グルジア。コルヒダ低地の葡萄畑跡。
そこを井関の大型トラクターが耕起用の鋭利なロータリをフル回転させながら、土を耕している。
運転しているのは、ムースでカチッと固めたヘアスタイルに鉢巻きという天田である。
「こりゃすげえ!!イマドキのトラクターってこんなにスムーズに耕せるもんなんだ・・・!!」
「どォです、イイでしょ?稲本さん・・・」と画竜、隣に立っている日本人農業支援者に声をかける。
「実にイイ・・・!!何しろ、今までのが旧ソ連時代のボロじゃったからねェ・・・ホホォ・・・最新式のは震動が少ないね?」
「ええ・・・シートが特別ですからナ・・・エアサスペンションってやつでして・・・長時間の作業でも腰にこないというスグレものですぞ」
そこをいきなり、低空飛行でロシア戦闘機が二機、飛び去っていき、爆風がその場の人間たちを叩く。
すぐに、護衛についていたグルジア兵たちが小銃を空に向けて連射するが、ムダ撃ちに終わる。
「いつもの嫌がらせじゃよ!!ああして、農作業の邪魔をするのが偵察の楽しみなんじゃ・・・」と稲本さん。
「それ以来、護衛がついていると・・・」と作業用道路に待機している大型トラックの荷台から顔を出しながら、飛葉、無線で見張り役のリープヒェン、馬力から報告を受ける。
「十一時方向、武装ジープが五台!!」
「ミニミを据えつけてるぜ!!」
「食いついたか!!よし、迎撃準備!!」と飛葉、ワイルドのヘルメットを被り、スパスショットガンを左手に荷台からバイクで飛び出す。オフロード仕様だが、エンジンがこぢんまりしていて、カウルの隙間から向こう側が透けて見える。
続いて、クロス、マックも同じバイクで飛び出し、迎撃態勢に入っているグルジア兵たちの前面に横並びに並ぶ。
「エンジン音がしねえ・・・!!何で走ってるんだ?」とグルジア兵の一人。
そこへ、マック、にこやかに微笑みながら、「電気さ。電動式なんだよネ・・・排ガスが出ないからこれからの地球にゃエコだよ?」と説明する。
「よし!!」と飛葉が合図すると、稲本さんとともに別のトラクターに乗り込んだ画竜が、牽引する遠隔装置つき120mm迫撃砲RTをリモコンで発射する。
グワッと一台が吹っ飛び、襲撃者に動揺を与えたところで、飛葉たちが発進。
音もなく、風のように、疾走する自転車のように大地を駆けながら、次々と的確に運転手を仕留めて、ジープを停め、ジープを降りて応戦する襲撃者たちを射殺していく様を呆然と眺めるグルジア兵たち。
その一人のヘルメットを銃弾がかすめ、ヒッと首をすくめる。
「狙撃だッ!!」
「今のは一時方向の崖の上・・・」と双眼鏡を覗きながら呟く馬力。
「了解、捕らえたわ」とリープヒェン、H&K PSG-1を構えて、スコープ内に崖の上でライフルを構える狙撃手の脳天を撃ち抜き、側で双眼鏡を構えていた観測手も射殺する。
一人、どさくさまぎれに大きく迂回して農地の方に逃げながら、迫撃砲を牽引するトラクターに画竜を見つけると、ウオオー!!と雄叫びをあげながら、小銃をぶっ放す。
慌ててグルジア兵たち、後ろを振り返るが、天田の運転するトラクターがバックで高速で突っ込み、フル回転するロータリの刃で、腰だめで撃ちまくる一人を巻き込む。
ギャッ!!と悲鳴が響き、襲撃者たちは全滅。
ガクガク震えながら、画竜の後ろから顔を出し、稲本さん、「あんたら、何者じゃ?」と言う。
画竜、「ただの技術指導者ですヨ・・・」と無表情で答える。
その様を遙か遠く離れた作業用道路から、乗用車に乗ったニノ・アナニアシヴィリ、ダヴィット・シェヴァルドナゼが狙撃用スコープで眺め、ダヴィットが「なるほど・・・聞きしにまさる戦闘力だナ、ワイルド7・・・」と呟く。
「さすが高額の賞金がかかっているだけはあるわね・・・」とニノ。
「お次はいわゆる寝首をかく・・・卑怯な手段だが、それにもどういう対応をするのかお手並み拝見といこうか・・・君の出番だぜ、カフカスのバーバヤガー、魔女と呼ばれる君のね・・・」
