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2018年01月02日13:06

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「『イリアス』の各場面を『星矢』キャラで妄想してみた」��

「『イリアス』の各場面を『星矢』キャラで妄想してみた」��

(第7歌より、大アイアスとヘクトルの一騎打ちのシーンを、大アイアス=アルデバラン、ヘクトル=ラダマンティスで)

 眼光輝くアテナは、ラダマンティスが激戦の中に聖域勢の面々を打ち倒す様を目にすると、オリンポスの峰を駆け下り、聖なる都イリオスへ向かった。冥府勢の勝利を願うアポロンは城山の上からそれを見るや、アテナに会おうと急ぎ、二人の神は樫の木の傍らで向かい合った。ゼウスの御子、神アポロンがまず声を掛けた。
「大神ゼウスの娘よ、そなたはどうしてまたそのように気負って、オリンポスから降りてきたのだ。大層な力みようだが、一体何をもくろんでいるのだ。戦いの流れを変えて聖域勢を勝たせようというわけか。討たれる冥府勢の兵のことなど哀れと思わぬそなたのことだからな。しかしもしそなたが私の言うことを聞く気があるなら、一番の良策だと思うのだが、今日のところは両軍が戦うのをやめさせてはどうか。彼らは後日、イリオスの命運尽きる間で戦えばよかろう。いずれにせよこの町を滅ぼすのが、そなたら女神たちの念願なのだから」
 それに答えて眼光輝く女神アテナも言った。
「遠矢の神よ、ではそうしましょう。私も実はそう思っていました。しかしどのようにして両軍の戦いをやめさせましょうか」
 女神に答えて、大神ゼウスの子、神アポロンが言った。
「馬を馴らすラダマンティスを奮起させ、聖域軍の一人と一騎打ちの決闘を挑ませてはどうだろう。彼が一騎打ちを挑むとなれば、青銅の脛当てつける聖域軍も面目を失ってはならぬと単身戦う者を立てるであろう」
 こう言うと眼光輝く女神アテナにも異議はなかった。この時、トロイアの予言者シャカが二人の神が協議して合意したこの計略を心の耳で聞きとり、ラダマンティスの傍らに行き、彼に話しかけた。
「知謀ゼウスにも劣らぬラダマンティスよ、私の言うことを聞いてもらいたい。あなた以外の冥府軍、また聖域軍の全員を座らせ、あなたは聖域軍中、最も武勇優れた者に一騎打ちの決闘を挑んでくれ。あなたはいま定命の尽きる運命にはない。そのように私は永遠にいます神々のお声を聞いたのだ」
 その言葉にラダマンティスは大いに喜び、冥府軍の中に進んで、柄の中ほどを握った槍で軍列を押しとどめた。冥府軍の全軍が腰を下ろすと、シオンもまた、脛当て良き聖域軍を座らせた。一方、アテナと銀の弓持つアポロンは兵たちを楽しげに眺めながら、禿鷹の姿になって父神ゼウスの聖なる樫の巨木の上に腰を下ろした。
 さて、ラダマンティスが両軍の間に立って言った。
「冥府軍も脛当て良き聖域軍の一同も聞くがいい。おれの心が言えということを話すとしよう。高きにいますクロノスの御子は、お前たちが城壁の守りの固いトロイアを落とすか、あるいはお前たちが海を渡る軍船の傍らで果てるまで双方を戦わそうとしている。今、貴軍には、全聖域軍の軍勢を統べる将帥達がそろっている。さればその中の誰でもよい、おれと戦う気概のある者は、この勇名とどろくラダマンティスに挑む全軍の代表として、ここに出てもらいたい。ここでゼウスに我らの証人になっていただいてはっきりと言っておく。もし相手がおれを長い穂先の槍で討ち取った場合は、武具をはぎ取って船の陣屋へ持ち帰るが良い。だが遺骸は、トロイアの人々らが荼毘に伏してくれるよう、家に返してもらいたい。またもしおれが相手を倒し、アポロンが私に栄誉を授けてくれた場合には、おれがその物の具を剥いで聖なるトロイアへ持ち帰り、遠矢放つアポロンの社に捧げよう。しかし遺体は船の陣屋へ帰して差し上げよう。髪長き聖域勢がねんごろに弔い、彼の塚を築いてやれるようにな。いつの日か、後の世に生まれた者たちがこう言うだろう、『これは遠い昔に死んだ男の墓だ、誉れも高きラダマンティスに討たれた男のな』と」
