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2014年01月07日21:51

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シナリオ 「あとは朝までまっすぐ」 第一回

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広瀬組若頭武藤芳明の潜伏先、愛人宅、マンションの一室。
ガラステーブルを前にイラついている武藤。
向かいには愛人、玄関には拳銃を持った護衛一人。

「クッソォ!誠の野郎、俺のチャカ持ったまま殺られやがって!」と武藤。
「殺した相手はワカッてんの?」と愛人。
「ワカッてりゃこんなトコにいるか!バカ野郎!」
「バカとは何よ!心配してんのに!」

そんなやりとりを眺めながら、鳴り響くインターホンに緊張する護衛。二人もビクッとカラダを震わせる。
「誰?」と護衛。
モニターには三歳くらいの幼女。奈々である。
「そこの公園でマナミちゃんがケガしたんです、ママいらっしゃいますか?」

「マナミ!マナミがどうしたの!そこ開けて!」と愛人、跳ね上がるようにドアに突進する。ドアのチェーンを外して鍵を開ける護衛。勢いよくドアが開かれたところで、奈々、屠畜銃で愛人の眉間を撃ち抜く。ガタッと倒れたところで、素早く入り込んだレインコート姿の瑞穂がサイレンサーつきの拳銃を両手でしっかり構えて密着するように護衛の腹部に三発撃ち込む。護衛、尻に差した拳銃を取り出しかけながらドサッと座り込み、ウブッと血を吐いて、愛人に覆いかぶさるように前のめりに倒れる。

「おい!おいっ!何だよおめえら、ハハッ、何でちっこいガキどもが・・・」と武藤、ソファから立ち上がった瞬間、背後に風を感じて振り返る。ベランダに通じるガラス窓が開いていて、いつの間にか後ろに立っていたテオドラが柳刃包丁で脾臓のあたりからグッサリと横っ腹を貫いていた。グリッと刃が回され、傷口が大きく開く。出血は柄に装着された大きな脱脂綿に吸い取られてしまって目立たない。
悲鳴をあげようとしたが、全身から急激に血が引く寒さに耐えられず、歯をガチガチ噛み鳴らすだけである。

奈々が現金などをキティのディバッグに詰め込むのを虚ろな目で見つめ続ける武藤に、テオドラ、屈みこんで「ホラ、死ぬ前に吸わせてあげる」とタバコをくわえさせた。武藤、震える唇でタバコをくわえる。火をつけるテオドラ。タバコを吸い始める武藤。目をつぶって、もう一度目を開けて、瑞穂が部屋じゅうに灯油をまいているのにギクッとする。声をあげようとするが、タバコを落としたらどうなるか、足元に迫ってきた灯油の冷たさが全身を貫いた。必死に手のなかでタバコを揉み消そうと手をあげようとする。しかし、出血多量ですでに感覚がなかった。
「あっ」と口を開け、タバコが床に落ちて、火が部屋全体にあがった。

一室から火と煙が上がるのを見て、三人の幼女と少女、並んでその場を立ち去る。どこかから「火事だ!」の叫び声。

少女たちをぼやけさせて撮り、花畑を駆けていくところでタイトルイン。

「あとは朝までまっすぐ」。

おなじくぼやけた少女たちが公園、夕暮れの校庭、道路で遊んでいく姿を追いかけながら、画面の四隅に主要キャスト、主要スタッフのクレジットが流れる。

公園の女子トイレ。テオドラが隣から乗り越えて入り込み、鍵を開ける。そこには猿ぐつわと目隠しをされ、両手両足を縛られた六歳くらいの少女が便器に座っていた。目隠しをとると涙に濡れた目があらわれる。
「乱暴にしてごめんね、マナミちゃん」と奈々。「悪いことばっかりしてたママと新しいパパは死んじゃったから、おじいちゃんとおばあちゃんのところへ行ってね。行き方分かる?」
猿ぐつわをされたまま頷くマナミ。涙が溢れる。
「はい、これお金」と百万円の束を太ももの上に置く奈々。「新しいパパはもう使わないから、好きに使ってね。それからもちろん・・・」と奈々、三歳児とは思えない酷薄な目をしてくる。「あたしたちのことをしゃべったら・・・死んじゃうからね?」
マナミ、顔をそむけたままコクコクと頷く。
瑞穂、マナミの猿ぐつわを外してやる。「歯を使ってガンバレば外せるわ。叫んだりして人を呼んでもいいけど、その百万円を見ても助けてくれる善い人とは限らないよ?イチバンいいのは自分で抜け出してまっすぐおじいちゃんちへ行くこと。ワカるわね?」

