス河神の言い分に猛抗議する。どういう「楽しませ方」をさせるかは、あえて言わない。
「散々、ただ飯とただ酒を食らっておいて、よく言うな。釣った魚だって、餌をやらないと死ぬんだぞ?その調子でやって、そのうち冥府の判官殿に捨てられても、おれは知らんからな」
 だがアケローオス河神の説教に、カノンは「んべー」と目の下を指で引っ張り、さらに舌を出してふざけてみせた。
「心配ご無用。ラダマンティスにはちゃんと『餌』をやってるぜ」
「…ああ、そう…」
 分かってはいたが、自分の扱いがラダマンティス以下という事実に、何となくもやっとした気分で酒を飲むアケローオス河神だった。
「だが、まあ、サガ。お前たちもアルペイオスから色々と獲物を受け取っているんだから、アルペイオスが鷲座と一緒に出かける口添えくらいはしてやったら?」
 なんだかんだで弟をフォローしてくれるアケローオス河神である。
「う〜ん。でも女性聖闘士は『女』を捨てるのが建前ですからねぇ…。私が魔鈴に交際を勧めるのも…」
 恋愛を完全に禁止するのは人間心理からいっても不可能だが、かといって女聖闘士にあまり大っぴらに男女交際されてもまずいという聖域の規律の前に板挟みになり、困った顔になるサガだった。
「うう…。魔鈴はもしかして、おれのこの容姿が好みじゃないんだろうか…?ペーネイオスみたいにもっと渋いほうが彼女のタイプとか…?」
「…容姿はあまり関係ないと思いますけど…」
 恋の悩みに煩悶し始めたアルペイオス河神に、サガが答える。「水」に属する神々は変身能力が得意なので、「あなたの見た目が好きじゃない」と言われたら、それこそいくらでも相手の好みに合わせて自分の外見を変化させることができるだろう。そういう美容整形のような真似を、魔鈴が好むかどうかはさておき。
「あー、そういえば、ペーネイオス河神はあんたたちの弟なのに、見た目はおっさんで、あんたたちより年上に見えるよな?なんで?」
 ギリシャ中部・テッサリア地方を流れるペーネイオス河の河神の姿を思い出して、カノンが尋ねる。アケローオス河神もアルペイオス河神も、髪の色こそ人間にはあり得ない紺青色だったり瑠璃色だったりの色合いだが、外見年齢は二十代くらいの若々しい姿をしている。それに対し、彼らの弟であるはずのペーネイオス河神は壮年の姿をしていて、しかもあごに髭を生やしているので、彼らよりさらに年長に見えるのだった。
「ああ、あの姿はペーネイオスの趣味。『こっちの方が渋くて格好いいだろ』って、外見年齢をあの年齢で固定してるだけ」
「…趣味…」
 アケローオス河神の答えに、ペーネイオス河神が自分のあご髭を撫でながら「渋くて良かろう?」と、にやりと得意そうに笑む姿を想像したサガだった。彼の髪の色が灰緑色なこともあり、確かに、見た目はダンディなおじさまである。
「髭というなら、実はおれも、あご髭を生やしてたころもあるんだがなぁ」
 アケローオス河神の思わぬ打ち明け話に
「「えっ!?」」
 と、サガとカノンが同時に驚いた。
「ひげ…?」
「あなたが…?」
「いや、そんなに驚かなくても…」
 鍋をつつきながらアケローオス河神が説明する。
「『髭のない男はオカマかガキか宦官だ』という時代もあったからさぁ。その頃は、人間の前に姿を現す時も、髭がないと相手になめられたんだよ。だから髭を生やしてた。それだけの話だ」
「……」
「……」
 白滝をずずーっと上手にすすって食べるアケローオス河神を、サガとカノンはじっと見つめていた。古代の壺絵ではアケローオス河神は牛の角を生やした髭のある壮年の男性の姿で描かれるが、あれはその頃の姿なのだろうか、と双子たちは思った。ちなみに壺絵では、アケローオス河神の体の部分も牛の姿だったり、下半身が魚と蛇を合成したような姿だったりもする。
「あ?なに?何か言いたいの、お前たち?」
 自分をじーっと見つめている双子たちの様子に、アケローオス河神がいぶかしむ。
「…見たい!」
 そう言って身を乗り出したのはサガだった。カノンが後に続く。
「おれもあんたの髭を見たい…ってか、あんたの髭、触りたい!」
「髭を生やしてみてください、アケローオス様!」
「そう、髭を生やして!」
「え〜…」
 双子の要望に、アケローオス河神は面倒くさそうな顔をした。
「そりゃ、髭を生やすのはおれにとっては簡単だが…。後で剃るのが大変だから、嫌だよ」
「剃るのは、私たちが剃りますから!」
「今夜、うんとサービスするから!」
 カノンの台詞に、「サービスってなんだよ、サービスって…」と思うアケローオス河神であった。なにをどう「サービス」してくれるつもりなのだろう。
「おっさんの髭面を見たいとか、髭を触りたいとか…。何なの、お前たち?そんなのが楽しい?」
「すっごく楽しそうです!」
「あんたのなら、面白そう!」
 と、サガとカノンがそろってキラキラと瞳を輝かせる。好奇心で一杯といった感じだ。
「うーむ…髭にそこまで食いつくとは…。お前たちにそんな性癖があるとは、知らんかった」
 世の中にはいくらでも思わぬことがあるものだ、と改めて理解するアケローオス河神であった。
 そんな雑談を続けている間にも鍋の中の具材は次々に四人の胃袋に収められ、やがて用意されていた野菜と猪肉は綺麗に片付いた。
「あー、食った、食った!」
 カノンが満足そうに背中をそらして腹をさする。
「ようし、締めに『モチ』をいくぞ!」
 と、アルペイオス河神が切り餅の袋を取り出した。
「何ですか、それ?」
 初めて見る白くて硬い食材にサガが首をひねる。アルペイオス河神が説明した。
「これは『モチ』と言うものだ。なんでも毎年たくさんの死者を出しながら、日本人が命がけて食うくらい、うまい食い物らしい」
「毎年、死者が出るって…。何だよ…。毒でも入ってるのか、それ?」
 カノンが切り餅に恐ろしそうな目を向ける。
「そういえば、日本人は猛毒のあるフグも食べると聞いた…」
「え…?じゃあ、やっぱり、それも毒入り?」
 サガの説明にカノンがドン引く。いくつかに毒が入っていて、当たったら死ぬというロシアン・ルーレット的な食べ物なのだろうか、と二人は思った。アルペイオス河神も首をひねる。
「どうも日本人はよく分からんな…。ちなみに『モチ』の原材料は米らしいから、毒ではないと思うぞ?実はおれも初めて食うんだ」
 ぽん、ぽん、と、アルペイオス河神が切り餅を調子よく鍋に投入する。やがて餅が煮えあがると、四人は「びよよーん」と伸びる餅の食感に驚きながら、それを食していった。
「はあ…うま、うま」
 カノンが餅を頬張って満足そうな顔になる。
「もっちもちです〜」
 サガも幸せそうに餅を伸ばして、はむはむと食んでいった。
「うん、これは腹に溜まるな」
「いや〜、確かに締めにいいですね。用意しておいてよかったです」
 両河神にも初めての餅経験だったが、彼らもおいしそうに食べていた。
 こうして餅も片付き、四人は大満足のうちにぼたん鍋を終了したのだった。

