「『イリアス』の各場面を『星矢』キャラで妄想してみた」��
(第10歌、ディオメデスとオデュッセウスの偵察行を、ディオメデス=ミロ、オデュッセウス=カノンで)
軍船の傍らでは、聖域勢の将帥たちがみな心地よい眠りに身を委ねて夜もすがら眠り続けたが、ひとり軍勢の牧者シオンの身は心中様々に思い巡らし、いっかな甘い眠りにつけなかった。それはあたかも髪美しいヘラの背の君ゼウスが言語に絶する大雨を、あるいはあられを、あるいは白雪が畑を覆う折に雪を降さんとするとき、またある時は恐るべき巨大な顎を開かんとするとき、稲妻をはためかすのにも似て、シオンは心の底から漏れる吐息に絶え間なく呻き続き、胸中の心は震えてやまなかった。
トロイアの平原に目をやれば、イリオス城の前面に燃えるおびただしい篝火と、笛や笙の響き、軍兵の立てる騒音に胸を突かれる。目をひるがえして軍船と聖域の軍勢を眺める時は、上天のゼウスを仰いで、頭髪も幾本も根ごと引き抜き、高貴な心のうちで激しくうめく。
やがてシオンは、天秤座の童虎ならば全聖域軍の危急を救う妙策を共に講じてくれるかもしれぬと、誰よりも先に彼を訪ねるのが最善の策であると思い付いた。起き上ると胸の辺りに肌着をまとい、艶やかな足に美しいサンダルを結んだ。ついで赤茶色の獅子の毛皮、その色は燃えるがごとき巨大な獅子の毛皮を羽織って、槍を手に取った。
こうしてシオンは軍勢の牧者、童虎のもとへ出かけて行った。おりしも童虎は、陣屋と黒塗りの船の傍らで、柔らかな褥に横たわっていた。身近には華麗な武具が置いてあり、盾に二本の槍、てらてらと輝く四つ星の兜、またきらびやかな腹帯もある。これは軍を率いて戦士の命を奪う戦いに出で立つ折にはいつも締めているもので、過酷な老いにはいまだ負けぬ老雄であった。
童虎は起き上ると相手に語りかけた。
「そこの男、他の者がみな眠っている暗い夜に、船の並ぶ陣地のたった一人でうろついているとは何者か。騾馬でも見失って探しているのか、それとも戦友をか。声を出せ、黙ってわしのところへ来るでない。いったい何用があって来た」
答えてシオンが言った。
「童虎よ、分かってくれるだろうが、シオンだ。この胸のうちに息の続く限り、この足の動く限り、ゼウスが誰にもましてこの身を絶え間なく苦難に遣わしている男だ。こうして徘徊しているのは、安らかな眠りがまぶたに降りてこず、戦いと聖域軍の苦難のことが心から離れぬからだ。聖域勢のことがどうにも心配でならず、気もそぞろであれやこれやと思い惑い、心の臓が胸から飛びだし、たくましい体も足元で振るえるような体たらくだ。ところでお前も眠れぬようであるから、もしお前に何かする気があるなら、ひとつ一緒に夜警の部隊へ出かけていき、ひょっとして疲れと眠気に負けて眠ってしまい、夜警の務めをすっかり忘れていないか、検分してこようではないか。敵は近くに野営しており、夜中であっても戦う気を起こさぬとは限らぬ」
するとそれに答えて廬山育ちの騎士童虎が言った。
「シオンよ、明知のゼウスが、すべてラダマンティスの思い通りに果たしてやるはずがない。アイオリアが激し怒りから気持ちを変えてくれれば、ラダマンティスはこれまでよりもさらに多くの悩みを抱えて苦しむことになるだろう。喜んでお前の供をしよう。また他の者たちも起こすとしよう」
こうして二人は諸将を起こして集合させた。
