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2020年12月20日21:56

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『クリスマスは家族で一緒に』第1話

 『聖闘士星矢』の二次創作で聖戦後復活設定、ロスサガ・ラダカノ前提。ただしオリジナルキャラ多めです。
 サガとカノンとアケローオス河神とアルペイオス河神が、こたつでぼたん鍋を囲むという、ふざけた話です。半纏を着てこたつで鍋をつついているアケローオス河神の姿を想像したら、妙に似合っていて困る…なんなの、この人?
 前作の『教皇様のデート大作戦』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14175430ではアイオロスが困ったちゃんでしたが、今回はカノンが困ったちゃんです。お前ら、どんだけサガとイチャイチャしたいんや…。
 西洋人にとってのクリスマスは、日本人にとってのお正月みたいなものだというので、こういう過ごし方はきっと間違いじゃない…んなわけあるかw!
 「満天星」は作者の地元・鳥取の純米吟醸酒です。「満天星」には「どうだんつつじ」の意味もあります。アルペイオス河神たちがどうやって日本の酒だの食材を手に入れたか謎だけど、きっと日本の河川の神々とも顔見知りなので、その伝手で入手したと思われ。
 味噌=うんこ、は『ゴールデンカムイ』のネタですね。アシリパ「杉本とのオソマ(うんこ)じゃなきゃヤダ!」
 アケローオス河神は『ハルモニアの首飾り』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3513947が初出なので参照。サガとカノンのオリジナル子供時代設定については『雪解け』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3484101を参照。
 アルペイオス河神が登場する話はこちら。『小っちゃくなっちゃった!』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8374971。彼が魔鈴に一目惚れする話はこちら。『アルペイオス河神の話』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10712879
 ペーネイオス河神はこちらに登場。『春は失恋の季節』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9787807

