大空に浮かぶ巨大な飛行船ホテルをバックに、草波の説明が流れる。
カムサン・グループ。
元々は大企業Aリアングループの一会社で、しかも利益度外視の、「合法」をアピールするための介護関係。
それがここ一年で、Aリアンを「子会社化」してしまうほど急成長したのは何故か?
謎の人物、ジュー・ハナブサと名乗る若社長の登場、そして彼の右腕のジョルジュ・デュヴァリエの暗躍がカギ!!
彼らが指揮しているであろう、「兵隊」たちの装備そのものが、驚くべき医学とロボット工学のテクノロジーのリアルなデモンストレーション!!
普通なら、戦闘どころか、立って歩くのも
不可能な、老齢を最強の兵士として再生させるのは、イマドキの軟弱な若者を兵士として鍛えるよりも遙かに経済的かつ、現実的・・・
これを世界各国が放っておかないわけがない!!
我々の調べ上げただけでも、すでに何と
49ヶ国も秘密裏に商談交渉に入っている・・・
これが急成長の最大の理由だろう!!介護が売り物だったカムサンは今や、世界的な武器商人というわけだ・・・
「オプシヌプリ湖サミット占拠の連中もすでに引退した政治家の面々なのも、大々的なデモンストレーションといえような・・・」と草波。
「なら、話は簡単!!ワイルド式で、その二人を始末すりゃいいってことじゃねえか」と天田。
「おまえらの仕事は、オプシヌプリ湖サミットのテロリストどもを鎮圧することだ!!二人の始末は、水戸っぽとエンゼルに任せた・・・」
「何だと!!あの二人に何が出来るってんだよ!!両脚は全くダメ、まともに拳銃も握れないくらいにガタガタなんだぞ!!ナニ考えてんだ、草波さんよォ!!」
熱くなる天田を制しつつ、前に進み出る飛葉。
「草波さん・・・
差し違えに行かせたナ?」
草波、無言で、座ったまま回転椅子を回し、背中を向けてしまう。
「二人の強い希望だ・・・分かったら出動だ!!」
飛葉、うなだれるようにヘルメットを被り、部屋を出る。
メンバーたちも続くが、草波と飛葉の間に「何か言いようのない哀しみ」を感じ取り、黙ったままである。
コマ変わって。
飛行船ホテルのパーティー会場にて、タキシード姿のジュー・ハナブサ社長、「主治医(ドクター)」という名目でピッタリくっついているジョルジュ・デュヴァリエがグラスを手に、招待客たちを前に華やかに浮かれているところへ、改造バイク二台と、ゴツくて巨大なバイクが運び込まれる。
ジェットエンジンを積んだバイクである。
「エエ・・・ハナブサ社長はフェンシングの名手として有名ですが、改造バイクのコレクターの面もありまして・・・今回のジェットバイクと改造バイク二台は、ミッキー・クマモト氏のプレゼントです・・・」と司会者、招待客たちの中の一人の老人にスポットライトを浴びせ、みんなに拍手をうながす。
パチパチパチパチと拍手が鳴り、ミッキー・クマモト氏、照れ臭そうにお辞儀をし、ハナブサ社長の感激の抱擁を受け、二人でジェットバイクをバックに記念写真に収まる。
裏方の声。
「おい、ミッキー・クマモトって誰だ?あんなじいさま、取引先にいたか?」
「妙ですね・・・うちの
オールド・アーミーのメンバーでもないようですし・・・早速調べます」
そこへ轟く轟音。
戦闘機のプロペラ音である。
窓のすぐ側を、ムスタング、疾風が飛び抜けて行く。
「何だ!!」
「わァ、カッコイイ!!プラモデルは持ってるけど、ホンモノは初めて見るわ!!」
「あれもプレゼントですかな?いいですなァ!!次は何をプレゼントするんでしょうな?」
いきなり操縦席に機銃が撃ち込まれる。
穴だらけになって絶命するパイロットたち。
「撃ってきた!!」とパニックになりかけるところを、司会者が「慌てないで下さい・・・!!ただのアトラクションです・・・!!」と絶叫するのを聞いて、ホッとして・・・
また水平射撃で撃ち込まれる機銃、今度は司会者を撃ち飛ばし、ワイングラスのタワーの中へ叩き込む。
ガラガラと崩れるワイングラスのタワー、司会者の身体から噴き出る血をワインの川で洗い流す。
