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2011年11月04日19:32

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犬神博士の夢十夜 後編

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第六夜

 周囲を海に囲まれた孤島の真ん中にそびえ立つ修道院、モン・サン=ミシェルを廃墟化したような建築物のなか。大きな丸いテーブルが置かれ、そこにおれと12人の男たちが座っていた。「・・・13番目を決めなければならない」「・・・不吉な数字を縁起のいい数字に変えるのだ」テーブルにはウロボロスの図柄が描かれてあり、その中央にはリボルバー拳銃が二丁置かれてあった。「どちらも一発だけ弾丸が入ってる・・・」「同時に2人死んだらどうなるんだ?」とおれ。「11人になったら、7人になるまで続ける・・・」ロシアン・ルーレットが始まり、おれが懸念していた通り、早速2人が死んだ・・・順番に引き金を引き・・・おれの番になり・・・弾倉を回して次に撃てる位置に弾を持ってきて撃鉄を起こし・・・自分のこめかみに当てた・・・少し銃口をずらし、隣のやつの頭蓋骨に飛び込むように引き金を引いた。額の肉をえぐりながらも、うまく隣のやつを斃したおれは、空になった拳銃を棍棒代わりにして飛びかかってきたやつを殴り殺した・・・そうして5人片付け、おれも含めて6人になった。「6は悪魔の数字・・・ゲームは終わった」おれの目の前は血だらけでよく見えなかったが、他の5人の男たちの背中から何かが生えてくるのが見えたような気がした。そこで目が覚めた。

第七夜

 高知県の山奥の祈祷師の家に泊まっている間、二つ三つのものすごい悪夢にうなされたが、その中で一番ものすごかったやつを書こう・・・ふと気がつくと、祈祷師と家族とともに囲炉裏を取り囲んで、何やらヒソヒソやっている。祈祷師は囁く。「あんたの部屋で、何かが這いずりまわっちょる」おれは辺りを覆う闇の雰囲気にすっかり呑まれ、大いに狼狽しつつ、電灯をつけようと必死にヒモを引っ張る。なかなかつかないので、思いっきり引っ張ったらヒモがちぎれてしまった。「向こうはあんたを探しちょるようじゃ」おれは恐怖にとらわれながら、懐中電灯を取り出すと自分の部屋の方に向けた。家族の者が「背中や、背中!」と叫ぶ。慌てて振り返ると、そこには粘土細工の人間の頭部像が置いてあった。子供の工作の宿題かなんかか?いや、違った。その顔が何やら蠢いているではないか!生きた人間の顔のように!!おれは絶叫すると、懐中電灯でそいつを叩き潰してやった。すると、祈祷師は「あっ、何かを喋りたがっておったのに」と言う。おれは、恐怖よりも好奇心が先立ち、子供とともに粘土細工を元に戻す努力をした。そしたら、手の中で粘土がぐにゃりと動き、生きた目玉がおれを睨みつけ、女の艶っぽい唇が白い歯を剥き出した。おれは身 体中に鳥肌が立つのを覚えた。そこで目が覚めた。

第八夜

 古いビルの屋上にいる。たくさんの人間の腐乱死体が横たわっているという話を聞いてやってきたのだ。しかし、そこに展開されていたのは、不気味に泡立つ泥の海だった。眺めやっただけで吐き気を催すような光景だった。同行したニューハーフの足元で、何かがぴちゃりと跳ねたので、ニューハーフはキャッと悲鳴をあげて後ずさった。おれは何だかその上を行かなければならぬ気持ちに襲われて、かつて人間であったものの泥の海の上を走っていった。しかも裸足で。足が染みるようで、その不快さときたら、全くとんでもなかった。足の裏で何か がねじれ、這いずり回る感触がある。何かが生きて、動き回っているのだ。ドジョウだかウナギのようなものが。おれは汗びっしょりになって、やっと屋上を横断した。それからビルの中に入り、階段を降り、エレベーターの前に立った。そこには仲間たちがいた。何だ、どうしたんだと仲間たちに呼びかけると、このエレベーターには悪霊が取り憑いていますと言う。目の前では開きドアが開かれ、中の“かご”が点滅する照明で照らされていた。誰も乗っていなかったが、向かい側の壁に人間のラクガキが描かれてあった。丸の下に線で手足を生やした、例の簡略なやつで、そいつは左に×印を抱えていた。よくよく見ると、その壁一面に血が飛び散った跡がある。「助かった人の証言によると、乗っている間、あのラクガキがアニメーションのように動き回るんだそうです」おれは何だかぞっとした。「助からなかった人はどうなったんだ?」「屋上に横たわっているのがそうですよ」おれはエレベーターの中のラクガキを睨みつけた。ラクガキはこちらに二つの小さな丸で表された目を向けると、おもむろにニヤリと笑ってみせた。そこで目が醒めた。

第九夜

 スキー場でスキーを楽しんでいると、いきなりゾンビ騒ぎになり、みるみるうちにスキー場はゾンビだらけになってしまった。おれは上級コースを滑りながら、スティックを二本ともゾンビの頭に突き刺して攻撃をかわし、ふもとのホテルまでたどり着くと、ロータリー除雪車に乗り込み、スキー場に群がるゾンビどもを「除雪」し始めた。らせん型羽根に巻き込まれ、五体バラバラになって排出口から吐き出され、雪原を赤く染める。途中でゾンビどもに囲まれたパジェロを見かけ、中からヤクザとおぼしき者が拳銃をぶっ放してるのを確認すると、羽根を顔の位置まで上げてパジェロに突進し、ゾンビの群れとともにパジェロのヤクザの頭部を「除雪」した。それからおれは急いで降り、パジェロの中から拳銃と弾薬、猟獣を調達すると、ゾンビ退治を再開した。間違って、生きたスキーヤーも「除雪」してしまったが細かいことは気にしないことにした。そうして、人間の血肉に染まった除雪車をガソリンスタンドまで飛ばし、給油しながら、スコップで羽根に挟まった人体のかすを取り除いた。スタンドでスニッカーズとエンジンチェーンソーを入手し、満タンになった除雪車に乗り直すと、意気揚々とスキー場に戻った。そこで目が覚めた。

第十夜

 病院に入院し、ICUで一時的に心臓が停まったとされる日に見た夢である。二つ隣のベッドで頭を枕カバーに突っ込み、何度もベッドに頭を打ちつけている患者がいた。脳麻痺を起こしていて、ああして死ぬのを待つしかないのだと看護師さんが説明した。身体じゅうにたくさん点滴をさされたおれは、動きようがなかったが、ペニスだけは自由自在に勃起することが出来た。カテーテルの引っかかりが痛かったけれども、我慢して、カーテンで周囲の視界が遮られるや、震える手でごしごし擦った。亀頭がピカピカになるほど膨れあがって、気分も最高潮に達した瞬間、ベッドの下から枕カバーをかぶった脳麻痺の患者が顔を出した。おれはうわっと叫び、そいつの頭に向かって精液をぶっかけてやった。患者は枕カバーごとしゅうしゅうと音を立てて溶けていき、宙を両手でかきむしるようにもがいた。おれは無我夢中でナースコールを押した。それから心臓をドンドン叩かれる感触を感じ、それが耐えがたいほどの痛みになり、おれははあっと息を吐き出して目を覚ました。意識がはっきりして、思い出したように二つ隣の脳麻痺の患者のベッドを見た。そこには誰も横たわっておらず、整理整頓された無垢なるベッドがあるだけだった。おれが危篤状態に陥る数時間前に息をひきとったのだそうである。
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