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2010年09月05日22:38

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ゆがむ部屋のこと。

幼少時の頃、テレビでヒッチコックの映画「サイコ」を観て以来。
いわゆるサイコな犯人に興味を持つようになった。

人間離れしているくせに、どこか人間臭いのは一体どういうことだろうと不思議に思ったからである。

本格推理からサイコサスペンスに好みが移ってすぐに、パリ人肉事件が起きて、世間が大騒ぎするなか、小学生の私は佐川一政氏の心の闇に“憑依”して、ノートに佐川氏が思ったこと、感じたことはこうであったに違いないと書き綴ってみた。
それを読み返して、私はコンプレックスから脱却するために狂気を自己演出することもありうるのだと知った。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AA%E4%BA%BA%E8%82%89%E4%BA%8B%E4%BB%B6

自覚せずに猟奇に陥る者などいない。

狂気は心神喪失にあらず、自己覚醒である。

このへんは、一見無計画であっても、自分のしたいことの通りに目的を果たす時点で、犯人に責任能力は確実にあるという私の考えの基礎になった。

中学に入ってから、横溝正史の「八つ墓村」を通して津山事件を知り、映画化もされた西村望の「丑三つの村」を読んで、犬丸継男(都井睦雄をモデルとした主人公)の哀しさに泣き、犯人は狂気から醒めるために殺人を犯すこともありうるのだと知った。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A5%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6

ここに至って、私がなぜこれほどまでにシリアルキラーに興味を示すのか、自分でも大体分かってきた。
それは家族も含めた周囲の反応がいちばんの要因だった。
何か殺人事件が起きると、犯人はアタマがおかしくなった、であっさり片付けられたのである。
それはそれで、一般人の正しい反応なのだが、当時の私はああいう事件を繰り返さないためには何が人間を狂気に走らせるのか、その闇と向き合うことが必要だと義憤を感じていたのだ。

怪物を倒すためには、自らも怪物になるほどに怪物に詳しくならねばならぬ。

高校に入ってから起きた、シリアルキラーの新時代の到来を告げるかのような歴史的大事件、宮崎事件。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BA%8B%E4%BB%B6

この事件のおかげで、宮崎の部屋以上にモノを積み上げていた私はからかいではあったろうが、オヤジたちから犯人と同一視された。
しかし、親友の一人は「今田勇子の告白文」を読んだ私の推理を聞いて、私のことをほんもののシリアルキラーだと思い込んで家族会議を開くなど慌てふためいた。
「食べちゃったんじゃないの?」と私が言ったのが当たったからである。
親友の疑惑の眼差しをごまかすために、私は単なる思いつきだよと言い訳をしたが、「悪魔のいけにえ」を強くススメたのを根に持ってるらしく、彼はいまだに私が何かをしでかさないかと毎日新聞をチェックしているようだ。
宮崎事件が私に与えた影響、心に刺さったひとつの“トゲ”は、部屋であった。
私の神聖なる知識の宝庫たる部屋さえも犯人の部屋になりうると指摘された、部屋の混沌の彼方。

部屋はその人の心の風景である。

それで、私は「格好をつけるために」整理整頓を習慣づけたのだが、片付けるために散らかすのが常になってしまい、現在に至っている。

酒鬼薔薇事件が起きた時も、私は少年Aの部屋に真っ先に興味を持ち、方眼用紙と厚紙で模型を作ってみた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%92%E9%AC%BC%E8%96%94%E8%96%87

それを眺めながら、事件に至るまでの犯人の心理風景を再構築してみるという試みで、事件を題材にしたシナリオを書いた。ビートルズの「ストロベリーフィールズ・フォーエバー」を聴きながら殺傷を繰り返す少年の内奥を描いた内容だ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E5%B0%91%E5%A5%B3%E7%9B%A3%E7%A6%81%E4%BA%8B%E4%BB%B6

この時の経験が役立って、今回、新潟少女監禁事件を題材にした長編小説にチャレンジすることになったわけなのだが、犯人の心理風景である、神聖して侵すべからざる“部屋”に、なぜ現実世界の少女を入れなければならなかったかを解きほぐしていきながら、現代人の孤独を描くと決めた上で、私は以下の本に多くを頼った。

フォト


フォト


建築家の横山彰人氏による「子供をゆがませる間取り」。
佐木隆三らによる事件レポート以上に、こういう部屋からの視点は、私の創作意欲を大いに刺激した。
もちろん、部屋や家には罪はない。
部屋や家の造りが人間に悪影響を与えるのではなく、人間が部屋や家に取り憑くのである。
そういう信念の元に著者と意見を闘わせながら読み進めたのは、ほんとうに色々なインスピレーションがわいた。

そういうわけで、長距離マラソンに挑んだわけであるが、私の部屋へのこだわりようは、過去に書いた作品にも見られるので以下に貼っておく。

「噛みつき農園」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=187932278&owner_id=1640816

「姉の力」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=273603546&owner_id=1640816


最後に。
あなたは、神聖にして侵すべからざる自分だけの部屋を作り上げてそこでくつろぐ際、視線を感じないだろうか?
その視線の主は誰なのか分かるだろうか?
それを私は作品に書くわけである。


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