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2025年11月30日00:58

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『いついつまでもこんな日を』

 2025年のロス誕作品です。『聖闘士星矢』の二次創作で聖戦後復活設定、ロスサガ前提。
 今年は11月下旬になってようやく「やっべー!今年のロス誕のネタを何も考えてねー!」と気付いて、何とかひねり出したのがこれです。
 双子誕、ラダ誕、ロス誕、最近では「海が好き!」はノルマだと思って毎年、小説を書くことにしてるのですが、手を変え品を変えで我ながらよくネタが持つよ…褒めて!
 昨年の話はこちら。『病欠の理由』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23506378

『いついつまでもこんな日を』

 十一月三十日は、射手座の黄金聖闘士であり教皇でもあるアイオロスの誕生日である。この日、聖域では朝から教皇アイオロスの生誕を祝う祝賀行事が執り行われる。
 早朝からのアテナ女神への感謝の礼拝、アイオロス本人や代表者からの祝辞や答礼のスピーチ、周辺の地域や聖域の住民たちとの懇談会や立食パーティー、様々な体育競技の開催…とまあ、盛り沢山である。アイオロス本人が「祝うつもりがあるならゆっくり休ませてくれ!」と愚痴るのも無理はない、ハードスケジュールな一日となる。
 そんな一日がかりの祝賀行事の最後が、教皇と黄金聖闘士たちとの晩餐会だった。気の置けない親しい仲間たちに囲まれた教皇アイオロスは、これで行事も終わりだという解放感もあって、聖域で作られた葡萄酒の新酒に快く酔った。そしてついつい飲みすぎ、酔いが回って足取りもおぼつかない状態になってしまい、奥の回廊に下がると同時に、首席補佐官を務める双子座のサガに肩を貸されて千鳥足で自分の寝室に戻る羽目になったのだった。
「まったく…誕生祝いだからといって、さすがに飲み過ぎだ」
 サガに介助されて寝室まで何とかたどりつき、黒絹に金糸と銀糸で刺繍がされた豪奢な教皇の法衣をまとったままで広い寝台に大の字で倒れ込んだアイオロスを見下ろして、彼の恋人でもあるサガが愚痴った。
「いいじゃないか〜。おれは嬉しいんだよ〜」
 脳細胞の隅々まで酒精に浸されて上機嫌なアイオロスが朗らかに言う。
「あんなに小さかった連中が、立派に成長して、大人になって、こんな風に一緒に酒を飲める日が来るなんてさ〜。まあ、あの頃はおれもまだ子供で、酒の味なんて知らなかったけどさ。あはははは!」
 アイオロスのその言葉に、自分が過去に犯した罪を思い出して、アイオロスから彼が「成人」する機会を、そして後輩たちの「成人」を祝う機会を奪ってしまったことに思いを馳せたサガは、突如、滝のような落涙をしつつ床に手をついて嘆いたのだった。
「す、すまない…すまない、アイオロス…っ!私が謀反などを起こしたせいで…!」
「ああ〜、そういうのはもういいから」
 アイオロスが軽く手を振ってサガの嘆きをいなす。何かのきっかけで贖罪モードに入ってしまい滝涙とともに土下座をしてくるサガの扱いも、だいぶこなれてきたアイオロスであった。何とも面倒くさい恋人なのだが、まだ幼かった時期にサガに一目惚れで同性と知らぬまま初恋に落ちて以来、ひたすらサガしか目に入っていない「サガ専」なのがアイオロスなのだった。
「はあ〜。もう着替えるのも面倒くさいな。このまま寝てしまおうか」
 豪奢な法衣を着たまま寝台で大の字になるアイオロスがものぐさ根性を発揮した途端、それまで滝涙で土下座していたサガは一瞬にして補佐官モード…というよりは「世話焼き女房モード」に切り替わった。
「それはだめだ。法衣がしわになってしまう。ほら、着替えて」
 サガは手を貸してアイオロスの上半身を起こさせると、彼の首元に手を回し、首飾りやロザリオを外したり襟元のボタンを外して、絹の法衣を脱がせにかかった。
「なに?今夜はサガが脱がせてくれるの?積極的だな〜、嬉しい〜」
