当寺の観音菩薩像は首がもげたままである。
オヤジとの大喧嘩で、オヤジの首に延髄斬りを食らわそうとしたら、後ろの観音菩薩像に誤爆して、首が落ちてしまったのである。
高校二年の夏であった。
それ以来、ずっとそのままになっていたのが、最近の地震で転がり落ちたのをきっかけに、いよいよ観音像を新調しようということになった。ケンタがお世話になっている業者にその旨のことを伝えると、「あんたんとこは変わったお寺だから、変わった彫り手を紹介するよ」と言われたのだそうである。
「どんな具合に変わってるんだって?」と私。
「兄貴みたいな人だってさ、釈迦如来、観音菩薩、仁王を目の前にすると、それぞれの性器が匂ってきて興奮し、絶頂に達するんだって。それから製作にとりかかるそうだけど」とケンタ。
「なるほどねぇ、別に変わっちゃいねえな。『日本霊異記』にゃ、吉祥天女の像にべっとりと体液をつけまくった坊主の話が出てるぜ。夢ン中で天女と交わった結果なんだそうな。こういうのをピグマリオン・コンプレックスっていってな、まあ、セックスの趣向だわな」
「ほんとに兄貴と話が合いそうだよ!!」
「いいじゃねえか、性器の匂いがぷんぷんする観音様って。楽しみだよ」
ちなみに祖父は1964年に我が国の京都の特別展示で公開されたミロのヴィーナス像が狼藉者によってレイプされた事件を面白がってスクラップしているが、この男もまたピグマリオン・コンプレックスの一人だろう。
記事によると、男はヴィーナス像の股間に牛肉を挟んで、珍宝をこすりつけたのだそうである。
私はもともと、仏像をありがたがって拝む方ではない。
仏像に想いを寄せる人間の念そのものをありがたがって拝むのである。
例え、それがフェチであっても。
そして腐女子の馨が観音菩薩像を新調すると聞いて、デザインは是非コレで!!と以下の写真を見せてきた。
「なんだ、コレ?」と私。
「『最遊記』ってマンガに出てくる観音様よ、それのコスプレ写真」と馨。
「ウチは萌え寺じゃねーんだからさ・・・でもキレイだな、オイ」
「でしょ?」
二次元を三次元に起こすのもピグマリオン・コンプレックスのひとつなのは確かだ。
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