回想。
雪原を走る家族連れ。セルビア人の難民である。後を追いかけるのは五人のクロアチア人の兵士。ライフルや拳銃を空に向けて威嚇撃ちしながら笑っている。まず父親が頭を撃たれ、次に母親が足を撃たれてレイプされ、それから幼いテオドラを抱きかかえて逃げる姉が捕まってレイプされて母親と同じように首を絞められて殺された。
幼いテオドラは兵士たちによってヨーロッパの性奴隷を扱う犯罪組織に売られ、そのまま日本人実業家に買われる。実業家はテオドラが十二歳になったら残酷に処女を奪って嬲り殺すつもりで、その日がくるまで思いっきりちやほやして甘やかした。しかし、目の前で家族を殺されたテオドラの心は溶けることなく、ある晩襲ってきた実業家を隠し持っていた果物ナイフで刺し殺した。血まみれで月に向かって泣くテオドラ。

机に向かって勉強していると、襖を蹴破って火だるまになった弟が駆け込み、「熱いよ、熱いよ、おねえちゃん、助けて!」と泣き叫ぶ。仰天した瑞穂は弟を背負って風呂場へ突進する。背中に火が燃え移り、髪を焦がす。風呂場で必死にシャワーをかけて火を消そうとするが、カラダの半分以上が赤黒くなった弟は動かなくなっていた。そこへ灯油缶を手にした父親が現れ、「ママも焼け死んだ。おまえも死になさい。私もすぐ行く」と灯油缶を持ち上げる。そこにシャワーをかけ、猛烈に突き飛ばし、父親が浴槽のなかに転がったスキに走り出し、泣きながら家を飛び出す。

暴走車が突進した後の道路には頭を潰された仲良しの子たち、あらぬ方向に関節をまげて動かなくなった保育士とママが転がっていた。そのなかで奈々は一人突っ立ってキョトンとしていた。車からは若い男がめんどくさそうに降り、ケータイで誰かと連絡をとっていた。「あ、モシモシ?イッパイ轢いちゃったよ、テメーのクルマでよ。どうしてくれるンすか?おかげでコッチャしばらく帰れネーじゃん、この野郎」若い男をまっすぐ見つめながら泣き叫ぶ奈々。

三人が出会ったのは教会直属の福祉施設だった。教会の入り口前でうずくまるテオドラを、窓にはりつく瑞穂を、日曜礼拝の後ひとりぼっちで残っていた奈々を、老シスターが拾ったのだった。

復讐は神がなす・・・

老シスターが祈りを捧げ、キリスト像の前に跪く。「あの子たちに力を、そして幸運を」

部屋の一室。新聞を広げて記事を一心不乱に読みふける男。目の下にはひどいクマ。向かいのソファの上にはキティのぬいぐるみ。
「奈々・・・一体どこにいるんだ・・・」
男は奈々の父親であった。それから書斎に入り、壁一面に貼った若い男たちの顔写真を見つめる。暴走車で妻たちを轢き殺した男たちである。現在は少年院に入っているが、数年もたてばシャバに出てくる。その時は大きくなった奈々を親戚に預けて、自分は復讐を果たすつもりであった。しかし奈々が行方不明とあっては。男の気持ちは千々に乱れるばかりである。

デパート。チャラい恰好の若者がトイレに入り、便器に腰かけたところで「ねえ」と女の子に声をかけられたので顔をあげると、そこには水中銃を構えた瑞穂の上半身があった。
「なっ・・・」
若者はその後を続けることが出来なかった。顔面を撃ち抜かれたからである。

フォト


「うんしょ」と瑞穂を肩車していたテオドラ、瑞穂をおろすと、そのままさっさと消えてしまう。ファーストフードコートでは奈々が一人座って、テーブルに紙を広げていた。中央には少年院に入っている若者が顔写真入りで三人並び、その周りには詳しい人物相関図が描かれ、家族構成も並べられている。赤線が引かれているのは始末したという意味だろうか。黒で丸く囲ってあるのは子供の名前で、そのなかにマナミの名前が見える。
「おなか減ったァ、食べよ、食べよ!」とテオドラ、瑞穂とともにハンバーガーなどを持って現れ、奈々の向かいに座った。「どれがいい?」と瑞穂。「照り焼き!」と奈々。
「そいつの弟はさっきやったから、コッチの仲間は後五人」とテオドラ。
「うん」と照り焼きを頬張りながら、赤ペンで名前を線で引く奈々。

それを陰で見つめる老紳士。ゆっくり携帯を取り出して「見つけた」と囁く。

暗転。
真っ暗ななかをエンディングテーマが流れるなか、全キャスト、全スタッフのクレジットが流れていく。
最後に、「あとは朝までまっすぐ」のロゴマークである血まみれティンカーベルが映し出される。

第二回に続く。
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