mixiユーザー(id:4632969)

2018年01月03日02:06

274 view

「『イリアス』の各場面を『星矢』キャラで妄想してみた」��

「『イリアス』の各場面を『星矢』キャラで妄想してみた」��

(第8歌より、大アイアスとテウクロスがタッグで戦う様を、大アイアス=アルデバラン、テウクロス=ムウで)

 ムウは折り曲げる弦を張る弓をたずさえて、アルデバランの構える大盾の陰に潜りこんだ。アルデバランが盾をずらすと、ムウは機をうかがって、群がる敵兵の一人に矢を放って射当て、敵がその場に倒れて息を引きとると、あたかも幼子が母の陰に隠れるように、再びアルデバランの盾の陰に潜りこんだ。すかさずアルデバランが輝く盾で彼の身を隠した。
 この時、勇士ムウが真っ先に討ち取った冥府勢は誰であったろう。まず第一にニオベ、ついでキューブにミルズにオクスの面々で、これらすべて次々に、ものみなを養う大地に打ち倒した。彼が豪弓を引いて冥府方の群がる軍勢を射倒す様を見て、総大将シオンは喜び、傍らに寄り言葉をかけた。
「ムウよ、お前は可愛い男だ。さすがは一軍の長たる器である。そうして射続けよ。さすればやがて聖域勢には救いの光明と仰がれ、幼い頃からお前を養い、妾腹の子でありながら己の屋敷において育てた父御には名誉ともなろう。父御は遠く離れてはいるが、その名を輝かして差し上げるが良い。幸いにしてアイギス持つゼウスとアテナが、イリオスの堅固な城を落とすことを私に許してくださった暁には、私の次にはお前に第一の褒賞を取らせよう。三脚の釜か、車体とともに二頭の馬か、それともお前と褥を供にする女かをな」
 それに答えて勇士ムウが言った。
「誉れ最も高きシオンよ、すでに気負い立ってる私に、なぜさらに鞭を当てるようなことをおっしゃるのか。私は力の続く限り手を留めることはありません。現に我が軍が敵をイリオス城に向けて押し返した時から、弓を持って待ち構え、敵を討ち取ってきました。すでに矢じりの長い矢を四本放ち、すべて屈強な若い敵兵の身に刺さっています。ただあの狂犬だけはまだ射倒せませんが」
 こう言うと、さらに一本の矢をラダマンティスめがけて弦から放ち、射当てんものと心は逸った。しかし矢はラダマンティスをそれ、隣にいた兵を射抜いた。
 ムウは新たにまた弓弦に弓をつがえて、ラダマンティスめがけて放ったが、これもアポロンが反らしたために的に当たらず、矢は彼の勇猛な御者、戦いの場に急がんとするシルフィードの胸に当たった。シルフィードは車体から崩れ落ち、御者の息も力もその場で萎え果てた。御者を失った痛恨の思いがラダマンティスの胸を覆ったが、部下の死を悲しみつつも、遺体はその場に捨ておき、近くにいたバレンタインに馬の手綱を取れと命じた。彼はそれを聞き、すぐに上官の命に従ったが、この時、当のラダマンティスは凄まじい声を上げて叫びつつ、艶光する車から挑んで降りた。大きな石を拾い上げると、敵を撃たずにはおられない気持ちに駆られ、ムウに向かって真一文字に突き進んだ。こなたムウは矢筒から鋭い矢を抜き取って弓弦につがえたが、この時早く輝く兜のラダマンティスは、自分を狙って弓を引きしぼろうとする相手の肩、鎖骨が首と胸をと分かつ辺りをぎざぎざの石で打ち、弓弦を断ち切った。ムウの手首はしびれ、倒れてからくも膝で立ったが、弓は手からポロリと落ちた。
 だがアルデバランは、倒れた同胞を見殺しにはせず、走り寄って庇い、大盾で覆ってやった。そして二人の部下が身をかがめると、激しくうめく彼を肩に担いで、洞なす船の陣地へと運んで行った。
 この時、またしてもオリンポスの主は冥府勢の力を盛り上がらせ、冥府勢は聖域勢を真っ直ぐに深い濠に向けて押し返し、ラダマンティスは己の力を頼んで行きも高らかに先陣の中を進んだ。
 白い腕の女神ヘラはこの有り様を見て哀れを催し、即座に翼ある言葉をアテナにかけた。
「なんたることか、アイギス持つゼウスの娘よ、この期に及んでもなお、私とそなたとが討たれていく聖域勢を構ってやらずにいてよいものか。このままにしておけば、必ず聖域勢はたった一人に攻め立てられ、惨めな最期を遂げることになろう。ラダマンティスめの手のつけられぬ暴れよう、すでにどれほどの害を与えてきたことか」