「ふざけたことを言っていないで、自分でも動いてくれ」
 サガに介助されながら、アイオロスは法衣を脱ぐとシンプルな白い夜着に着替えた。その後もサガはアイオロスが脱いだ法衣の形を丁寧に整えて、ハンガーにかけてラックに吊るした。
「あとは、寝る前にきちんと歯磨きをするのだぞ」
 完全に小さな子供に対するオカンの口調である。しかしそれも「う〜ん、こういうやり取りも熟年夫婦っぽくて良いな」と幸せな形で脳内変換されるアイオロスなのであった。
「そうだ、サガ。アフロディーテが昼間にプレゼントをくれたんだけどさ」
 猛毒を持つ魔宮薔薇を武器であり友とする美しい魚座の黄金聖闘士の名前を上げて、アイオロスがサイドテーブルの引き出しを開けて小箱を取り出した。可愛らしいピンク色の包装紙に空色のリボンがかけられたまま、その小箱は手つかずになっている。午後の執務と祝賀行事の隙間時間にアフロディーテから受け取った後、未開封のままアイオロスが棚の中にしまい込んでいたものだ。
「一緒に開けてみない、サガ?」
「ああ、そうだな」
 後輩からの心づくしのプレゼントを、アイオロスとサガは一緒に開封した。空色のリボンをほどき、包装紙を開くと、紙製の小さな箱があった。その箱の中に入っていたのは、耐熱容器に入った薄紅色の太く短いろうそくだった。
「これは…アロマキャンドルかな?」
 ろうそくの香りを嗅いで、サガが言う。薄紅色のろうそくからは薔薇の香りが漂っていた。アイオロスもろうそくに鼻を近づけて香りを嗅ぐ。
「う〜ん、いい香り。さっそくつけてみない?」
「そうだな」
 アイオロスの提案に、サガが寝室を照らすランプの灯りからろうそくに炎を移す。耐熱容器の上でろうそくの炎が揺れると、小さな炎の動きに合わせて薔薇の芳香が寝室に漂った。
「う〜ん、いい匂い。さすがはアフロディーテだな」
「ああ」
 オーガニック100%で作られた薔薇のアロマキャンドルの華やかで気高い香りに、アイオロスとサガは酔いしれた。
「う〜ん。この匂いを嗅いでたら、なんかこう、むらむらした気分になって来た。ねぇ、サガ…今夜…」
 自分の隣に座るサガにアイオロスが手を伸ばす。だがサガは恋人の手を軽くはたいた。
「馬鹿者。昨夜、あれだけやったのを忘れたのか?」
 アイオロスとサガは、アイオロスの誕生日前日の夜は一緒に過ごそう、と毎年、約束していた。誕生日を迎えるその瞬間を二人きりで迎えるためである。そして前夜もアイオロスはサガと一緒に夜を過ごし、サガが
「頼むから、もうやめてくれ…。これ以上されたら身体がつらくて、明日の祭典に出席できなくなってしまう…」
 とストップをかけるまで、それはもう熱心にサガを愛したのであった。
「おれの誕生日なんだ。ちょっとくらい、いいだろ?ほら、薔薇の香りには催淫効果があるともいうし…どう?サガもむらむらしてこない?」
「まったく…。お前は私を壊す気か?」
 ため息交じりに、やんわりとサガが拒む。だがそれであきらめるアイオロスではなかった。
「お前もそんなにヤワじゃないだろ?ほら、薔薇の甘い香りがほんのりと漂ってさ…。昨夜とは趣向が変わって、いい感じじゃない?」
「…アイオロス…」
 熱心に迫ってくるアイオロスに、結局サガは折れた。薄暗い寝室の中でアロマキャンドルの優しい灯りが揺れ、濃厚な薔薇の香りに包まれる…という今の雰囲気にサガも流されたのだった。やはり薔薇の香りには催淫効果があるのかもしれない。
「だが、その前にシャワーだ。もちろん、歯磨きもするぞ」
 やはりオカンのような口調で言ったサガに、アイオロスは「は〜い」と明るく返事をした。
「じゃあ、サガ、一緒にシャワーを浴びよう。時間がもったいない」
「まったく、お前は…」
 困り顔でため息をついたサガの頬にアイオロスは軽くキスをして、人好きのする懐っこい笑顔を浮かべてサガの手を引き、教皇の寝室に併設されたシャワールームに向かうのだった。

<FIN>

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