mixiユーザー(id:4632969)

2016年09月01日03:21

382 view

『河神の誘惑』第9話

『河神の誘惑』第9話

 サガがシャワーを浴び終えて寝室に入ると、寝台にはすでに下着姿になった河神が横たわっていた。
「ほら、サガ。ここ、ここ」
 横たわった河神が自分の隣をぽんぽんと叩く。
「はぁ…。では失礼して…」
 サガの寝台はセミダブルであったが、それでも大柄な男二人が寝るには狭い。サガは河神の邪魔にならぬよう、ベッドの端に横になった。
「そんな端では落ちるぞ。もっとこっちに来い」
「ちょ…、アケローオス様…」
 河神が遠慮なく夜着姿のサガを抱き寄せ、さらに腕枕をした。
「ふふ…大きくなったな。昔に比べたらずいぶんと重くなった」
「それはもう子供ではないのですから…」
「そうだな」
 ちゅっと軽く、サガの額に河神がおやすみのキスを落とす。彼に抱き寄せられたまま、サガはまぶたを閉ざして眠りにつこうとした。
『何だか…これではまるで恋人同士ではないか』
 さすがに一緒に寝たとはアイオロスには話せないな…とサガは考えた。アイオロスは寛容そうに見えて、実は嫉妬深い。かつてアイオロスが様々な相手に下心をもって接近されたように、サガにも数は少なかったが、同じように接近して色恋沙汰を仕掛けてくる者たちがいた。するとアイオロスは自分の浮気癖は棚に上げ、激しく嫉妬し、サガに近付いた者、サガが親愛の情を示した者を攻撃し、彼らをサガから遠ざけ、サガを尻が軽いと手酷く非難して責め苛んだ。自分が他の者を知るのは構わない、それは男として勲章になる、だがサガが自分以外の者を知ることは許さない、サガは自分だけに貞淑な、自分だけの恋人でなければならない。それがアイオロスの態度だった。その本質は今でも変わっていないだろう。
 まぁ子供のころの添い寝と同じか…と自分を納得させたサガがうとうととし始めた時。
「…似ているな」
 というつぶやきが耳に入った。
「…え?」
 目を開けると、間近にある河神の青緑色の瞳がサガを見つめていた。
「似ている。こうしていると、エレナがおれの腕の中にいてくれるかのようだ」
 サガの母親の名を河神は上げ、彼の頬を撫でた。
 身を起こした河神は、仰向けになったサガの上にのしかかった。
「…アケローオス様…?」
「おれのことが嫌いか、サガ?」
 サガの頬を撫でながら、河神が問う。
「…嫌い、ではありませんが…」
 時には馴れ馴れしすぎると感じる事もあるが、親しみやすく、おおらかで、気さくなこの河神の人柄には、サガはどちらかと言えば好感を抱いていた。
「ふふ…」
 目を細めて笑った河神が、顔を近づけてきた。
「…ア、アケローオス様!」
 さすがに慌ててサガは腕を突っ張らせて河神を遠ざけた。口づけされるところだったようやく気付いたのだ。
「嫌か?」
「い、嫌というか…。私は母ではありません…!」
 何を求められているかを察してサガがうろたえる。
「分かっている。お前はエレナに似ているが、似ていない」
 だが、と、河神が続ける。
「似ているところも…似ていないところも…おれは愛しているよ」
 突然の告白に、サガは混乱し、慌てた。
「あ、あなたは女性がお好きではないですか!?男ですよ、私は!?」
「うん。だがお前が相手ならやれそうな気がする」
「や、やれそうって…。それに私にはアイオロスという恋人が…!」
「それも分かっている」
 サガの手を取り、河神は甲に口づけた。
「教皇を捨てろとは言わん。教皇を愛するのと同じ心で、おれのことも愛せないか?教皇を想う心の一角で、おれのことを想えないか?」
「そ、そんな…!無理で…!」
 とサガが言おうとした時、河神はサガの腕を押さえつけて無理やりに唇を奪った。
「ん…!」
 サガが思わず瞳を閉じる。その時、脳裏に不思議な光が浮かんだ。
『…なに?』
 星々が見えた。銀河が、瞼の裏に渦巻いた。光でできた大河が、サガの体に浸透してくる。
 熱い河神の舌がサガの口腔に侵入してくる。だが、サガはそれを不快だとは感じなかった。かっと体が熱くなり、とろけるような快楽が脳髄に生まれた。
