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2008年02月23日23:18

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パンクの元祖、金子光晴翁。

狂風が祟って、頭痛と歯痛がぶり返した中、サラさんが私に会いたいという高校生の男の子を連れてきた。
軽音と演劇をやっていて、若いのにセックス・ピストルズに陶酔しているという、いまどき珍しい黒髪のエッジのきいた子だ。
見た目は、山本太郎を幼くしたような感じ。
名前は正毅と書いて、マサタケ。
意地悪く「サルマタケ」と呼びたいところだけれども、自分でも気持ち悪いくらい優しい声で「正毅くん」と呼んだ。
「オレに会いてえとのこと、どんな御用だえ?」と私。
「あんたがパンクのかたまりみたいだって聞いて、どれほどのもんか話してみたくなったのさ」と初っぱなからこの態度。
私は鉄拳制裁をする感じで強烈な笑顔を見せて、「正毅くん、イキがいいのはまことに結構。だが、てめえ自身がただの青臭えガキだってえのを思い知るのはなかなかこたえるぜ?」と凄む。
側でふーっとため息をつきつつ、かぶりを振るサラさん。

で。

頭痛と歯痛に負けないくらいピリピリした空気の中、私は徹底的に正毅くんを痛めつけてやった。
予想通り、彼のパンクぶりはセックス・ピストルズへの憧れ程度のもので、肝心の主体性がまるでなかったのだ。
つまり、自分自身の「怒り」がない。
その層の薄さを私は残酷なまでに踏み破ってしまった。

犬神図書館の中で。

私は正毅くんの心に強烈なビンタをはりつつ、「我が国にもパンクの元祖がいたことを知ってるか、貴様?」と叱咤を浴びせる。
「知らない!」と泣き声で返事するところへ、金子光晴の詩を聞かせてやる。


恋人よ。
たうとう僕は
あなたのうんこになりました。

そして狭い糞壺のなかで
ほかのうんこといつしよに
蠅がうみつけた幼虫どもに
くすぐられてゐる。

あなたにのこりなく消化され
あなたの滓になつて
あなたからおし出されたことに
つゆほどの怨みもありません。

うきながら、しづみながら
あなたをみあげてよびかけても
恋人よ。あなたは、もはや
うんことなつた僕に気づくよしなく
ぎい、ばたんと出ていつてしまつた。


「どうだ、正毅くん。英語の歌詞を翻訳したものを思い浮かべるより、こっちの方が同じ日本人としてイメージが浮かびやすかろう。シドに憧れるのは結構、しかし、それ以上に日本語、てめえ自身の言葉でイメージすることに没頭しなきゃな。即ち」と私、正毅くんに金子光晴の詩集を渡し、「叫び続けろってことだよ」と言葉の鉄拳を叩きつけてやった。

ちなみに金子光晴はほんとうにこんな詩ばっかり書いてた人で、しかも、こうした詩をまとめて恋愛詩集とうたっているがゆえに、私は我が国のパンクの元祖として敬愛しているのである。

フォト


平成生まれの少年はもちろん、どう逆立ちしても金子光晴と出会うきっかけなどあるわけがない。
従って、そのボキャブラリーときたら、まるでお話にならぬくらい酷いものだ。
叫び方も全然なってなく、何を叫びたいのか自分でも分からぬまま一生を終えるのがおちだろう。
しかし。
正毅くんは幸い、かつ、不幸にして、この私と出会ってしまった。
出会ってしまったからには、私は映画「フルメタルジャケット」のリー・アーメイのように鬼のシゴキでもってビシビシ鍛えるつもりだが、正毅くんに少しでも根性があるのなら、是非とも美しい日本語で「くそったれ!!」と叫んで欲しい。

それにしても、学校の現国と古文の先生は一体何をやってるんだ?
この給料ドロボーが!!!!!
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