こんなに元気なのに退院許可が下りないので、一体どういうわけだろうとぷりぷりする。
トヨエツは一晩点滴打っただけで退院したじゃないかと詰め寄ると、お医者先生、「あちらは一口食べただけ。キミはひとパック全部食べたんだよ。どれだけの菌を体内に入れたのか分かってるのかね!?」と。
「全部戻したんだから大したこたあねえっすよ」と反論すると、「バカいいなさんな、とにかく腹ん中がキレイになるまでキミはここから一歩も出さん。それにしてもキミはなぜ元気なのかね?まるで腸チフスメアリーだよ」と。
腸チフスメアリー。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3
ジョジョの荒木飛呂彦先生も漫画にしているので、興味ある方は一読を。
それから、幼少時に寄生虫はいたかとか、昆虫や爬虫類を生で食べたかとか色々質問され、すべてイエスと答えると、牡蠣にあたったんじゃなくて、単に牡蠣を喉に詰まらせただけじゃないのかなと言い出してきたので、ああ、そうかもしれない、鼻の穴から牡蠣が出かかったのをつまようじでほじくったから・・・と納得しそうに。
「腸チフスメアリーがあれだけ騒がれたのは、他でもない、他人に迷惑をかけたからさ。腸チフスをバラまいたんだからな。キミも大腸菌の保菌者として他人を感染させてみろ。同じ運命をたどることになるぞ」
「分かった、分かりましたよ、先生。おとなしくしますよ」
「それからもう一つ。いい年して看護師を驚かすのはやめたまえ」
「はいはい・・・」
私が脱走しないように監視しているのは、看護師たちなのだが、部屋のなかを動き回っているのを毛布のなかから片目だけをのぞかせてじっと眺めるということをやっているのだ。
その様子がものすごく不気味らしく、昨日はビクビクする若い看護師をベッドのカーテンごしにいきなり腕を掴んでやったら、肺いっぱいの空気を吐き出すような悲鳴をあげた。
それでも。
私は脱走さえしなければ、セクハラ患者よりはずっとましな、世話のしがいがある患者なのだそうである。
そうかもしれない。
セクハラは不快でしかないが、シャレになる不気味さと恐怖は彼女たちにとって一種の清涼剤なのだろう。
その証拠に、さっき、夜勤の看護師さんたちが私のところから日野日出志の「赤い蛇」を借りていって、その御礼にとプリンと大福をくれた。
しょうがない、もう少しガマンしよう。
でも今晩は曇っててフラストレーションがたまる。
昨晩はきれいな満月で、月の光を浴びながら上半身裸になって力こぶを作ったり、歯を噛み鳴らしたりして、結構ストレス解消出来たのだが。
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