『クリスマスは家族で一緒に』第1話

 世界の水と水を繋ぐ「水脈」を通って現れた双子座のサガが泉の上に立った瞬間、彼を待ち構えていた双子の弟カノンはサガに抱きついた。
「サガサガサガサガ〜!」
 兄の名を連呼しながら、カノンは両腕を兄の肩に、両足を腰に回して「だいしゅきホールド」でサガに絡みつく。
「会いたかったぞー!サガー!」
「ははは…。大げさだな、カノン」
 兄のサガは呑気に笑って、自分に抱きついて叫ぶ弟を抱きとめた。何しろ黄金聖闘士としての筋力があるから、体重87�圓寮�人男性でも軽々と抱きとめられてしまう。とうてい28歳の成人男性とは思えない双子の弟の振る舞いだが、サガの脳内では「はぁ…うちの弟、可愛い…」と変換されるのだから、ブラコンとは恐ろしい。
「ううう…。久々のサガの匂いだ…」
 カノンは兄の首筋に顔をうずめて、すーはーすーはーと大きく息をした。兄の髪の香りを思う存分に吸いこみ、ここ数か月間不足していた「サガ成分」をたっぷりと補給する。
「あ〜…、カノン、そろそろいいか?」
 いつまでも兄に「だいしゅきホールド」をしているカノンに、呆れ気味に声をかけて、双子の再会のドタバタを終わらせようとしたのは、大洋神オケアノスの長子にして「河の王」たるアケローオス河神だった。
 ここは、ギリシャのアイトリア地方を流れるアヘロオス河の河底の異空間にある、河の主人の館である。サガが現れたのは、館の玄関部分にある、「水脈」に繋がって出入り口の役割を果たしている泉である。
 そもそもサガとカノンがなぜアケローオス河神の館にいるかというと、カノンが子供時代に昔馴染みだったアケローオス河神に次のように言ったことが始まりである。
「新型コロナウイルスの流行のせいで、サガに会えない!海界に新しい疫病を持ち込んだらいけないから!」
「でもサガに会いたい!サガとイチャイチャしたい!」
「冥界なら確実にウイルスの活動は止まるけど、さすがに冥界でサガとイチャイチャするのはラダマンティスに悪い!」(←その程度の気配りはある)
「だからあんたの館でサガと会えるようにしてくれ!神の館ならウイルスはいないだろ!感染のリスクが抑えられる!」
「もうすぐクリスマスだし!クリスマスは家族で過ごすものだろ!」
「だからあんたの館で、サガとおれとあんたで集まろうぜ!おれたち、あんたの『弟』なんだろ!?家族だろ!」
「ついでに飯と酒も食わせて!」
 言いたい放題、わがまま放題のカノンの要求だったが、アケローオス河神は「末弟」に当たるこの双子にはとことん甘いので、このくらいの要求なら聞いてくれる。
 そもそもサガが新型コロナウイルスの保菌者だったらまずいだろ…という正論は、「サガに会いたいったら、会いたいの!」とブラコンを爆発させているカノンには通じないのであった。
「…お前はおれの家を何だと思ってるんだ…?」
 こうため息交じりに愚痴りながらであったが、アケローオス河神はサガとカノンが自分の館で会う機会をセッティングしてくれた。もちろん彼持ちで食事と酒付きである。
 そして今日の夕方、カノンがまずアケローオス河神の館に到着し、やや遅れてサガも館に到着して、先ほどの双子の再会にあいなったわけである。
「しかし…」
 「だいしゅきホールド」で自分に抱きついていたカノンが離れたところで、サガは改めてアケローオス河神を眺めた。彼はなぜか、古代ギリシャの男性の衣装である毛織りで出来た青いキトンの上に、ゆったりとした藍色のかすり模様の上着を羽織っていた。
「…アケローオス様、その服、なんです?」
 見慣れない上着の形に、サガがいぶかしげな視線を送る。
「おお、これか。これは日本の『ハンテン』という室内用の上着だそうだ。中に綿が入っていて、実に暖かいぞ」
 ふわふわと、アケローオス河神がゆったりした袖を揺らしてみせる。一枚布を体に巻き付けて肩で止める形式のキトンと日本の半纏の取り合わせは本来なら奇妙なはずだが、不思議とアケローオス河神にはその恰好が似合っていた。
「どうしてそんなものを…」
「アルペイオスが土産にくれた」
 実弟であり、ギリシャ・ペロポネソス半島のエリス地方を流れる河の神の名前をアケローオス河神が出す。
「アルペイオス様が?」
「まあ、来い」
 アケローオス河神が手招きして、双子を自分の館の中に案内する。よく馴染んだアケローオス河神の私室の居間に足を踏み入れた時、サガとカノンは目を見開いた。
 いつもは居間の真ん中に置いてある机と長椅子は片付けられて、群れ遊ぶ魚を描いたモザイク細工の床の上に、雄ライオンの毛皮が敷かれてた。そしてその上に、低いテーブルを布団で覆ったものが置かれている。サガとカノンは知らなかったが、それは日本の「こたつ」であった。そして雄ライオンの毛皮の上に座って、布団の中に足を突っ込んだアルペイオス河神が、布団上の板(つまり天板)に置かれた火鉢の上の鍋をかき混ぜていた。ちなみにアルペイオス河神も、なぜかキトンの上に半纏をまとった姿である。
「おお、双子たち、来たか」
 ほれほれ、と、アルペイオス河神もサガとカノンを手招して、部屋の中にと歓迎した。アルペイオス河神は、短い瑠璃色の巻き毛に生き生きと輝く青紫色の瞳を持ち、外見年齢は二十代半ばに見える青年神だ。がっちりとしたたくましい体つきも、明朗で闊達な気性も、長兄のアケローオス河神によく似通っていた。着ている毛織物のキトンは鮮やかな黄色をしており、その上に濃紺の半纏を羽織っている。
「…なんですか、これ?」
 サガが「布団で覆った低いテーブル」という見慣れない家具に眉をひそめる。
「これはな、日本の『コタツ』という暖房器具だ。ヘファイストスに頼んで作ってもらった」
「ははぁ…」
「ヘファイストス神謹製?これが?」
 アルペイオス河神の説明に、サガはあいまいに返事をし、カノンは驚いていいのやら、呆れていいのやら、表情の選択に困った。鍛冶工芸の神であるヘファイストス神が作ったとなれば、結構な値打ちものではなかろうか。見た目はシンプルな木製で、ちっとも豪華には見えないのだが。
