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2015年11月01日00:02

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『オレステイア』第3話

『オレステイア』第3話

 元首公邸に運ばれたカノンはそこで左肩に受けた銃弾の摘出手術を受けた。
「手術自体は成功しました」
 と、カノンの主治医であり「有翼鹿(ペリュトン)」の海闘士でもあるコスティンが語った。
 ラダマンティスは麻酔をかけられて眠るカノンの傍らにずっと付き添っていたが、やがて椅子から立ち上がるとカノンの執務室に足を運んだ。そこにはカノンの側近たちが集まっていた。
「カノンを撃った犯人はどうなった?」
 現れたラダマンティスが彼らに問うと、カノンの副官を務めている「水域公(フォルネウス)」のアルトゥールが答えた。
「市内のポセイドニア神殿に逃げ込みました。神域なので手が出せないのです」
「そうか」
 それを聞くとラダマンティスは身をひるがえし、執務室を後にした。
「ラダマンティス様、どこに…!?」
「その連中、おれが捕まえよう」
「危険です!」
 カノンの秘書官である「水馬(ケルピー)」のクリストファーが市内の状況を説明する。
 カノンを撃った犯人は、過激な共和派の貴族の青年だった。劇場から逃走した彼は仲間とともに、市内の広場で「独裁者は死んだ!自由は回復された!」と人々を扇動した。だが市民たちは扇動に乗るどころか、カノンを傷つけた犯人たちに怒り、「裏切り者!」と叫んで逆に彼らを襲った。そして犯人たちはほうほうのていで市内のポセイドン神殿に逃げ込んだというのである。
 市民たちの間には「すでにシードラゴン様が亡くなられた」と噂が広がり、貧民の間では混乱に乗じた暴動の恐れもあるという。富裕な者たちは略奪を恐れて自宅の防備を固めている状態で、警官が配備された市内は物々しい雰囲気になっている。
「だからなんだ?」
 静かに、だが重々しい声でラダマンティスが告げる。
「神域だから手が出せない?冥府の判官であるこのおれが、ポセイドンなどをはばかると思うか!?」
 そして彼は冥衣を召喚した。
「来い、ワイバーン!」
 冥界から漆黒の翼竜が主人の声に応えて姿を現した。ワイバーンの冥衣が分解し、ラダマンティスの体にと装着される。
 そしてラダマンティスは公邸から外に出ると、そのまま空を飛んでポセイドニア市内へと出ていった。
「…冥衣を呼んじゃったよ…。あれは相当にぶち切れてるな、ラダマンティス様…」
 飛んでいったラダマンティスを見送り、クリストファーが呟く。
「そうだな」
 短く、アルトゥールが答えた。
「犯人を殺さないといいんだが…。背後関係を探らないといけないし…。アルトゥール、後を追ってくれ。現場にいるダニエルたちと合流して犯人たちを何とか生かしたまま捕まえるんだ」
「了解」
 そうしてアルトゥールはラダマンティスの後を追って市内に走り出た。

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