 それに答えて眼光輝くアテナが言った。
「本当に、あの男など、聖域勢に討たれて故国の土となり、力も命も失えばよいのに。父上と来たら、良からぬことを考えては勝手な振る舞いをなさるし、意地悪で、いつも何かを悪さしては、せっかく私がしようとすることの邪魔をなさるのです。私がこれまで何度も父上の御子、あのヘラクレスがエウリュステウスに命じられた難業で苦しんでいるのを救ってやったことなどけろりと忘れておいでです。彼が天に向かって泣いて訴えると、ゼウスは必ず彼を助けてやってくれと私を天から遣わされたものでした。エウリュステウスが、嫌らしい冥王の犬を闇の国(エレボス)から連れて来いと、冥府の門を守る冥王の屋敷へ彼を遣わした時、もし私がこの思慮深い胸のうちで今のようなことが起こるのを知っていたら、彼は『憎しみの河(ステュクス)』の激しい流れを無事に乗り切ることはなかったでしょうに。それなのに父上は今、私を憎み、アイオリアの名誉を回復させてやって欲しいと、父上の膝に口づけし、あごに手を触れて頼みこんだあの母女神の願いを叶えておやりになった。でもきっといつかまた私を、目の輝く(グラウコピス)可愛い娘と言ってくださる時が来るでしょう。それはともかく、今はあなたには足の速い馬を用意していただきたいのです。その間に私もアイギス持つゼウスの屋敷に忍びこんで武具を身につけ、戦場に立つ支度をします」
 こう言うと、白い腕のヘラに否やはなく、偉大なるクロノスの娘、女神の中で最も位高きヘラは黄金の額飾りの美々しい馬を仕立てにかかった。一方、アイギス持つゼウスの娘アテナは、自ら丹精して作りあげた、色とりどりで鮮やかで肌触りも良い衣装を脱ぎ捨て、雲を集めるゼウスの肌着を身に着け、武具を鎧って戦いに向かう装いを整えた。ついで燃えるがごとき緋色の車に乗りこみ、重く頑丈な槍を手に取った。ヘラは素早く馬に鞭を加え、二人の女神は天の門を通って車を進めた。
 父神ゼウスはこの有り様をイデの峰から見ると烈火のごとく怒り、黄金の翼のイリスを遣わして伝言を伝えさせようとした。
「ゆけ、足速きイリスよ、あの二人を引き返させよ。だがわしの目の前には来させるな。我らが争えばろくなことにはなるまいからな。だがはっきり言っておくが、わしの言うことは必ずそうなるのだ。二人の車を引く馬は足の利かぬようにして、当人たちを車から投げ落とし、車は粉々に砕いてやる。雷火に当たってついた傷は、十年の歳月が流れてもなかなか治るまい。そうなれば目の輝く娘も、父と争えばどのようなことになるか思い知るだろう。ヘラについては、それほど怪しからぬという気もせぬし、腹も立たぬ。昔からわしの言うことには何かをつけて邪魔をする女であったからな」
 ゼウスがこう言うと、疾風のごとく足速のイリスは伝言を伝えるべく立ち上がり、イデの山並みを発ってオリンポスに向かった。そしてオリンポスの第一の門のあたりで二人の女神に出会うと足を止めさせ、ゼウスの言葉を伝えた。
「そのように急いでどこにお出かけか。一体何をなさろうとして、それほど急いでおられるのか。クロノスの御子は聖域勢に味方をしてはならぬと仰せられています。また恐ろしい言葉でこうも言っておられるし、必ずそのようになされるでしょう。つまり、お二人の車を引いている馬を足の利かぬようにし、あなた方を車から投げ落とし、車を粉々に壊してやる、と。雷火に当たってついた傷は十年たっても治るまいと。そうすれば眼光輝くアテナも父と争えばどのようになるか思い知るであろうと。ヘラについてはそれほど腹は立たぬ、昔からあの様な女であるからと。しかしヘラよ、あなたは世にも恐ろしい、恥も恐れも知らぬ方ですよ。本当にその長槍をゼウスに向かって振り上げるなどという、大それたことをなさるおつもりなら」
 足速きイリスはこう言って立ち去った。ヘラはアテナに向かって言った。