さて一同が夜警部隊の集合した場所へ入ってみると、警備の隊長たちは眠っておらず、全員が武装のまま目を開いて控えていた。あたかも家畜小屋の囲いの中で羊を守る番犬たちが、山中の木立を徘徊する残忍な野獣の声を聞いてつらい夜番を続けるよう。野獣を追う人や犬の立てる騒音に番犬の眠りが奪われるように、苦しい夜を見張る兵士の瞼からは快い眠りが消えて、冥府勢の足音を聞くたびに平野の方に目を向けねばならないのであった。童虎はこれを見て嬉しく思い、翼ある言葉をかけて激励した。
「兵士らよ、そうやって見張っていてくれ。誰も眠るなよ。敵を喜ばすようなことがあってはならん」
やがて諸将が集まると、廬山育ちの騎士童虎が口火を切った。
「さて、己の胆力を頼んで、冥府軍の中へ進入する男はおらぬか。本隊からはぐれた敵兵を捕えるとか、敵勢の間に伝わる噂を聞くとかして、彼らが内々で謀議していることを、つまり城を離れて我が船陣の近くに留まるつもりであるのか、我らを一応は制圧したとて町へ引き上げるのか、そうしたことを知りたいのだ。こういったことを残らず探り出して無事に帰って来てもらいたい。これを果たした者は勇名は天下にあまねく広がるだろうし、立派な褒賞も与えられよう。船を指揮する大将たちがそれぞれ黒い羊、それも仔羊を抱えた雌を彼に贈るだろう。これほどの貰い物はないし、それに誰彼が宴会や祝い事には必ず招いてくれもするだろう」
こう言うと全員が口をつぐんで鎮まり返ったが、その中に大音声に名も轟くミロが口を開いた。
「童虎よ、おれが近くに陣取る敵、冥府軍の陣中に忍びこもう。しかしもう一人誰かが一緒に行ってくれれば、いっそう心強いし、勇気も増すのだが。二人で行けば、有効な策をどちらかが先に思い付くが、一人だと、思い付いたとしても、どうしても考える幅が狭く、その案も弱いものになるからな」
こう言うと多数の者がミロに同行したいと申し出た。この時、総帥シオンが一座の中で口を切った。
「ではミロよ、同行を希望する者の中から、お前が連れていきたいと思う最善の者を選ぶが良い」
大音声にその名の轟くミロが再び一座の中で口を切った。
「同行する仲間をおれが選べというなら、おれとしてはカノンに来てもらいたい。奴こそは、どのような難しい仕事においても、誰よりも進んで事に当たる気概と意地を忘れぬ男であるし、アテナのお気に入りでもある。奴が同行してくれるなら、我々は炎々たる猛火の中からでもそろって無事に戻ってこられるだろう。人並み優れて才覚の働く男だからな」
彼に答えて堅忍不抜の勇士カノンが言った。
「ミロよ、おれを褒めるもけなすもいい加減にしてくれ。お前の話を聞いているのは、何もかも分かっている聖域勢なのだからな。さあ、では出かけるとしよう。すでに夜も終わりかけ、明け方が近い」
こうして二人は物々しい武具に身を固めると、他の諸将を残して出発した。この時、パラス・アテナは二人の右手、道のすぐ傍らに一羽の青鷺を飛ばした。暗夜のこととて鳥の姿は二人の目には見えなかったが、鳴き声は聞こえ、二人はこの予兆を喜んだ。
カノンはアテナに祈った。
「アイギス持つゼウスの姫君よ、どうか私の言葉に耳をお貸し下さい。あなたはいかなる危難に際しても、必ず私に付き添ってくれ、私の行くところは常に心をかけてくださいます。この度もまた、いやこの度は特に、アテナよ、ご慈悲をもって敵を悲しませるほどの大きな手柄を立て、船陣に無事に帰らせていただけますよう」
また大音声の誉れも高きミロも祈った。
「ゼウスの姫君、アテナよ、私の願いもお聞きください。かつて私の父に付き添って助けてくださったように、どうか今も進んで私に付き添ってお守りください。そのお礼に、額の広い一年仔の牛、それもまだ人の手に馴らされず、頸木も掛けられてないものを、角に金箔をかぶせてお供えしましょう」
