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2023年05月01日08:15

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石原莞爾の著書別巻


石原莞爾の著作集の中に「東亜連盟運動」と題する別巻があります。これは石原莞爾が昭和十九年に自らがまとめて一冊の書として刊行しようとしていた原稿ですが、石原莞爾平和思想研究会の手元で眠っていました。それが全集刊行時(昭和五十一年)に発見され、明らかにされた内容です。

この稿の中に「支那事変の解決」があり、作戦部長時代のメモを手に石原莞爾が昭和十五年にまとめたものです。ここで石原莞爾は日中戦争を二つの視点で捉えています。「満州事変勃発当時は東亜に於ける赤・白帝国主義者の力不充分であり、実力を以て日本を防ぐる自信なく、僅少の犠牲の下に満州建国の大事業を遂行し得た。」

「併し、此の大成果を中国及び世界に承認せしむる為には日本の国力不充分で、事変の根本的解決を見るに至らず、日華間は上海及び塘沽停戦協定に依り休戦状態となったが、日本は満州事変以来今日迄十年に亘る対、英、米ソの持久戦争的状態下にあったのである。 支那事変は休戦状態が破れたに過ぎない」

石原莞爾に言わせると、日本は満州事変以来、中国をはじめ各国と持久戦という状態に入っていて、盧溝橋事件は休戦状態が破れたのだということになります。ただし満州事変以後に建設された満州国にあって、石原莞爾のつくった東亜連盟は、「民族闘争より民族協和へ、日華抗争より日華親善への大道を身を以て体験」してきたという。

これがそう簡単に実現するわけでなく、「支那事変」はその実現のプロセスで起こったとの理解になります。「皇道の大義」に反する。近衛首相の発した昭和十三(一九三八)年一月の声明(「爾後国民政府を対手とせず」)により、中国との連携を主張する満州国の日本人もまた実態がわからなくなったというのです。

事ここに及んでは、事変解決には日本と中国の妥協が必要だとして、それは次のような内容だという。
(一) 中国は日華両国民の共同経営地たる満州国の成立を祝福し、日本国は中国内に於ける政治的権益を全部撤回し中国の独立完成に全幅の協力をする。(満州事変の解決)
(二) 日華両国は東亜連盟の方針に基き、真の大同、即ち国防の共同、経済の一体化を成可く速かに実現する為満腔の赤誠を傾注する。(昭和維新の方向確立)

この二大方針で政治解決を図るというのです。両国がこの方針で妥協したなら、軍事の「支那事変」も解決するというのでした。むろんここには石原莞爾の説く『世界最終戦論』における「日支提携」の構図が背景にあるというべきでしょう。石原莞爾はこの点を日本と中国との間で綿密に話し合うことを考えていたといっていいのです。

中国が日本に対して不信感を持っているのは、第一次大戦の折に日本側が中国の袁世凱政権に二十一ヵ条をつきつけたことにあります。しかし、この傲岸な要求を「中国は其の統一の原動力としてこれを活用し、諸外国を排日に動員する為の有利な武器としたというのです。石原莞爾は、日本のこういう「覇道主義者の方式」に強い批判を浴びせています。

石原莞爾は、中国に日本軍が駐屯することは中国の人びとを怒らせるだけでなく、日本にとも「有害の存在」となり、「皇道の大義」にも反すると批判しています。石原莞爾は自らの示す二案について、中国側は納得するであろうかと問い、中国人が真剣に事態に向きあったときは、その歴史の重みが生かされてくると考えています。

日本軍が中国に入っていくことで、中国人はより真剣に事態と向きあい、その多年の歴史上の遺産をもとに日本の心ある人びとと向きあうはずだ、と説くのです。自らのつくった東亜連盟、そしてその思想は中国人の間にも一定の理解を得たと言って、北京には中国東亜連盟が起こり、広東でもまたその動きが起こっていると説いています。

汪兆銘を中心とする東亜連盟中国同志会も旗揚げしたというのです (その後、南京に汪兆銘政権がつくられている)。石原莞爾は中国の人びとを説得すれば、理解は得られるはずと言い、問題はむしろ日本側にあり、戦勝気分に酔っている日本人こそが責められるべきだと補足しています。 和平が実現しないのはその点にあるというのです。

むろん石原莞爾のこういう見方が、中国でどう受け止められたかという検証は必要です。汪兆銘政権が戦後「漢奸」扱いされたことはその検証のひとつにもなるのでしょうが、しかし、当時の蒋介石政府の国民党政権の受け止め方に、興味を持っているのです。

石原莞爾平和思想研究会 (ishiwara-kanji.com)

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