薄暗い手術室。
手術台の上に横たわる男の両足が見え、その上に覆い被さるようにして、黒人の右手のアップ。
その右手はグロテスクそのもので、人差し指、中指、薬指、小指が四本とも、「親指」になっている。
つまり、五本とも「親指」なのである。
「動く?」
返事をする代わりに、指先でメスの刃先を掴み、それを指の間をくぐらせるようにしてグルグル回し、パッと丁寧に構え直す。
「さすがは栄光の手(ハンド・オブ・グローリー)!!」
「どういたしまして、
マダム・ヒバ」
オペ用手袋をつける白衣の黒人のミドルショットの陰から、後ろ向きの車椅子の老婦人が現れる。
肩にショールを羽織った白髪の老婦人は、後ろ向きのまま、手術台の上に横たわった裸の男に進みより、男の顔を撫でる。
坊主頭の男の口が開き、弱々しく「母さん・・・」と呟く。
「ありがとう、おまえ・・・最後はその顔。みんなお母さんにちょうだいネ」
そこで、老婦人、スックと車椅子から立ち上がり、男の身体にかけられた覆いを取り去る。
そこからは、全身の皮膚をはがされた、筋肉繊維むき出しの無惨な五体があらわに。
男の白い首だけが苦しそうに呼吸しながら、「これで・・・母さんは元通りに・・・」と呟く。
老婦人は後ろにさがり、代わりに不気味な右手の黒人医師が前に出て、右手に持ったメスをきらめかせる。
暗転。
タイトルページ。
海。切り立った崖の上に建つ教会。
遠目に、誰かの結婚式が行われているのが分かる。
画面下がって、対岸に建つリゾート施設の大プールが広がり、流れるプールなどを楽しむ客たちでにぎわう中、一人選手用の高い飛び込み台のてっぺんに立つビキニ姿のグラマラスな女性が見える。
髪の毛を真っ白に染め、ミラーサングラスをかけていて、そのサングラスに教会が映っている。
それから女性は台の上に設置したバレットライフルを伏せた体勢で構え、スコープを覗く。
スコープの中の画像に、飛葉の顔が現れる。
何と、珍しくフォーマル姿の飛葉で、その隣にはウェディングドレス姿のエンゼルが腕を組むようにして立っている。
エンゼルに招待された女友達が「いい男!!」と叫んで、もう一人が「こちらが
水戸さん?」と言う。
「そやったら、ええねンけどなァ」とエンゼル。
そこへ新郎姿の水戸が登場。
エンゼルのキレイ目の女友達とは違って、歓声を送るのは、クロス、画竜、マック、天田、馬力らワイルドのメンバー。
「わからねえもんだ、あの二人がなァ・・・」とクロス。
「水戸の熱烈なアタックが効いたんだ。愛とはこういきたいもんだナ・・・」とイヤミっぽく返す画竜。
「もっとわからねえのが、草波さんだぜ」と天田。「仲人ってことは結婚してたの!?」
仲人席に座っているのは、珍しく笑顔を見せている草波と、その妻である。
「すごいキレイな人だァ・・・」とマック。
「じゃ、ウチ、行くわ」とエンゼル、飛葉の頬にキスをして、水戸と腕を組む。二人とも足を悪くして、それぞれ杖をついていたが、腕をがっちり組んだことで歩き方が安定する。
「ほんじゃ!!」と水戸、飛葉とニヤッと笑い合う。
飛葉が馬力の隣に座った瞬間。
祭壇の神父の身体が吹っ飛び、十字架の台座が12.7mm×99弾で破壊され、キリスト像つきの十字架がエンゼルと水戸に倒れ込み、二人を直撃する。
「エンゼル!!水戸!!」
飛葉の叫び声が響き、教会は騒然とする。
飛び込み台の上で女性はニヤッと笑い、後ろ向きでサングラスを左腕の
ゴムバンドに差し込み、パッと飛び込み台から選手顔負けの飛び込みを見せる。
病院の全景。
集中治療室のドアのアップから、その前に並ぶ飛葉を始めとするワイルドのメンバーたち。
「ひでえよ・・・二人とも足悪いんで、素早く動けなかったんだ!!」と天田。
「助かるの?」とマック。
「とりあえず
即死はまぬがれたがな・・・」と苛立つクロス。
そこへ草波が入ってきて、厳しい顔で「狙撃者は対岸のプールの飛び込み台から撃ってきた!!バレットライフルM82でだ・・・現場にそっくり置いていきおった」。
「大口径だ・・・12.7mm×99弾をセミオートで撃つやつだ。ヘリや装甲車に穴を開けるためにナ」と画竜。
ゾッとする天田。
「もう一つ置いていったものがある。これだ・・・」と草波、ビニール袋に入った四本の物体をみんなに見せる。