「あ…な、なに…?」
 わずかに解放された後、再び口づけられる。サガは、もう拒むことが出来なかった。腕は拒否を示すどころか、力が抜け、逆に河神の肩に絡みついた。肉体が異なる意志を持ち、変容したようだった。骨格が、筋肉が、皮膚が、細胞の一つ一つが、神の愛を、祝福を受け入れ、待ちわびている。
「あ、だ、だめ…」
 心地よさに押し流されそうになる意志を必死にかき集め、サガは拒絶を言葉で示した。
「…おかしい…キスでこんな…。どうして…。あなたと口づけると不思議なものが見えて…体がおかしくなる…」
「ふふ…。もう一度試してみるか?」
「あ、や…だめ…」
 三度、サガは口づけられた。己の意志が、精神が、相手の意志に同調し、意のままになり、流されていくのが分かる。うっとりとサガは河神の口づけを受け入れた。
『ああ…そうか…』
 脳裏で見えているものが何かを、サガは悟った。
『これはこの方の神としての本質…。神としての力…』
 唇が離れると、サガは濡れた熱い吐息を漏らした。サガの白い夜着の上から河神が愛撫を加えた。薄い布越しにちゅっとサガの乳嘴を吸う。
「あ…ああ…」
 だめだと思うのに拒むことが出来ず、サガの肉体は従順に河神の愛撫に応えた。触れられるたびにびくびくと体が跳ね、口づけられるごとに肌が震える。体の奥も、頭の奥も、熱くて熱くてたまらない。
 胸から腰のラインをたどった河神の手が、そっとサガの下履きの中に忍び入る。
「ああ…、乳首をいじられただけでこんなになって…」
「…やぁ…」
 はしたなくも快楽に弱い体を指摘され、血液の上っていたサガの頬が一層紅潮した。
 体を起こした河神は身に着けていた己の下着を脱いだ。そしてサガの夜着も全て脱がせた。だがサガの上衣を脱がせて彼を裸体にさせた時、河神は気付いた。サガの左胸、心臓の位置に、横線の入った矢の形をした入れ墨があることに。
「…これは…?」
 サガの左胸にあるのは、射手座のシンボルマークの入れ墨だった。
「アイオロスのため…私が入れたものです…」
 サガが答える。
 復活した後、アイオロスに再び言い寄られたサガは、何か目に見える形で愛の誓いが欲しいと彼に望んだ。アイオロスには自分だけを愛して欲しい、そして自分もまたアイオロスだけを愛したい、そのための誓いが欲しい、と。
 そして二人は、互いの左胸、心臓の上に、それぞれの守護星座のシンボルマークを入れ墨として刻んだのだ。サガの胸には射手座の印があり、アイオロスの胸には双子座の印がある。それは、アイオロスが唯一サガに与えた、彼への愛の誓いだった。
「教皇の所有の印か…」
 河神の指が入れ墨の形を上からなぞる。サガはその感触にぶるりと震えた。
「…ええ、そうです。私は…アイオロスのもの…。これはその証…。だからこれ以上は…」
「嫌だ」
 短くサガの願いを拒否した河神は、唇で入れ墨に触れた。河神の小宇宙が、胸から入れ墨の形越しにサガの皮膚の下に流れ込んできた。
「や…、お願い…そんなこと、しないで…」
 泣きそうな気持でサガは懇願した。それはまるで、アイオロスの所有の印を自分の小宇宙で上書きしようとするような行為だった。

(続きはR-18なので割愛)

次へhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=1955202714&owner_id=4632969
前へhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=1955159120&owner_id=4632969
目次http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1955015140&owner_id=4632969
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年09月>
日 月 火 水 木 金 土
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930