「大兄上、タブラをやりませんか?」
 侍女のニンフたちがぼたん鍋の後片付けをすると、こたつに足を突っ込んだままのアルペイオス河神が兄をゲームに誘った。
 「タブラ」というのは、現代の西洋のバックギャモンの原型になった古代ローマ時代のボードゲームで、サイコロの目によって複数のコマを進めて点数を競うものだ。中世の日本でも同様のゲームが「すごろく」と呼ばれて隆盛を極めたものだ。
「おお、一勝負するか?どうせなら、何か賭けるか?」
 兄の勧めにアルペイオス河神は気軽に乗った。
「あ、じゃあ、おれ、この前、狩った鹿の角を彫刻した奴を賭けます」
「ふ〜ん。じゃあ、おれは琥珀の首飾りがあるから、それを賭けようかな」
 宝飾品と聞き、アルペイオス河神は目を泳がせた。
「琥珀の首飾りかぁ…。魔鈴に贈ったら喜んでくれるかなぁ…」
 またもやサガが無情なツッコミを入れる。
「多分、彼女はそういう装飾品には興味ないと思います…。肉のほうが、まだ喜ぶと思いますよ?」
 サガはそう言ったが、それはそれでさて置いて、両河神はこたつに足を突っ込んで向き合った格好でタブラをすることにした。侍女のニンフがゲーム盤を運んで来て、さらにこたつの上には籠に盛られたミカンまで置かれた。
 アケローオス河神とアルペイオス河神はミカンを剥いて食べながら、サイコロを転がしてゲームを始めた。
 サガとカノンはサガとカノンで、こたつの同じ面に一緒に入り、ぎゅうぎゅうになりながら、床の上にトランプを並べて神経衰弱を楽しむことにした。双子の兄と密着したカノンは、もう一か月ほどはサガに会えなくても大丈夫なくらいに、大いに「サガ成分」を補給したのだった。
 こうして「こたつに集って、ミカンを食べながら、ごろごろする」という、実に「日本人のお正月」的なクリスマスの過ごし方をした、ギリシャの神々と人間たちであった。

 結局、アルペイオス河神は長兄とのゲームに負けて、賭け物として出した鹿角の彫刻を巻き上げられた。品物はその場にはなかったので、後で贈る約束になった。
 アルペイオス河神が自分の館に帰って行った後、双子たちはアケローオス河神と一緒に入浴した。そしてアケローオス河神の寝室で彼にねだり、食事時の話の通りに、アケローオス河神のあごに髭を生やさせた。
 あごに短い剛毛を生やしたアケローオス河神の姿に、二人はそろって楽しそうに笑った。髭を生やした彼の姿を見るのは初めてだったからだ。
「そんなにこれが面白いか…?」
 短い髭で覆われたあごを撫でながら不思議そうに尋ねるアケローオス河神に、双子たちはきゃらきゃらと無邪気に笑って見せた。日本酒を調子よく飲んで、アルコール分が脳に回っていたからかもしれない。
「楽しいです〜」
「ははは…すっごい、ざらざら!なんか気持ちいい…!」
 アケローオス河神の寝台に上がった双子たちは、彼の髭を触って感触を楽しんだ。さらに調子にのってくると、サガとカノンは自分の服を脱ぎ捨てて、己の肌の柔らかい部分に彼の髭をざりざりと当ててみせた。いつもとは違う刺激に、双子たちはいつもとは違う反応を示して、喜んでみせた。その姿に、最初は髭を生やすことを面倒くさがっていたアケローオス河神も、「…まあ、これはこれで楽しいか…」と思い直したのだった。
 そしてアケローオス河神に髭を生やさせた代償に、双子たちはその夜、彼にたっぷりと「サービス」して、翌朝には自ら剃刀を持って彼の髭を剃るという追加のサービスもしたのだった。

<FIN>

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