3月に教職員の人事異動が発表された。だが、もう知っている名前はほとんどない。組合の役員をしていたから、もう少し把握していたはずだが、再任用者の名簿は載らず、せいぜい管理職で見覚えのある名前があるくらいである。
妻が名簿を見ながら言った。
「○○さん、七尾の高校の校長だったのに、金沢で教諭になっている。どうして?」
「悪いことして格下げなら、こんな形では出てこんやろうし、おかしいね」
気になって調べてみると、同じように校長から教育委員会へ配置換えになっている人が何人もいる。普通、教育委員会に行くのは指導主事などの行政ポストで、しばらくして管理職として現場に戻るケースが多い。どうもそれとは様子が違う。
「これ、教育委員会に行かずに現場を選んだんじゃないか?」
さらに見ると、「役職定年につき」とある。
実際の定年は延びたが、ポストは限られている。後がつかえている以上、校長という役職からは外れるしかない。制度としてはそういうことなのだろう。だが、校長から一転して現場の教諭に戻るとなると、本人も周囲もなかなか気を遣いそうである。
その日のうちに、今度は妻に某私立高校から非常勤講師の打診があった。退職者が出て生物の教員が足りないらしい。
「時給3300円で、公立より高いよ」と言われたようだがが、少し考えてお断りした。
「教えたかったら、定年ですっぱりやめてないわ」
夫婦とも、もう教壇に立つ気力はとうに無くなっている。
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