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2011年02月05日23:30

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仮族、あるいは化族のこと。

東京大空襲。



その様子を、当時、浅草教会の神父と交際があった祖父は、「黙示録の風景」と評した。

「こんなにたくさん人が死んだら、日本人は絶滅一歩手前だ」と考えた祖父は、疎開先から帰ってきた学童たちのうち、両親を失ったものたちをお寺で預かった。

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それから自転車に乗って、メガホンで「子供を亡くした親御さん、同じく親を亡くした子供を引き取って新しく家族を興しませんか?」と呼びかけて、焼け野原となった東京を走り回った。

呼びかけに応えたものは少なかったが、それでも、六十一組の“家族”が出来上がった。これを祖父は家族ならぬ、“仮族”、また“化族”と呼んだ。

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血のつながったものよりも、心でつながったものの方が家族の絆が強い場合もある。

祖父のこういう考え方は、実は、吉原の“仮契り(けちぎり)”からきている。遊女と一生を添い遂げると仮の契りを交わして寝るというものだ。寝る度にいちいちもったいぶった契りを交わすのは、現代の若者からは考えられないことだろうが、実は普通の恋愛、結婚より深い関係になりうる、崇高かつ神聖なものがあった。かりそめの契り、愛、絆だからこそ、それ自体はいつまでも無垢なものになるのだと祖父は書いている。

でも祖父の「仮族」思想は、非道徳的と指弾されたらしい。
家族でも何でもないものが一緒に暮らすのは、お互いのためになるわけがない、と。

そこで祖父はこう反論した。
血縁の純血性は恐れ多くも天皇家だけでたくさんだ、我々臣下の民は減った分、どんな手段を用いても増やすことを最優先して、頭数を揃えるべきだ(祖父は天皇が嫌いだったのでこれは方便であった)。

最後まで反対した檀家のFさん(故人)は、私から見ても呆れるくらいロマンチストで、仮族を認めたら日本人の血統がメチャクチャになる、清和源氏、武将の末裔の血筋が霧散しちまうと嘆いていた。

実際、私の小学生の時のクラスメイトも家の教育なのか、我が家は○○の殿様の血筋だと威張っていたのだが、本人はバカもいいところで、人間性も最低だった。それゆえに、血筋を持ち出して威張るしかなかったのなら、それはしょうがない。

祖父はそういう輩を心底嫌っていた。こんな人間ばかりだから日本は負けたのだとも言っていた。

今。

祖父が送り出した六十一組の仮族は、枝分かれして、それぞれが自分の家庭を持っている。そのうちの一家にケンカはしませんでしたかと聞くと、一人は笑って、そりゃしましたよ、あんたはほんとの子じゃないからね!!とか言われました。でもそんなこと言い合ったってしょうがないじゃないですか、ほんとのことなんだから。そうやってケンカしてね、最後にはお互いわあわあ泣いてスッキリして仲直りしました、とにこやかに語った。

当寺は極端ではあるけれども、すべての人間関係とは、心での絆がつながっていてこそのものだろう。

血がつながっていても、心は離れている家族の何と多いことか・・・

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