赤い口紅の唇を吊り上げて、残忍な笑みを浮かべるニノ。
日本。草波が入院している警察病院。
JJ機関のレッド・フォックスがゲーム機とサッカーのゲームソフトを持って見舞いに来ている。
それらをモニターにつなげながら、
「調子はどうだ・・・?もうサッカーは出来ないが、ゲームでは出来る・・・ほら、最近のはよォ出来てるのォ・・・しかも自分のお好み通りチームを育成出来るというのがいいナ・・・」
「現実も思い通りに進められれば何も言うことはない!!」とそっけなく言い放ち、草波、「いいニュースか?それとも悪いニュースか?」とレッド・フォックスの目をサングラスごしに覗き込む。
「悪いニュースだ。ODAを受け入れる担当の政府高官たちが全員、Aリアンの刺客と入れ替わっている・・・」
そこで目を閉じる草波。
「ふん、予想していたことだ。対策はしてある・・・それでもっと悪いのは?」
「クロスが秘密口座を持っていたことだ・・・ロシアの恋人にそっちから花を贈っている・・・受取人がいなくって、あちらの宅配業者からこちらのクロスへの連絡先に問い合わせがあって、判明したんだ。秘密口座にはカムサンから多額のカネが振り込まれていたよ・・・」
「つまり、クロスが裏切ってるってことか?」
「そうだな・・・どうする?」
「ム・・・飛葉が何とかするだろうが、念のためにケルンの騎士に指令を入れてくれ。クロスが妙な動きを見せたら殺れとな」
「了解、せっかく入院してるんだから、ゲームで少しは気を紛らわせろよ・・・」
部屋を出ていくレッド・フォックスを見送り、草波、モニターでサッカー選手たちが子供たちと手をつなぎながら出場していくシーンをじっと眺める・・・
パブ。
グルジア兵、稲本さんを含めた日本人の農業支援者たち、グルジア人の農家の人たち、そして飛葉たちが愉快に飲んだり食べたりしている。
「美味いワインだ・・・」と画竜。
「そうでしょう?ハッキリ言って、グルジアのワインはボルドーなんかメじゃないですゾ!!さァ、さァ、お客人たち、あんたらは特別に私のおごりです、じゃんじゃん飲んで下さい!!」とパブの店主。
「天田さん、そんなに飲んで・・・大丈夫?」とマック。
「ウィ・・・大丈夫だヨ!!おー、ピアノがあるねェ・・・どれ・・・久しぶりに弾きますか!!」と天田、酔った勢いでピアノの前に座り、華麗な指さばきで一曲弾く。
みんなが天田の素晴らしい演奏ぶりに呆けた顔で注目している中、カウンターのワインボトルにこっそり、指輪の中身をサラサラと入れているニノ。
その背中に突きつけられるコルトウッズマン357マグナムカスタム。
クロスである。
「シ・・・そのボトルを手に・・・一緒に外へ出るんだ」
「あら・・・フフフ、分かったわ」
外はしんしんと雪が降り始めている。
その中で道路へボトルを捨てさせ、勢いよく踏みつけて割ってしまうと、クロス、はなれの自分の部屋へ連れ込み、「身体検査だ・・・」とニノの身体をスーツの上からまさぐる。
クッと仰け反り、ニノ、ふうんと甘い喘ぎ声をあげ、クロスの首を抱きかかえ、唇に自分の唇をギリギリに近づける。
「あの演奏・・・とってもステキ・・・リストのハンガリー狂想曲だなんて・・・あなたたちって銃だけの野蛮人じゃないのね・・・」
「何も持ってないようだナ・・・毒以外は」
「もっと調べていいのよ・・・奥まで・・・」
「言われなくても調べるさ」とクロス、ニノの指輪を外して遠くへ投げ、コルトウッズマン357マグナムカスタムをベッドの下に置き、ニノをベッドに押し倒して、その身体を味わい始める・・・
ニノ、歓喜の声をあげながら、次々と下着を脱がしていくクロスを見つめて、赤い唇を残忍な形に吊り上げ・・・髪の毛をとめているバレッタをそろりと外し、ゆっくりとその中に仕込んだ鋭利な刃を出す・・・
ハンガリー狂想曲が最高潮になったところで、突然響く銃声。
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