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2026年06月16日07:57

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言っもしょうがなかった(6979)

もう30年以上も前の話である。

高校の図書館の司書室に自分の机があった。当時はまだ職員室で喫煙ができた時代だった。煙が苦手だったので管理職に相談し、その影響のない司書室へ移った。校舎は3階建てだったが、図書館だけは4階にあった。司書はとても面倒見のよい人で、昼休みも放課後も生徒がよく集まっていた。

その中に、いつも図書館へ来る3年生の男子生徒がいた。ある日、岐阜県の大学が主催する高校生文学コンクールに入賞したと報告に来た。司書と一緒に作品を読んだが、内容は覚えていない。ただ、入賞したのだからそれなりに評価された作品だったのだろう。授業で教えたことはなく、図書館で話をする程度の関係だった。

彼は地元のスーパーへの就職が決まっていた。普通科の就職コースだったので、進路としては特に珍しくない。ところがその就職を辞退すると言い出した。理由は小説を書きたいからである。司書と二人で止めた。就職して社会の仕組みを学びながら書いても遅くはないのではないか。多くの作家もさまざまな経験を作品の糧にしている。そんな話をしたのだが、本人の決意は変わらなかった。結局、就職は辞退した。当時は一度内定を辞退すると、学校として新たな就職先を斡旋することは難しかった。そのまま進路未定の状態で卒業していった。

もちろん、高校生文学コンクールへの入賞は立派なことである。しかし、それは作家としての将来を保証するものではない。むしろ文学の世界は、才能だけでなく運や縁、そして長い年月の積み重ねが必要な厳しい世界だ。だからこそ、生活の基盤を持ちながら書き続ける道もあるのではないかと思った。もっとも、若い頃にはそうした現実的な話はなかなか届かない。夢が見えているときには、その夢に向かって一直線に進みたくなるものだ。

彼も今では50歳前後になっているはずだ。その後どのような人生を歩んだのかは知らない。ただ、図書館の司書室で将来を語っていた姿だけは、今でも時折思い出す。
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