 こう言うと、全員口を閉ざして鎮まり返った。挑戦を拒むのは恥辱と思いつつ、受けるのも恐ろしかった。
 この時、童虎が聖域勢の中に立ちあがって語りかけた。
「いやはや、聖域勢にとって何と悲しいことが起こったことか。馬を駆るアイオロスも、さぞや声を上げて嘆くだろう。以前、彼の屋敷で、わしに聖域勢全員の家系、出自を尋ねられたことがあったが、それを聞いて大層な機嫌であった。その彼が、もし今、聖域勢が一人残らずラダマンティスの前に腰を抜かしていると聞いたならば、不死なる神々に幾度も手を差し伸べて、己の魂が四肢を離れて冥界に落ちるようにと祈ったことだろう。ああ、かつて戦った時のように、わしが若かったらどんなに良かろう。つくづくあの時のように若く力もあったらと思うぞ。そうであったら、輝く兜のラダマンティスも戦う相手が得られるわけだ。それなのに、聖域軍の将帥たるお前たちに、輝く兜のラダマンティスに立ち向かう気概がないとは!」
 こう老雄が叱咤すると、黄金聖闘士たちが立ちあがった。この時、廬山育ちの騎士童虎がこれらの者たちに向かって再び口火を切った。
「さて、ではお前たちは誰がその役に当たるか、くじを引くが良かろう。当たった者は、脛当て良き聖域勢に尽くすこともでき、幸いにしてしのぎを削る激しい決闘から無事に帰ることが出来れば、わしと己の心を喜ばすことも出来るわけだ」
 こう言うと一同はそれぞれのくじに印をつけ、シオンの兜に投げ入れた。廬山育ちの騎士童虎が兜を振ると、アルデバランのくじが兜から躍り出た。伝令使がそのくじをもって軍勢の間をくまなく回り、左から右へと順々に全将帥にくじを示していったが、誉れ輝くアルデバランのところへ来ると、彼は手を差し伸べ、伝令使からその手に投げて渡されたくじを見て、印が自分のものと知って喜んだ。
「戦友たちよ、これはまさにおれのくじだ。おれも嬉しい、豪勇ラダマンティスには勝てると思うからな。さあ、おれが武具をつける間、お前たちはクロノスの御子、我らが主ゼウスに祈ってくれ。相手に聞かれぬように声を出さず胸のうちででも、堂々と声を上げて祈ってでも良い。いずれにせよ我らが恐れる者など一人もおらん。いかなる者も力では、自分勝手な一存で逃げる気などないおれを追い払うことはできんし、おれとてそれほど戦う術を知らぬ人間としてブラジルに生まれ育ったつもりもないからな」
 こう言うと一同は、クロノスの御子、我らが主ゼウスに祈りを捧げ、広大な天を仰いで口々に言った。
「父神ゼウス、イデの峰より世をしろしめし、誉れ最も高く、力最も偉大なる御神よ、願わくばアルデバランに勝利を賜り、輝かしき栄誉を得しめたまえ。しかしもしラダマンティスをも愛し、彼の身を気遣われるのならば、せめて両人の同じ力と誉れを授けたまえ」
 一同がこう祈る間に、アルデバランは輝く青銅の甲冑に身を固め、物の具一切を身につけると、さっと駆け出した。その様は軍勢の真っただ中へ、巨躯の軍神アレスが向かうさまにも似ていた。聖域勢を守る砦ともいうべき巨漢アルデバランは、見るからに獰猛な顔に笑いを浮かべつつ立ち上がり、影長く引く槍を振り回しながら大股に進んだ。彼を見て聖域軍は狂喜したが、冥府軍は恐れて身を震わし、当のラダマンティスの胸も激しく波打った。しかし自ら戦いを挑んだからには、今さら尻込みも、味方の陣に退くこともできぬ。アルデバランは大盾をかざしつつ迫ったが、これは七枚の牛革を張った青銅造り、強健な牡牛の革七枚を重ね、さらに八枚目に青銅の板をかぶせた見事な盾であった。
 その盾を胸の前にかざし、牡牛座のアルデバランはラダマンティスの前に立って威嚇する口調で言った。
「ラダマンティスよ、今こそこの一騎打ちでお前にもはっきりわかるだろう、聖域軍には、肝が獅子のごときアイオリアの他にも手ごわい勇将がいるとな。彼は今、軍勢の牧者シオンに遺恨を抱いて海渡る反る形の船の陣屋で無為の日を送っているが、我が方にはお前に太刀打ちできる者はいくらでもいる。さあ、そちらから仕掛けてこい」
