ICUの犬神先生は初めて会った時よりびっくりするほど痩せこけていた。頬はげっそり凹み、ハゲだと思っていたアタマには剛毛がびっしり生え、それに比べて無精ヒゲは柔らかいカンジでもわもわ。右腕に点滴が一本、右股の付け根に点滴が七本。それにゴボゴボいう機械。鼻に呼吸器が差し込まれていて、ダースベイダーみたいな呼吸音をたてている。
一度心臓が停まったのだそうだ。それなのに死ななかったのはなぜか?
犬神先生はあたしとマミちんの顔を見てにやっと笑った。「おれはまだ君たちにあれを見せていない。君たちがあれを見てびっくりするカオを拝むまでは死ねないな」
犬神先生の手をぎゅっと握るマミちん。あたしも一応握っておいた。
あれって何?
帰り道であたしはマミちんに聞いた。
サラさんは生き残る方法だと言っていたわ、とマミちん。サラさんというのは近くの日蓮宗のお寺の娘さんで、あたしたちより年上のおねえさんだ。JK時代から犬神図書館に出入りしているというから先輩でもある。
何から生き残るのよ?
自分自身からだって。
なにそれ、全然わかんない。
でもあたしには何となくワカりかけていた。犬神先生が死ぬかもしれないとわあわあ泣いていたマミちんのうろたえぶりで、犬神先生がどんなヒトなのかワカりかけていた。
異常で、
変態で、
キケンだと思っていたけれど、
限りなく・・・
入院しているあいだも犬神図書館に通えるというので、留守番役のサラさんにカオを覚えてもらって、マミちんがお稽古で一緒に行けない日もあたしは通い詰めてかたっぱしから本を読み漁った。子供が読んじゃイケナイ本も読んでいいというので、あたしはそれメインに読み耽った。正直、エグい図書体験だった。ちんぽこおまんこ、ジュポジュポ、グチュグチュ、たった三日間で犬神図書館にある成人向けコミックを全部読破した。そのことをマミちんに話したらびっくりしていた。
どれがイチバンよかった?と聞いてくるので、町田ひらくだね!とソクトーした。他のはあんまりこう・・・グッとコなかったね!ヤッてるだけなんだもん。ウソくさいし・・・でも町田ひらくだけはホントっぽかった。あれはいいよ、おなにーもハカドッたぜ?
実はあたしも、とマミちん。あれでいっぱいイケたわ。
あたしたちはそこでもじもじしつつ、お互いちゅっとキスをした。それで落ち着きおしゃべり再開。
それでね、とマミちん。男の子は読まないのよ、読むのはワンピースとかトリコとかそんなのばっかり・・・
ヘタレだね!とあたし。おまんこが目の前にあるのに見ないなんてバカなの、死ぬの?そんなのとは死んでもせっくすなんかしたくないね!
うんうん、でもね?
なになに?
あれよりもっといやらしい本があるの。
え、ウソ。教えて!
マンガじゃなくて小説なんだけどね・・・「城の中のイギリス人」っていう本なの。あたし、あれ初めて読んだ日は死ぬかと思ったわ・・・アタマがこう・・・ブチッとハジケるカンジでね・・・
そんなにスゴイんだ、よっし、明日ゼッタイ借りてくる!
本をたくさん読むのはその分年を取ることと同じ。
あたしは処女だけど、アタマはヤリまくったビッチとおんなじだぜ。おまんこだけでなくちんぽこを生やすあたし自身もイメージデキるようになったもんね、それシコシコ!シコシコ!あんたのカオにブチまけてやる、イメージ、それはコトバのチカラ、より多くのコトバを得たものが世界じゅうとハメ合うことができる、それシコシコ!シコシコ!あたしのちんぽこをくわえて、あたしはおまんこをパックリ広げてイキまくる・・・もうさみしくなんかない。
さみしくはないけれどまだ何かが足りない。
「城の中のイギリス人」。ピエール・ド・マンディアルグの小説。正直、あたしのなかの何かが壊れた。あたりまえだと思っていたものがテッテイテキにブチ壊され、ケツの穴からクチまでまっすぐにブチこまれた衝撃を受けた。読んだことがない人間は去勢されたブタそのものだ。町田ひらくのマンガのなかの少女のように変態ジジイにさんざん陵辱され、ベトベトの精液まみれになったあたし・・・しばらく余韻にヒタり・・・そこからむっくり起き上がるのがワカる・・・あたしはにやっと笑っている・・・何かが満たされた気分。
おれをボッキさせるにはそんなナマヌルイことではダメだぞ。
ああ、モンキュ!あたしはモンキュに陵辱されるのと、モンキュのように責め立てるのを両方同時に思い浮かべて、その夜は今までに味わったことのないようなイキ方をした。我ながらヒクほどだった。声が漏れないように枕を思いっきり噛んだ。そしたらいつの間にか食い破って、アヒルの羽根がそこらじゅうに散らばった。エクソシストのリーガンみたいに逆四つん這いになるくらいのけぞっちゃって、そのおかげで右足がつった。その激痛さえもキモチヨカッタ。
思春期の女の子の性欲をなめんなよ?
まだまだこんなもんじゃないぜ?
男の子みたいにちんぽこからピューピュー出しちまえばオワリって、そんな単純なもんじゃない。イッてもイッてもまだ足りない・・・
ほら見てよ、あたしのおまんこ、すりきれちまってしまいにゃ血ィ流れちゃうぜ。ほら見てよ、あたしのナカユビ、ふやけちまってしまいにゃカワ剥けちゃうぜ。ファッキューオルガズム!
部屋の掃除が終わって落ち着き、シーツをとりかえたベッドに潜り込んで、あたしは犬神先生の携帯に初めてメールした・・・
ちんぽこが爆発しました。
一般病棟に移った犬神先生から返信があった。本文は何も書いてなかったけれど、添付された画像は自撮りで、ナカユビをまっすぐおったててこれ以上はない、最高のにやっとした笑い・・・それだけであたしは胸がいっぱいになった。キモデブからほんとの先生に昇格した瞬間だった。
それからあたしはずっと考えていた・・・
犬神先生もモンキュのように勃起はするけれども射精できないのだろうか?
もしかすると、生き残る方法とは、爆発して死んでしまわないようにするための、もうひとつのうまいやり方なのではないだろうか?
それを先生は知っているのだろうか?
サラさんは教えてもらったのだろうか?
知りたい。どうしようもなく知りたい。
ああもうすっごく知りたい。知って、あたしは今までのあたしよりももっとましなあたし自身になりたい。
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