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2018年10月22日16:08

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孤独なパルプストーリー・ハンターのこと。

私の祖父は根っからの怪奇愛好家で、妖怪だの幽霊だのを大真面目に取り上げた明治、大正の新聞記事から、横溝正史、江戸川乱歩らが筆をふるった伝説的な「新青年」、そして耳の記録として見世物小屋の口上まで幅広く蒐集していた。
父はそんな祖父を怖がって嫌ったので、正反対のおおざっぱな人間になったのだが、息子の私が祖父をそっくりそのままコピーしたかのような、筋金入りの怪奇愛好家と知ると、血の摩訶不思議さと皮肉ぶりに驚き呆れて、私とも祖父と同じようによく喧嘩した。

私の方は。

学研の児童向け怪奇本、「世界の恐怖怪談」、「怪奇ミステリー」をそれこそボロボロになるまで読み耽った影響で、

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海外の怪奇小説のコレクターとして祖父のコピーぶりを発揮した。
そこから、私独自のコレクションを発展させたのは、それらを「飾り物」とするのではなく、自分の言葉で翻訳して、私自身の内部風景に加えて怪奇と幻想の色合いを豪華にするというものだった。

小学五年生で、創元推理文庫でポオやラヴクラフトなどを読破すると、当時は中学一年生から始める英語に興味を持ち、英語の絵本を買ってアルファベットからひとつひとつ読めるように、文盲の立場になったつもりで猛勉強をした。
すべて、原書を読めるようになるためだった。
母は私の英語への執着のおおもとが怪奇と幻想とは知らなかったものだから、ひどく感心して六年生から家庭教師を合わせて三人もつけて、英語力の上達を応援してくれた。
しかし、そのうち、二人が辞めてしまった。
というのは。
勉強を始める前に、私が必ず怪奇小説の朗読をしたからである。
考えてもみるがいい、二十歳になったばかりの女子大生が、目の前に座ったガタイのデカイ六年生の子供にラヴクラフトの「壁のなかの鼠」とか、ハートリーの「ポドロ島」とかを延々と聞かされる光景を・・・
無理矢理詰め込まれる恐怖の知識に拒否反応を示したのも無理はないだろう。
それで、唯一残ったのが、過去日記でも触れているジュネ系の元祖腐女子の家庭教師だけだった。
彼女とは怪奇小説の朗読を聞かせる代わりに男色の世界を教えてもらうことで、奇妙な信頼関係を築いたものだ。
英語の上達にはたいしてプラスにならなかったのだが。

そんなこんなで、彼女の通っていた早稲田大学の学園祭を訪れたのがきっかけで、早稲田通りの古本屋の数々を知り、そのなかで怪奇小説の原書を目にし、それこそ放尿するかと思うくらい興奮したものだ。
早速持ち合わせのお小遣いで買ったのが、「ウィアード・テイルズ」。
知る人ぞ知る伝説的なパルプマガジンである。

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買ったのはいいが、当時読めたのは作者の名前だけで、原文はさっぱり。ヴァージル・フィンレイの魅惑的な挿絵に魅了されつつも、辞書とにらめっこしながら単語をひとつひとつ拾い、自分なりに読んで、後に出版された邦訳で答え合わせをすることで読解力を磨いた。

どうにかこうにか読めるようになったのは、高校三年生の頃で、それまでに数々のパルプマガジンをコレクションしていた。

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「アメージング・ストーリーズ」、「ファンタスティック・ノベルズ」・・・

このコレクションと翻訳の趣味は現在でも続いていて、今は昔と比べてすらすら読めるようになったので、またそこから発展して、海外各地にマニア仲間のペンフレンドを作り、インディーズ作家の発掘と応援もするようになった。
アルゼンチンで英語の怪談を書き続けている友人は、「肉の宴」という、人食い人種の少女と心を通わせるために自分の身体を少しずつ食べさせるというロバート・ブロックを思わせる一篇があって、将来どこかで紹介しようと狙っている。

我が国における怪奇ものは、昨今はくだらぬ規制もあって、お話にならぬくらいなのだが、かつては、サスペリア、ハロウィン、ネムキ、ホラーM、ほんとにあった怖い話などなどまさに豪華絢爛で、私にとっては「富江シリーズ」で知られる伊藤潤二先生を知ったことが一番大きい(個人的に富江のサイドストーリーを書いたくらいである)。
マンガはいいとして、肝心のノベルズはどうなのか。
そのへんは井上雅彦さんが頑張っておられるようだが、知名度からいったら無惨なもので、海外の友人からはいまだに「新青年」どまりと思われているのが現状である。
つまり、横溝と乱歩から我が国は全く進んでいないのだ。
このへんは、ほんとうにもう、憂国の一念を覚えるので、私も翻訳などしていないでガツンと怪奇ものを書くべきなのだが。

でも趣味に全力を注いでいるので、とりあえず一段落するまではオリジナルに移行出来ない。
今、ちょうど面白い短編をワクワクしながら翻訳しているので、あれが終わるまではと・・・
どんな話かというと、1944年に発表されたもので、タイトルは「海底の守護者」。
大戦中、人魚が連合軍に味方して、Uボートを沈めるという話である。
荒唐無稽なのだが、ポオが言うように、「熱をもって書けばペンからたちまち火が噴き出る」迫力があって、実にカタルシスを感じさせる何かがある。

どうやら私の物書き人生は、孤独なハンティングで終わりそうだ。
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