このように祈ると、パラス・アテナは二人の祈願を聞き入れた。大神ゼウスの姫神に祈願を終えた二人は、さながら二頭の獅子のごとく暗夜をついて、死屍累々たる戦場を、散乱する武具と黒い血を踏みながら進んで行った。
一方、ラダマンティスも、諸将を集めて企みを巡らしていた。
「誰か莫大な恩賞を目指して、この仕事を引き受け、見事果たしてくれる者はいないか。その者には十分な褒賞を与えよう。勇を振るって、敵の船陣に近づき、船団の見張りが行われているか、それとも退却を協議し夜警をする気もなくなっているか、それを探ってくる者には、戦車一両とたくましい首の馬二頭、敵陣にあってもこれ以上のものはないほどの逸物を与えよう」
こう言うと全員が声もなく鎮まり返ったが、地奇星フログのゼーロスが名乗り出た。
「ラダマンティス様、私が敵の船陣に近づき探ってみましょう。ですが、比類なき勇者、獅子座のアイオリアを乗せている馬と青銅の飾りも美しい戦車を私に下さると誓ってくださいませ。私は無駄にあなたの斥候を務めませんし、ご期待に背くはずもございません」
こう言うと、ラダマンティスはただちに誓った。
「その戦車には、お前以外のいかなる冥府勢も乗らないことを、ヘラの背の君、雷を轟かすゼウスに証人となっていただこう」
こう言って所詮は空しい誓言を与え、彼の心を奮い立たせた。ゼーロスは灰色の狼の皮を羽織り、頭には貂の皮の兜をかぶって敵の船陣に向かう。とはいえ、彼は無事に帰還し、ラダマンティスに復命することかなわぬ身であった。
カノンが向かってくる彼の姿を認め、ミロに言った。
「ミロよ、あそこに敵陣から誰かやってくる。我が船陣の様子を探りに来たのか、戦死者の屍を剥ごうというのか、それは分からんが、ここはまず少しやり過ごしておいて踊りかかり、素早く捕まえよう。万が一に逃げ足速く、おれたちの手を逃れた場合には、町の方へ逃げるかもしれんから、槍を振るってどこまでも迫り、敵陣から離して我が船陣の方へ追い詰めてくれ」
このように言葉を交わすと、二人は道をそれて、戦死者の遺体の間に身を横たえた。ゼーロスが用心もせず急ぎ走り過ぎると、二人は襲いかかり、物音にゼーロスは立ち止った。これはてっきりラダマンティスが自分に引き返せと命を出し、戦友が呼びに来たものと思ったのだが、間合いが槍の届くほど、あるいはそれより短くなった時に敵と気づき、素早く足を速めて逃げようとした。二人はすぐさまその後を追った。狩りに馴れた鋭い刃の二頭の犬が、木々の茂みの中を仔鹿か兎を追いかけると、追われた獣は悲鳴を上げつつ先へと走る、そのようにカノンとミロはどこまでも追って行った。ゼーロスが船陣の方へ逃げ、すんでに夜警の兵士らの間に入り込もうとした時、アテナは他の者に手柄を立てさせてはならぬと、ミロに気力を与えた。ミロは槍を振るって襲いかかった。
「止まれ、さもなくば槍で打つ!」
こう言って槍を投げたが、故意に的を外し、磨かれた穂先は相手の右肩をかすめて地面に刺さった。ゼーロスは恐怖に駆られて立ち止まり、歯はがたがたと鳴り、恐怖に顔面蒼白となった。追いついた二人がゼーロスの手を捕まえると彼は涙を流して懇願した。
「どうか殺さず、生け捕りにしてください。私が私の身代金を払いますから」
それに答えて機略縦横のカノンが言った。
「安心しろ。殺されるなどとは考えなくていい。これから問うことに偽りなく答えろ。お前は、暗夜にただ一人、何をしに陣営を離れてこの船陣に来たのか。ラダマンティスの命か、それともお前ひとりが勝手にそういう気を起こしたのか」
するとゼーロスはぶるぶると震えながら答えた。
