将棋の話である。
渡辺明九段が、順位戦B級1組で4連勝した。
順位戦は1年間かけて戦うリーグ戦で、A級10人とB級1組13人は総当たりである。A級の優勝者は名人に挑戦し、下位2人がB級1組に降級する。B級1組は上位2人がA級に昇級し、下位3人がB級2組に降級する。
渡辺明九段は42歳。20歳で竜王のタイトルを獲得して以来、竜王11期、名人3期など、数々のタイトルを獲得してきた。谷川浩司九段、羽生善治九段という一時代を築いた棋士たちの後を継ぎ、長く棋界のトップにいた棋士である。
その渡辺が2年前、趣味のフットサル中に左膝の靱帯を損傷した。手術を受けたものの回復が思わしくなく、入退院を繰り返した。ついには対局もままならなくなり、2025年9月から長期休場することになった。その間に在籍していたA級では、休場による不戦敗もあって1勝8敗。最下位となり、B級1組への降級が決まった。
将棋とは関係のないフットサルでの故障だっただけに、何とも惜しい。しかも渡辺は、タイトルを失って再起を図ろうとしていた時期だった。藤井聡太が台頭する前、渡辺は将棋界の頂点にいた。藤井(24歳)の世代が一気にタイトルを独占していく時代を迎え、渡辺はその防波堤になれる数少ない棋士だったと思う。
もちろん、藤井の強さは別格である。渡辺も名人を含むタイトルを次々と奪われた。それでも、かつての渡辺の将棋には、十分な研究に裏打ちされた読みの深さと、相手を押し切るような分厚さがあった。
その渡辺が、今年5月に復帰した。そして現在、B級1組で4連勝である。しかも、ただ勝っているという感じではない。内容を見ても、以前の渡辺らしい、相手に付け入る隙を与えない横綱相撲のような勝ち方が戻ってきた。
B級1組は12局を戦う。まだ4局を終えただけだから、A級復帰を口にするのは早い。しかし、4連勝というスタートを見ると、期待したくなる。このまま勝ち続けて、1年でA級に戻ってくるのか。そして、もう一度A級の舞台で、藤井聡太と戦うことができるのか。
渡辺明には、もう一踏ん張りしてほしいな。
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