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2016年09月09日02:34

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『河神の誘惑』第17話

『河神の誘惑』第17話

 仕事を切り上げて官舎に戻ったサガは、入浴と簡単な夕食をとった後、早々に寝室にアケローオス河神と籠った。いつものように、裸になり、河神に抱き締められ、触れ合ったりキスを送りながら、癒しの小宇宙に包まれ、横になった。
 だがいつまでも眠ることは出来ず、深夜になってもサガは覚醒していた。
「…まだ眠れないのか、サガ?」
 目を開けた河神がそっと聞く。互いの肌を通し、サガが悶々と悩む波長が伝わって来ていた。
「すみません…」
 サガの表情は暗く沈みこんでいた。
「ずっと考えてしまって…。もしアイオロスに捨てられたら…、別れを切り出されたら…。私はどうしたらいいのか…」
 河神がどれほど癒しの小宇宙を送ってくれても、サガの心がその悩みから解放されて完全に安らぐことはなかった。
「怖い…。アイオロスに見捨てられることが…。もしそうなったら、私はどうなってしまうのか…。アイオロスのいない自分など、考えられない…」
「お前は…教皇を愛するというより、まるで教皇に心を支配されているようだな」
「…そうかもしれません。彼は私の英雄、光そのもの…。アイオロスが、私の全て…」
「それほどにいい男か、教皇は?」
「誰よりも強い男です。力も心も…。いつもアテナのこと、聖域のことを考え、それを何より優先し…私にはない、明朗闊達な人間的魅力もある。…欠点が多いのも、分かってます。計算高くて、愛に奔放で…だけど一番に私を愛して、執着してくれる…。だから私も、彼から離れられない…」
 そしてサガは河神を見つめた。
「アケローオス様…」
「どうした?」
「私を、抱いて…」
 サガは、今まで越えなかった一線を超えた。
「何も考えられないくらい、めちゃめちゃにして…。そうでなければ不安で…夜が越せない…たまらない…」
「……」
 アケローオス河神が身を起こす。彼はそっとサガを仰向けにして、上から彼の体をのぞき込んだ。優しく頬を撫で、そして唇に口づけした。
「…ん…」
 サガは瞳を閉じた。河神の舌が口腔に入ってくる。彼を受け入れ、舌を絡めて歓迎する。
 脳裏に、以前にように星々が、銀河が渦巻いた。
『ああ、また見える…前と同じに…』
 舌を吸われ、口腔をなぞられ、口の中の性感帯が刺激される。サガの体から力が抜け、体奥から熱がわき出てくる。快楽に、肉体がとろけ始める。
 そっと口づけが終わり河神が離れると、サガはうっとりと言った。
「アケローオス様とのキス…やっぱりすごくいい…。また不思議なものが見えて…」
「気持ちいいか、サガ?」
「ええ…。本当は…ずっとずっと…これをもう一度感じたかった…」
 再び河神が口づける。サガのむき出しの腕や、白くて滑らかな胸を手がたどって愛撫する。胸を小さく飾る突起を、指がつんとこねる。
「あん…!」
 敏感な個所を刺激され、サガが思わず上ずった声を出す。河神の口づけは首筋に、胸にと降りていった。左胸の射手座の印には特に念入りに口づけておく。やがてキスを腹に、腰にと移した。

(以下はR-18なので割愛)

 サガとの愛の交歓を終えて、河神もまた眠りに落ちていた。
 深夜、ふいにサガが覚醒した。身を起こし、隣で眠りにつく河神の顔を見下ろす。
「ふ…ふふふ…」
 サガは一人秘かに笑った。常ならば青い空色の瞳に赤い光が浮かび、銀色だった髪もまた漆黒に変わっていた。
「新しい手駒が手に入った…」
 河神の頬にそっと指で触れ、意識の表層に浮かび上がったもう一人のサガが呟いた。
 サガの心は、善の心と悪の心が不可分の関係にあった。サガが善の心を主人格として復活した時、悪の心もまたその深層意識で復活していたのだ。それはまだ力の弱いものであったが、確実にサガの心の奥深くに息付いていた。
 そして主人格である善の心のサガが深い眠りに落ちて意識を失った時、その隙を突いて深層にいた悪の心のサガが表に現れたのである。
『お前には礼を言うぞ、アケローオス河神よ。お前がサガを愛したおかげで、サガの射手座への愛がゆらぎ、心に隙が生まれた。私が付け入るにふさわしい隙が…。お前には私の手駒になってもらおう、アケローオス河神。そして今度こそあの忌々しい射手座を…』
 サガの心の奥に宿る悪の心は、闇の中でひっそりとほくそ笑んだ。

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