 それに答えて輝く兜のラダマンティスが言った。
「牡牛座よ、ゼウスの寵を受け、一軍の将たるアルデバランよ。おれをか弱い子供か、戦を知らぬ女のように見立てて、力の値踏みをしようとなど思うな。おれは戦のことも、人殺す術も十分に心得ている。乾かした牛革の盾を左右に自在にさばくことも出来るし、俊足の馬を駆って戦車の群れに突撃することも、肉弾相打つ接近戦でアレスの前で戦いの踊りをすることも出来るのだ。しかしおれもお前ほどの男に隙を狙って打ちかかるような真似はしたくない。見事に打ち当てることが出来るか、堂々とやってみよう」
 こう言うと影長く引く槍を構えて放った。槍はアルデバランの持つ七枚革の大盾、その八つ目の層を成す一番上の青銅板に打ち当たった。頑丈な槍の穂先は六枚の革を貫き、七つ目の革で止まった。ついでゼウスの寵あるアルデバランが影長く引く槍を投げれば、ラダマンティスの持つ均斉取れた盾に当たり、堅剛の槍は見事な造りの盾を貫き、豪華な細工を施した胸当てまでも通して真っ直ぐに進み、脇腹をかすめて肌着を切り裂いた。しかしラダマンティスは身をねじって、からくも黒い死を逃れた。
 そして双方同時に槍を抜き取ると、獅子か野猪のごとくに相手に踊りかかった。ラダマンティスは手槍を振るって大盾の中央を突いたが、槍はこれを破れず、穂先はぐりゃりと曲がった。アルデバランが踊りかかってラダマンティスの盾を突けば、槍はずぶりと盾を貫いて、打ちかかろうとした相手をよろめかせ、その首に当たって傷つけた。しかし輝く兜のラダマンティスはなお戦いをやめず、後ずさると、原に転がっていたぎざぎざの黒い大石をたくましい手で拾い、アルデバランの持つ七枚革の恐るべき大盾の、真ん中の金めがけて投げつけた。青銅の音が鳴り響いた。次に今度はアルデバランが、さらに大きな石を持ち上げ、ぐるぐると回し、計り知れぬ豪力を込めて投げれば見事に当たり、ひき臼ほどの大石は盾の内側まで破って相手の膝を崩れさせた。ラダマンティスは盾の下敷きとなり、仰向けのまま長々と横たわった。アポロンがすぐに彼を立ち上がらせたが、この時、冥府軍、聖域軍の双方から伝令使が駆け付けた。
「お二方、今はもう戦いはおやめください。お二方ともいずれも立派な勇士、雲を集めるゼウスはお二人をともに愛しておられる、それは我らがみな承知のことです。それに今はもう夜です。『夜』の言うことを聞くのも悪いことではありません」
 それに答えてアルデバランが言った。
「それに対する返答はラダマンティスにさせるが良い。そもそも我が方に戦いを挑んだのは彼であるのだから、彼が先に答えねばならん」
 それに応じて輝く兜のラダマンティスも言った。
「アルデバランよ、神がお前に身の丈、力、また才覚を賜って、聖域軍中、槍を取ってはお前の右に出る者がないことが分かった以上、今日のところは戦いを中止しよう。後日また戦うことになるだろう、神が我らに判定を下し、どちらかに勝利を授けられるまではな。すでに夜になったし、『夜』の言うことを聞くのも悪くはない。さすればお互いの身内や戦友を喜ばせることができよう。だがその前に、我ら二人で何か立派な品を贈り合わないか。そうすればいつか、聖域軍、冥府軍を問わず、こう言ってくれるものがあるかもしれん、『あの二人は命がけの決闘をしたのだが、それから和解して、和やかに別れていったぞ』とな」
 こう言ってラダマンティスが銀鋲打った剣を鞘ごとと見事に裁断した吊り革を手にして贈れば、アルデバランも真紅の色も鮮やかな帯を与えた。二人は別れて、それぞれの陣屋へ戻った。冥府軍はラダマンティスが、勇猛アルデバランの向かうところ敵なき強腕を逃れて生きて元気に歩んでくる姿を見て喜び、無事であったのは夢かと思いつつ、町へ導いていった。他方、脛当て良き聖域軍は、アルデバランの勝利を喜び、大将シオンのもとへと連れて行った。

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