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2008年10月07日23:47

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映画「MISHIMA」における緒形さん語録。

死因は肝がん 緒形拳さん、関係者らに口止めして闘病 直人さん「仕事に意欲的で前向きな人」
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=629658&media_id=54

映画「MISHIMA」キャスト

三島由紀夫・・・緒形拳

森田・・・塩野谷正幸
母・・・大谷直子
祖母・・・加藤治子

「金閣寺」

溝口・・・板東八十助
柏木・・・佐藤浩市
まり子・・・萬田久子

「奔馬」

飯沼勲・・・永島敏行
堀中尉・・・勝野洋
蔵原武介・・・根上淳
警部補・・・池部良

「鏡子の家」

収・・・沢田研二
清美・・・李麗仙
夏雄・・・横尾忠則
武井・・・倉田保昭
チンピラ・・・平田満
収の母・・・左幸子


・・・・・・


「三島由紀夫役に決まったことについて」

はじめは「自分の役ではない」と断ったが、監督と会って出演を決意。

「まさかね、自分がやるとは思わなかったものだから、いよいよ困ってきたなーなんて生意気なことをいったりしてたんですよ。で、おまえがやれっていうんで、エッ!オレ?って最初は笑っちゃったですよ。とにかく、10分でいいから監督に会ってくれといわれ、会って話しているうちに10分が1時間になった。そのうち、この監督とこの脚本で戦ってみても悪くないな、と思った」

「役作りについて」

三島がボディビルを始めたのは30歳。緒形が役作りのためにボディビルを始めたのはすでに46歳。しかも映画なので短期間で身体を作らなければならない。さらに合間に剣道の朝稽古もやった。
また、役作りの一環として、三島の小説や評伝を読み、三島の知人だった何人かに会って話を聞いた。ただし、「三島を好きだった人ではなく、三島を嫌いだった人」。

「好きだった人の話はある程度予想がつくでしょ。ほとんど輝くような人だったとかね。三島さんのような実在した人を演じる時、自分でその人に惚れてしまうのはわかっているんです。でも、演じるためには、最初からドップリつからないで、もうひとつ、突き放したところ、醒めたようなところが必要だと思う。三島さんは、日本人でありながら、なんというか日本人の枠を超えている。あんなに多角形で、いろんな面を持っていた人は珍しいんじゃないかと思う」

「市ヶ谷演説の演技を終えて、インタビュー」

三島邸のテラスの撮影があった時、四月十二日だったかな、緒形さんが突然「おまえら聞けえ。俺は四年待った!!」と叫んだことがありましたね。あれはジョークですか?それともリハーサルのつもりだったんですか?

「ハハハ。冗談ですよ」

それにしては真に迫っていた。

「仕事にいちばん必要なのは、ピーンとはりつめたものでね。それから、ちょっとしたユーモアってヤツ。一生懸命やるだけなら、誰でもできるんですよ」

郡山(市ヶ谷演説のロケ地)では、演説を何度も繰り返して、声が完全につぶれてしまいましたね。

「ああ、最後にはつぶれました。つぶれない自信はあったんだけど、やっぱりずいぶんやりましたからねえ」

映画では5分ぐらいになりそうだけど、2時間もカメラを回した。とてもうまくいったと思うんですが・・・。

「そうですか。自分では、決してうまくいったと思っていない。あのシーンは、いちばんリテイクしてほしい。笑。しかし、考えてみると、もう一度リテイクしたら今度は論理的に演説して、上手にやっちゃうんじゃないかな。だから下手にやれてよかったなって感じもする。あれは、ほとんどもう怒号しているだけで、演説じゃないですよ。どんな役をやってもそうですけど、演じてるって感じが見えない方がいい。ああ、うまい演技だなというのではなくて、その人がそのままそこにいる、みたいな感じはなかなか出せないものです」

バルコニーで演説していて、一瞬、何を考えました?というのは、三島の疑似体験をしているわけですけど・・・。

「僕は、あのときは、このあと死ぬんだってことしか考えてませんでしたよ。いいたいことは、もっともっとあったんでしょうけれど、これはこれでしょうがないって感じで・・・。だからセリフもあっちいったり、こっちいったりメチャクチャになっちゃう。それに、全身で怒号すると、頭が空っぽになるというか、貧血状態になってしまう」

ああ、それで何が何かわからなくなってきたというセリフが飛び出した。緒形さんが狂っちゃったんじゃないかと思って心配しましたよ。笑。

「やっぱり、自分が何をやってるのか、わからなくなったんでしょうね。だから、もう一度やれば、今度は整然として、あ、ここで少し声を落とそうとか、ここで高く、なんていう計算が出てしまう」

うーん、演技というのは、なかなか難しいものですね。

「それで、僕はいつも思うんです。風のようにやりたいなと。いまここに木がたくさんあって、風でゆれている。そんなふうに自然にやれたらいいな、と思うんです。やっぱり役者っていうのは、普段じゃないですか。普段はなるべく普通にしていたい。で、やるときはドラマチックなものをやるんだけど、ナチュラルというか、直球でやりたい。変化球を覚えるのは、もう少し歳をとってからでもいいんじゃないですかね」

ポール・シュレイダー監督の演出はどう思いますか。テイクが多くて撮影がかなり大変なんですけど。

「しつこいですね。笑。でも、しつこいのはもう今村昌平で慣れてますから、こんなもんだろうなと思いました。いろんな面を撮りたいと思ったら、やっぱりテイクが多くなるのは当然だしね。どんな監督とやろうと、要するに勝ち負けではなくて、ぶつかり合いですから。ポールは人間を凝視していますよ。こっちは、監督に委任状を書くみたいなもので、監督のOKは、オールOKなわけですから。まあ、映画を作る人って、どこの国の人も同じですね。やっぱり、いいものを撮りたくて、ベストは何だろうといつも考えてるんじゃないですか」

「カンヌ映画祭にて、記者会見」

記者に「三島役をどう思うか?」と聞かれて。

「ボンジュール。笑。アイ・アム・ア・サムライ。笑。日本では、彼はサムライだというと、それは勇気がある人物だという意味なのです。三島役をやることについては、非常に勇気が必要でした。どんな苦労をしたかということは、俳優の企業秘密です。ただ、撮影が終わると髪の毛が真っ白になり、みごとに老眼になりました。いままで、自分で絶対やった!という作品はありませんでしたが、『MISHIMA』を観た後、愚かしいことに自分の演技に涙しました」

以上、垣井道弘氏のドキュメンタリー「MISHIMA」(飛鳥新社)より引用。

こうして読み返してみると。
緒形さんのブレない姿勢がありありと伝わってきて、私はまた涙を流しました。
肝臓がんを隠し通して、最期まで仕事をやりぬいたその人生に、大いなる畏敬の念を抱きます。
重ねて、合掌。
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