鳴り響く無線。
「命中!!あのクソ司会者、元は民営放送のアナウンサーで、ストレス解消に下校途中の女の子たちを刺して喜んでたっていうからナ」と水戸っぽの声。
「ホンマ、ド外道やわ。証拠がないせいで、免職程度で済んだようやけど・・・」とエンゼルの声。
二人揃って、「
悪党に証拠はいらん!!」。
パニック状態になる飛行船ホテル。
「助けてくれェ!!」
「どこでもいい、降りるんだ!!」
「パラシュートはどこだ!!」
それを見て、さっとプライベートルームに引き上げるハナブサとジョルジュ。
「チッ、ハデな襲撃だぜ、全く」と、日本語で喋るジョルジュ。「一億円じゃ安いぜ、もっとふっかけねえとな」
アフロの鬘を外そうとするところを、「待て!!被り直せよ、おやっさん!!」とハナブサ。
「俺が影武者なんてェガキっぽいのを引き受けたのはな、カネのためじゃねえ!!」
「それじゃ、何のためだ、イブ?」と偽ジョルジュ。
「確か依頼は、影武者としてエサとなってワイルドをおびき寄せろ、そして殺せ・・・だったよな」とイブと呼ばれた偽ハナブサ。
「その通り。招待客に化けてくるとばかり思ってたのに、あんなので来るとはたまんねえぜ!!」
「ふん、ワイルドっつったら、ド派手な連中で知られてるんだぜ?これくらいはやるさ・・・依頼をカネで受けたのはおやっさんだろ、俺はロマンで受けたのさ」
「どんなロマンじゃ!!今回は女はいねえぞ!!」
「下調べをしなかったのかい?あの二機の戦闘機に乗ってるのは、水戸っぽ、エンゼルって男女だ・・・この二人、ワイルドを引退して結婚式をあげようとしたところ、依頼主に撃たれて未遂に終わった・・・。それで依頼主の暗殺を二人が買って出たのさ・・・死ぬつもりでな。死んで結婚式をあげようってわけだ」
「それにつきあおうってのか?」
「もちろん!!いいシナリオじゃないか。俺は気に入ったぜ。だから、二人の前ではせめて化け続けていないとな」
「俺はヤバくなったらいつでも逃げるからな・・・全く悪いクセを出しよってからに、この親不孝モンが」
そこへ、パーティー会場へ左右から突っ込む二機の戦闘機。
水戸っぽ、コクピットから素早く這い出て、ステアーAUGを構えつつ、倒れた改造バイクを見つけるとそれに素早く這い寄り、横倒しになったままエンジンをかけ、回転して立ち上がる。
そして、もう一機に走り寄り、コクピットからエンゼルを降ろし、ケツに乗せると、もう一台のバイクのところでまたがらせて、二人並んで走る。
エンゼル、グレネード・ランチャーを装着したAUGを、ミニウージーを手に撃ってきた飛行船クルーたちに向けて、グレネード弾を発射する。
グバッと窓ごと吹っ飛び、何人かがバラバラになって地上へ降り注ぐ。
「よし、プライベート・ルームはあっちだ!!行くぜ、聖子!!」
「はいナ、ダーリン!!」
ダーリンと呼ばれて、クーッと感動する水戸っぽ。
そこへ、M4A1をフルオートで撃ってくる偽ジョルジュ(「薔薇のイブ」の月江金之助)。
チンと新ワイルドのヘルメットをかすめるのに、水戸っぽ、偽ジョルジュにAUGを向けて撃ち、右肩を撃ち抜く。
グエッとライフルを取り落とし、ベタッと倒れる。
「痛ぇ!!」
「日本語?あいつ、ジョルジュやあらへんわ!!」とエンゼル。
「くそォ、影武者かよ!!」と水戸っぽ。
「バレちゃしょうがない。いかにも影武者・・・こうなったら、お互い決闘でケリつけようじゃないか。ホンモノを討てないのは気の毒だが、俺はホンモノ以上の値打ちはあるぜ・・・月江順、人はイブと呼ぶ」
プライベート・ルームから現れ、階段を降りながら、タキシードを脱ぎ、鬘と変装用メーキャップを取り、パンツも脱いで、全裸になる。
彫刻のように美しい青年で、女のように艶っぽい顔から発せられるまなざしは氷のようでいて、麗しい。
シャッと両手を背中に回して、サッと出した両手には二本のナイフ。
「イブだと・・・!?ナイフ使いのロマンチシストの殺し屋・・・!!」と水戸っぽ。
ピクッとエンゼルがAUGを構えると、電光石火、イブのナイフがエンゼルの両手首を貫く。