「ラダマンティスの奴が人の心を惑わすことを言って、私の頭を狂わしたのです。奴は高貴なアイオリアの駿馬と青銅の飾りも美々しい戦車を私にやるから、敵陣の様子を探って来いと命じたのです」
機略縦横のカノンはそれを聞くやにやっと笑った。
「お前はアイオリアの馬と戦車などという、大した恩賞が欲しかったのか。しかしあの馬は、女神を母に持つアイオリア以外の人間には、御することも乗り回すことも至難の業だぞ。さあ、次の質問にも答えろ。ラダマンティスとはどこで別れた。他の冥府勢の夜の見張りや寝場所はどうなっている。また冥府勢の戦略の一切も話してもらおう」
ゼーロスはこれにも答えた。
「包み隠さずお話します。ラダマンティスは評議にあずかる方々とともに、騒がしい場所を避けて、神君イロスの墓の傍らで協議してます。警備については、見張りをする特別の部隊はありません。篝火を焚いている場所で、役に当たった者たちが眠らずに、互いに申し合わせて見張っています。諸国から招かれた援軍部隊は、警備を冥府勢に任せて眠っています」
それに答えて機略縦横のカノンが問うた。
「来援部隊は、馬を馴らす冥府勢と混じって眠っているのか、それとも別の場所にいるのか」
ゼーロスが言う。
「援軍は海寄りにいます。あそこに新たに到着したトラキア人が他と離れて一番端にいます。王イワンの馬を見たことがありますが、実に立派な大きな馬で、雪よりも白く、走る速さは風にも負けぬほど、車は金銀をあしらった見事な造りでした。身につける物の具も黄金造りで途方もなく大きく、見ればたまげるばかり。この様な物の具は人間より不死なる神々にこそ似つかわしいものでしょう。ところで私のことですが、お話したことを確かめられるまで、船に連れていくか、縄で縛めてこの場に残してもらえませんか」
彼を眉の下から睨んで豪勇ミロが言った。
「ゼーロスよ、色々と良いことを聞かせてくれたが、我らの手中に落ちたからには逃げられるなどと思うなよ。もし今お前を自由にしたならば、後々も我らの船陣へ来て様子を探ったり、面と向かって戦ったりするだろう。だがここでおれの手にかかって死ねば、二度と聖域軍の煩いにはなるまい」
ゼーロスはミロの首に手をかけて命乞いをしようとしたが、ミロは太刀を振るって踊りかかり、首を断ち切った。二人はゼーロスの武具をはぎ、戦利を賜る女神アテナにと、手を高々と持ち上げて祈願した。
「女神よ、これらのものをどうぞご嘉納ください。我らはこれを、オリンポスのよろずの神々のうち、あなたにまず第一にお供えします。どうかさらにトラキア勢の馬と寝場所まで、我らをお導き下さい」
こう言うと、二人は奪った武具をタマリクスの葉陰に隠し、足速な暗い夜中に戻ってきた時に身失うことがないよう、蘆の茎とタマリスクの幹に繁っている枝を集めて目印を作った。二人は散乱する武具と黒い血の間を先に進み、トラキア人の部隊に行きついた。みな眠っており、見事な武具は傍らの地面に三列に並べて置いてあり、一人一人の横には二頭の馬を繋いでいた。先に王イワンの姿を目にとめたカノンがミロに示して言った。
「ミロよ、さっき倒したゼーロスが話したのはあの男だ。ここはお前の力を見せてくれ。武器を手にしながら、ぼんやりと立っているのはお前らしくない。馬の綱を切るか、おまえが敵を片付けてくれるなら、馬の方はおれが引き受ける」
カノンがこう言うと、眼光輝くアテナはミロに力を吹き込んだ。彼は右に左に敵をなぎ倒し、地面は血潮で赤く染まった。獅子が羊の群れに襲いかかるごとく、ミロはトラキア人に踊りかかって遂に十二名を討ち取った。一方、カノンはミロが討ち倒した男たちを、背後から足をつかんで引きずり、片付けていた。たてがみの美しい馬たちが通りやすくするためと、死体を見て馬が怯えぬためである。ミロは王の眠る場所に達すると、うなされて激しく息づくこの王の甘美な命を奪った。ミロはアテナの企みにより、この夜、悪夢となって王の枕許に立ったのだった。
