将棋の話である。
竜王戦2組ランキング戦(トーナメント第1局)、丸山忠久九段対澤田真吾七段戦。
竜王戦は読売新聞社主催。1〜6組に分かれ、各組の上位者が決勝トーナメントを戦い、優勝者が現竜王の藤井聡太と七番勝負を行う。他の棋戦と違い、アマチュアや女流の参加枠が多く、勝ち上がれば一気に竜王位に挑めるのが特徴だ。
丸山―澤田戦は10時開始。16時6分、76手で千日手。30分後に指し直した第2局も18時55分、65手で再び千日手。さらに30分後に始まった第3局は22時25分、77手で澤田七段が勝利した。千日手を2度含む、実質3局の長丁場である。
丸山九段は56歳。名人2期、棋王1期のタイトルに棋戦優勝15回の実績を持つ。今期は14勝17敗。羽生世代として負け越してはいるが、力が衰えた印象はない。澤田七段は35歳。順位戦はB級1組で、今期は16勝13敗。両者の初対局も千日手だったというから、意地の張り合いというか、不思議な相性を感じさせる。、
だが、この日の白眉は第3局60手目、後手丸山九段が指した「9四歩」である。すでに終盤に入りつつあり、形勢はAI評価で25%ほど(澤田七段が75%)と劣勢。激しく戦っている局面から遠く離れた端の歩を、ぽつんと突いた。
もう勝てないから仕方なくでも、他に指す手がないから、でもない。
「やってみろ」である。
一見わけのわからない手。しかし、だからこそ凄みがある。結果をみれば形勢は逆転しなかったからパスの一手になった。だが観戦していた堀口一史座八段が「名局」と評したのも頷ける。千日手2回というだけでも十分に異様な一戦だが、この9四歩があったからこそ、記憶に残る対局になった。
さて、YouTubeではどう紹介されるのだろうか。楽しみである。
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