アアッとライフルを取り落とすエンゼル。
「聖子!!」
「これでおあいこ!!」
(くそォ・・・やつのナイフさばきは神業!!銃じゃかなわねえ・・・)
そこで、ゴオーンと轟音が鳴り響く。
驚く四人。周囲を見回すと、窓から飛行船の船体がクジラ型の気嚢から「脱着」しつつあるのが目に入る。
「くそっ、ハナブサのやつ、おれたちごと始末しようって腹だな!!」とイブ、父親を抱きかかえて、素早く階段を駆け上がり、気嚢の内部へと飛び移る。
ガクッと船体、大きく傾き、傾いた方の客室から招待客の何人かが、窓を突き破って、地上へ降り落ちる。
東京ディズニーシーをモデルにした架空の遊園地に、数人の人間が降り、船のマストに突き刺さったり、ウォータースライドのアトラクションに激突したり、屋外レストランのバーベキューの中に突っ込んだりする。
戦闘機にバイクで寄り、パラシュートをそれぞれ装着すると、二人でジェットバイクに乗り、一気にアクセル全開でぶっ飛ばす。
グオオーンと傾いた船体を駆け上り、気嚢の中へ飛び込む。
その瞬間、運転側のエンゼル、ケツの水戸っぽを突き飛ばし、窓から地上へと降らせる。
「かんにんな、ダーリン!!うちらがつかまされたのはニセモノだってこと、飛葉ちゃんらに伝えて!!」
「聖子!!・・・」
遊園地の上でパッとパラシュートが開いたのを見届けると、エンゼル、ニコッと笑い、ジェットバイクを気嚢に突っ込ませ、鉄骨にぶつけて、バイクから飛んで、足場に飛び移る。
バイク、惰性で鉄骨を滑り、弧を描くようにして、父親を抱えているイブに向かって落下していく。
それを見た金之助、イブを突き飛ばし、自分はバイクの下敷きになり、絶命する。
「おやっさん・・・!!」
足場の上でパラシュートを外して、真ん中に置き、すっくと立つエンゼル。
手には、コルト・ウッズマン・ターゲット。
両手首から血を流しつつ、ブルブル震えながらやっと握っているという状態である。
「生き残った方がパラシュートを手にするわけやな」
「なるほど・・・よかろう。だが、あんた、ただでさえ、銃は超のつく二流だそうじゃないか。だから、グレネードを使ったんだろうが・・・早抜きで勝負?いや、死ぬ時はせめて拳銃を握って死にたいと・・・」
イブ、全裸のまま、どこかからか、ナイフを取り出す。
「気に入ったぜ。カッコつけさせて死なせてやろう」
と、ナイフを目にも止まらぬ速さで投げ、エンゼルの左胸に深く食い込ませる。
一発も撃たないまま、グフッと血を吐いて前のめりに崩れ落ちるエンゼル。
「心配するな。ハナブサは俺が始末してやる」
歩み寄って、パラシュートを拾い上げようとすると、そこへエンゼル、ゴロッと転がり、拳銃をイブの右目に突っ込ませるようにして、突き入れた衝撃で引き金を引く。
バン、と銃声が鳴り響き、イブ、右目の目玉を後頭部から噴出させ、絶命する。
「手で深く刺すべきやったんや・・・投げただけじゃ、うちのバストは貫かれへん・・・肺はいってもうたけどな・・・」
また血を吐き、「ダーリン・・・レディファーストで先に行って待ってるわ」と呟き、「・・・飛葉ちゃん・・・」と力なく吐く。
海面に突っ込んだ船体、必死で泳ぐ生き残った招待客たちを巻き添えにするように、大爆発し、空中を漂うクジラ型の気嚢も大爆発する。
その様をタワー・オブ・テラーのてっぺんに降りて座り込んだ水戸っぽ、涙を流しながら見つめる。
同じく。
海上からモーターボートに拾い上げられた老人、携帯で草波に報告する。
「エンゼル、死亡。水戸、生還。ターゲットも死亡の模様。これから確認に向かう」
「ご苦労」と草波の声。
「カーネル・クマモト、生存者はいかがいたしますか」とボートの操縦席から声。
「海上保安庁に任せておけ・・・」と老人、空中に向かって、深く敬礼する。
「
The angel fell(天使は落ちた)...」
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