その間に堅忍不抜のカノンは駿馬を解き放ち、革紐で繋ぎ合わせ、弓で叩きながら陣営から引き出した。それから口笛を吹いて豪勇ミロに合図を送った。
ミロはなおもその場を動かず、見事な武具の積んである戦車を奪うか、さらに多数のトラキア人を打ち果たすか、何か大胆不敵なことができぬかと思案していたが、アテナが近くに来て豪勇ミロに言った。
「ミロよ、今は船陣へ帰ることを心掛けなさい。敵に押されて逃げ帰るようなことになってはならぬし、他の神が冥府軍を奮起させないとも限りません」
こう言うとミロは女神の声と聞き知り、素早く馬に飛び乗った。カノンが馬に弓で鞭を当て、二人は飛ぶがごとくに聖域軍の船陣へ向かった。
二人は先にラダマンティスの間者を殺した場所まで来ると、馬を止め、血まみれの武具を回収して、また馬を飛ばした。
誰よりも先にこの物音を聞きつけたのは童虎だった。
「わしの言うことが誤りか真か分からぬが、足の速い馬の蹄の音が耳に響いてくる。カノンとミロとが、冥府勢から奪った馬を手早くここへ引いてきているのなら良いが。敵陣営の騒ぎの中で、聖域軍中の名だたる勇士たちの身に良からぬことが起こったのでないかと案じられる」
童虎がみなまで言い終わらぬ時、当の二人が帰ってきた。彼らが地上に降りたつと、一同は喜び、右手を差し伸べてねぎらいの言葉をかけた。
廬山の騎士童虎が真っ先に尋ねて言った。
「カノンよ、話してくれ、どのようにしてこれらの馬を手に入れたのだ。冥府軍の陣中に忍びこんでか、途中であったいずれかの神から賜ったのか。馬はまるで陽光の矢のように輝いて見える。わしはいつも冥府軍を渡り合っており、老兵といえども船の傍らでぼんやりと座っているわけではないが、これほどの馬はかつて見たことも出会ったこともない。いずれかの神がお前たちにくれたものに違いない。お前たち二人は、雲を集めるゼウスにも、アイギス持つゼウスの姫君、眼光輝くアテナにも愛されておるからな」
それに答えて機略縦横のカノンが言った。
「童虎よ、神々の力は比類なく強大であるから、神がその気になれば、これよりもっとさらに立派な馬を下さるのもたやすいだろう。あなたがお尋ねのこの馬はトラキア産で、近頃この地に来たばかりなのだ。馬の主はミロが仕留め、その他にも十二名の家臣、いずれも名だたる勇士を討ち取った。十三番目の男は、我らが船陣の傍らで切った間者で、ラダマンティスはじめ冥府の将帥達から派遣されて我が方を探りに来た男だった」
こう言うと、からからと笑いながら駿馬を率いて濠を渡らせ、他の聖域勢も嬉しげに後に続いた。一同がミロの堅固に作った陣屋に着くと、巧みに裁断した革紐で馬をまぐさ桶の傍らに繋いだが、ここではミロの足の速い馬たちが好物の麦を食べていた。ゼーロスの血まみれの武具は、カノンが船の艫に繋ぎ、アテナに捧げる供儀の用意が整うのを待った。
ついで二人は海に入って、脛と首筋、さらには腿のおびただしい汗を洗い流した。海の泡が肌についた汗を洗い、人心地がつくと、今度は磨き上げた湯船に入って湯浴みした。風呂から上がり、オリーブ油を肌にたっぷりと塗ると食膳に着き、満々と満たした混酒器から甘美の酒を汲んでアテナに献酒した。
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