「なんたることでしょう、アイギス持つゼウスの娘よ。かくなる上は、私も、我ら二人で人間どものためにゼウスを相手にして戦うのはあきらめねばなるまい。人間どもは運のままに、死ぬなり生きるなりさせておきましょう。ゼウスがご自分の思惑通り、しかるべく処置をするであろうから」
 こうしてヘラは馬を返した。二人の女神のために季節の女神たち(ホーライ)が美しいたてがみの馬を頸木から解いて、天上の飼い葉桶の傍らに繋ぎ、艶光する車は戸口の傍らの壁にもたれさせた。 
 二人の女神は欝々とした気持ちで、他の神々に混じって黄金の椅子に座った。父神ゼウスはイデの山からオリンポスを目指し、見事な車輪の車を馬に引かせて、神々の集う場に着いた。名にし負う大地を揺るがす神ポセイドンが、ゼウスのために馬を解いて、布の覆いをかぶせた。はるかに見晴らすゼウスが黄金の椅子に腰を下ろすと、足元に山々が激しく揺れた。アテナとヘラはゼウスから離れて、彼に話しかけようともしない。ゼウスは二人の心中を察して言った。
「アテナにヘラよ、どうしてそうふさぎ込んでいる。まさかそなたらが憎みに憎む冥府勢を滅ぼすべく、戦士たちが手柄を立てる戦場で戦い疲れたわけではあるまい。わしの力と無敵の腕のある限り、オリンポスの神々が束になってかかってこようと、わしの意図をくじくことは絶対に出来ぬ。そなたらにしても、戦いの業を目にする前に、その艶やかな身が震えに襲われたではないか。はっきりと言いつけておくが、わしの言いつけを聞かぬ時は、そなたらは雷火に撃たれて、神々の住居たるオリンポスへ車に乗って帰ることはかなわぬはずであったのだ」
 ゼウスがこう言うと、アテナとヘラは何やらつぶやき、身を寄せ合いながら冥府勢を懲らしめる策を巡らしていた。アテナは口をつぐんで一言も言わなかったが、父ゼウスへの恨みは深く、激しい怒りに全身が燃えるようであった。ヘラは怒りを抑えきれず、ゼウスに向かって言った。
「世にも恐ろしいクロノスの御子よ、何ということを仰せか。あなたの力が並々ならぬことは、我らもよく承知しております。ですが、悲運にあって果てる聖域勢の勇士らが哀れでならぬのです。確かにあなたの命令とあれば、我らも戦いから手を引きましょう。でも彼らがあなたのお怒りで彼らが全滅することがないよう、何か役立つ策を授けてやるつもりでおります」
 雲を集めるゼウスは答えて言った。
「牛眼の女神ヘラよ、もしそなたが望むなら、明日の朝にはこの強大無比なクロノスの子が、さらに激しく多数の聖域勢の将兵を倒すところを見ることができるぞ。強剛ラダマンティスは、かのアイオロスの弟、駿足のアイオリアが奮起するまで戦いをやめぬからだ。それはシュラが討たれ、その亡骸を巡って両軍が血まみれの戦いを交える日のことだ。運命はそのように定まっているのだ。そなたが腹を立てようと、わしは一向に気にせぬ。あるいは地の果て海の果て、イアペトスとクロノスが深いタルタロスの闇の中に閉じ込められ、陽の神の放つ光も風のそよぎも楽しむことが出来ぬその辺りまでさまよい歩いて行き着こうともな。わしはそなたの恨みなどなんとも思わぬ。そもそもそなたほど厚かましい者は他にはおらぬのだからな」
 ゼウスはこう言ったが、白い腕のヘラはそれに対して一言も返さなかった。

次へhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964493685&owner_id=4632969
前へhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964475662&owner_id=4632969
目次http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964469685&owner_id=4632969
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年01月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031