それは、ひからびた黒人の四本の右手の小指だった。
「ナンナンだよ、コレ!!相手はサイコか!?」と馬力。
「サイコにはあれだけの距離は撃てねえ!!」と飛葉。「あそこから教会までの距離は1500メートル以上あるんだ、かなり
訓練されたやつの狙撃だ」
「そう」と草波、「どこのどいつだか知らんが、これは我々に対する挑戦だろう」
会議室に向かって、廊下をブツブツ言いながら歩いていく英重太郎。
「リアンのやつ!!急な呼び出しってナンの用なんじゃ!!今日はSAWシリーズの最新作の公開日じゃぞ!!わしゃ、この日を楽しみにしとったんじゃ!!」
ドアをバタンと開けて入る。
「こら!!リアン!!大した用じゃなかったら承知せんぞ!!」
英の目に入ったのは、机の上に並べられたリアンのパーツ。
無数の部品と化した無惨な姿に、悲鳴をあげ、吐き気をもよおす。
英の肩に優しく置かれる黒人の右手。
その指は五本とも親指である。
「心配しなさんな。あんたもジグソウのゲームを楽しめる。
リアルに」
「何者だ・・・!?わしらをAリアンと知ってのことか?」
「当然」と別の男の声。
奥の闇の中からすらりとした体格の男が、顔をあらわにしないで、日本刀を手にあらわれる。
「こ、殺さないでくれ!!」
「私はAリアングループの総帥になりたいのだ」
「わ、分かった、カネと権力が欲しいのだな?」
「違う」
その瞬間、黒人のチョップが英の延髄を直撃し、英は失神する。
「飛葉の生命が欲しいのだ。そのために、あんたたち二人の
パーツがいるのだよ」
草波邸。
応接室で草波を待つ飛葉。
開くドア。
「おせえな、草波さん・・・」
そこで目を見張る。
現れたのは教会で初対面した草波の妻だったからだ。
和服の美女だが、どこかで見覚えがある。
「飛葉ちゃん・・・」
「奥さん?」
「私よ、
イコよ・・・」
「イコ・・・」
ぼんやりとした記憶のかけらが飛葉の体内を駆け巡るが、はっきりしない。
思い出せない飛葉に、イコはうつむいて涙を流す。
「草波さんと一緒になれば、いつかは会えると信じてたの・・・」
そこで、飛葉、激しい頭痛を感じて、ウウッと呻く。
「飛葉ちゃん!!」
そこへ草波入ってきて、「おまえは薬を持って来い!!」とイコに声をかけ、飛葉をソファに座らせる。
薬を飲んで落ち着いた飛葉に、草波、「本当はゆっくり時間をかけて記憶を取り戻させたかったんだが、そうも言ってられなくなった」。
「無理して記憶を取り戻さないといけねえのか?俺が急所を撃てなくなったから?」
「それもあるが、今度の敵はかつてのおまえを狙った殺し屋だからだ・・・
シカゴの五本指!!」
そこで、イコの脳裏に、四人の黒人の顔が浮かぶ。
半分目を閉じる飛葉。
「四人のうち、三人はおまえが始末した・・・一人は
ヘボピーが片付けたがな」
そこでチラと反応を見る草波。
しかし、飛葉は黙っているだけである。
「恐らく、最後の生き残りだろう」
「あの四本の小指は誰のだったんだ?」
「指紋照合の結果、死んだ四人のそれぞれのものだと判明した。とにかく」
草波、ズイと立ち上がり、「今のおまえでは立ち向かえん。特に
復讐に燃えているのが相手ではな」。
病室で目覚める包帯姿の水戸。
水戸を取り囲むクロスと画竜の二人。
「聖子は!?」
「隣だ」とクロス。
隣のベッドでやはり包帯姿で横たわるエンゼル。
マックと天田がついている。
ホッと息をつき、枕に首を沈める水戸。
「助かって何よりだ。結婚式なんて何回もやれるが、生命は一回こっきりだからな」とクロス。
「相手は誰なんだ!?」と水戸。
「正体不明だ、草波さんが追ってる」と画竜。
「早いとこ始末してくれ!!もうたくさんだ、俺は聖子と引退して静かに暮らしたいんだ!!」
毛布を自分の顔にかける水戸。
その様子を外の道路から見上げる髪を真っ白に染めた女性。
Ducatiのスーパーバイク1098Rにまたがり、革のツナギを着、ミラーサングラスをかけている。
左手にH&K USPを持ち、アクセルをふかし、病院へ猛スピードで突っ込んでいく。
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