「あ、靴はそこで脱いでな。それで足を布団の中に入れろ」
「はあ…」
「『コタツ』はすごいぞ!一度足を入れると、怠惰の神に取り憑かれて、この中から抜けられなくなるという実に恐るべき代物だ!」
「そんな大げさな…」
 と、半信半疑でアルペイオス河神に勧められるままにこたつに足を突っ込んだカノンだが
「…うぉっ!あったけぇ!」
 驚きで半ば腰を浮かせかけた。
「こ、これは…!確かに抜けられない…!」
 サガも弟にならって足を突っ込み、そのまま固まった。
「え?これ、熱源はどうなってるんだ?電気はここには来てないよな?」
 カノンがこたつの中をのぞき込む。するとテーブル部分に取りつけられた金網の中に、赤熱する石が入っていた。
「冥界産の紅温石だ。冥界でも使ってないか?」
 アルペイオス河神が熱源について説明する。冥界で採れる、摩訶不思議な発熱する鉱石を使用しているとのことだ。
「あー…、そういえばラダマンティスの所で見たような…」
 カノンが記憶をたどる。ラダマンティスの館で、暖炉に同じ物を使っていたような気がする。
「いやー、アルペイオスの奴がこれを持ち込んだ時は何事かと思ったが、こうして使ってみると実にいいな」
 皆と同じようにこたつに足を突っ込んだアケローオス河神が満足そうに言う。半纏を羽織り、こたつに足を突っ込んだアケローオス河神とアルペイオス河神の姿は、奇妙ではあるが、不思議と似合っていた。古代ギリシャ時代は民衆の生活に根差した神々であったせいであろうか、庶民的な振る舞いがしっくりとくる神々でもある。
「でしょう、大兄上?あ、よかったら、こいつを進呈しますよ」
「おお!ありがたい!どうせなら同じ物を作らせて、親父にも贈るか」
「ああ、いいですねー、それ。父上もきっと喜びますよ」
 鍋をかき混ぜながら、兄弟仲良く和やかに両河神が会話をする。サガとカノンは彼らの父神であるオケアノス神がこたつに足を突っ込んでいる姿を想像したが、その想像図の中の大洋神は、息子たちほど様になってはいなかった。庶民的な様が似合う息子たちと違って、オケアノス神は高貴で紳士的なイメージを双子たちは持っている。まあ、息子たちからこたつを贈られたら、便利でもあるし、使うかもしれないが。
「うう…いいなぁ…。これ、聖域にも欲しい…」
「聖域も海界も電気が来てないしな〜…。ラダマンティスに頼んだら、紅温石を譲ってくれるかなぁ?」
 こたつの中で足をすり寄せながら「コタツ導入計画」をともに練り始めたサガとカノンに、アルペイオス河神が良いことを告げた。
「ふっふっふ。安心しろ、二人とも。日本には『ホリゴタツ』というものもあってな。それは中を掘り下げて、内部で練炭を燃やして使うのだ!」
「おお!」
「練炭なら聖域でも使えますね!」
 アルペイオス河神が提供した情報で、聖域と海界に「ホリゴタツ」導入の希望が見えて、そろって瞳を輝かせるサガとカノンであった。
「…でさ、そもそもの疑問なんだが…。なんでアルペイオスがここにいるわけ?しかもこたつにその上着…なに?」
 カノンがもっともな疑問を尋ねる。
「いや、この前、猪を仕留めたんだよ」
 と、アルペイオス河神が説明を始める。彼は狩猟が趣味だった。兎、鹿、鴨、雉、猪…と色々と狩っては、子供時代の食べ盛りだった双子たちに獣肉をふるまってくれたものである。
「それで、肉をどう料理して食おうかってなったんだが…。ほら、今、アテナが日本にいるだろ?で、日本にはどんな料理があるかなって調べたら、猪は『ぼたん鍋』という鍋料理にして食うのが、日本ではメジャーだって知ってさぁ。それで、大兄上とぼたん鍋を食おうかって話になって…」
「だからって、おれたちが来る日に合わせなくても…」
 どこか不満そうな顔でカノンが言う。
「『クリスマスは家族と過ごす』ものなんだろ?だったら、おれが弟のアルペイオスと一緒に飯を食って何が悪い」
 むっとした顔でアケローオス河神が口を挟み、カノンを叱るように言った。
「それはそうだけど…。でも『クリスマス』とか、あんたたちには関係ないじゃん」
 出来れば自分とサガとアケローオス河神だけで「イチャイチャ」したかったカノンは、まだ不満そうにしていた。
 確かにキリスト教の祭りであるクリスマスが、古代ギリシャの神々に関係があるはずがない。「冬至の日に太陽神の誕生を祝う」という古代の祭りなら、ちょっとは関係してくるかもしれないが。
「お前たちが来るなら、人数的にも鍋をするにはちょうどいいと思ったんだよ」
「で、日本の冬の過ごし方について調べたら、『コタツ』を発見してな。それでヘファイストスにこれを作ってもらうことにした。で、ついでに大兄上への土産に『ハンテン』を用意した。いやー、暖かくていいわ、これ」
 ふよふよとアルペイオス河神が自分が着た半纏の袖を揺らす。
「ちなみに、下に敷いてあるライオンの毛皮も、アルペイオスが仕留めたものだぞ。前にこいつがくれたんだ」
 和気あいあいと会話を続ける両河神を、仲良いなぁ…と羨ましそうに眺めるサガとカノンであった。オケアノス一家は兄弟姉妹の仲が良く、長兄のアケローオス河神は皆に慕われている。ゼウスとポセイドンなどが兄弟仲が今一つ良くなく、互いに勢力を張り合っているのとは対照的な一族だ。実のところ、サガもカノンも彼らの仲間に入って「皆と兄弟仲良く」したくて仕方ないのである。
「よし、これで最後にミソを入れて…」
 と、鍋の中の具材が煮えあがったところで、アルペイオス河神が木製の小箱に入れた味噌を取り出して、おたまにすくった。
「なんですか、それ?」
「これは『ミソ』という調味料でな。日本から取り寄せた。見た目はうんこだが、うんこじゃないぞ!」
「食う前にうんことかいうな!」
 叫ぶカノンをよそに、ぼたん鍋は完成した。一同は箸を取り、日本人っぽく「イタダキマス」と挨拶して、めいめい小椀に取り分けて食べ始めた。

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