昼寝をしていて、久しぶりにたいへん奇妙なユメを見た。
雪の積もった原野に線路が伸びている。その線路の真ん中を、エドガー・アラン・ポオと美女が両手を組み合わせ、頬をぴったりくっつけて、前を向いてそれぞれの左手、右手を突き出したまま駆けている。何かのダンスを踊っているうちに、気分が高まってそのまま外へ飛び出したような感じだった。二人とも無表情である。
その様を見守りつつ、私はここ数日ポオと猟奇殺人の謎を追い、議論を交わしていたことを思い出していた。
Why face whether the one(顔はなぜひとつなのか)?
壁にそう血で殴り書きされ、床には男の首なし死体、男の生首、そして男の身内が見たこともないという女の生首。それらが両性具有のように配置されているのである。
「首を斬るのは身元をごまかすのに有効な手段だ」とポオ。「必ずしもヘッドとボディが一致するわけではない。しかしヘッドを余計に足すのはどんな目的があるんだろう?」
「さっき両性具有のようだと言ったね。犯人がそういう“天使”になりたがっていたとしたら?ものすごくなりたがっているんだよ。いずれ自分のボディにヘッドを足すために。そのための実験だとしたら?」と私は自分の考えを述べたが、ポオはそんなバカなことがあるかと露骨に呆れてみせた。「必ず理由があるはずだ、論理的な理由が・・・」
ポオは幻想や妄想もそれなりに説明がつくと信じていた。それゆえに偉大な推理小説家でもあったのである。しかし私はポオにあなたのファンですと自己紹介してからは、説明は人間の弱さからくる合理性手段、即ち自己満足に過ぎないと真っ向から反論した。
「私の時代では殺人に理由などないのです。衝動のままに血を求めるのです」と私。
「それでは犯人は狂人だということになる。狂人がこんなに計画的に殺人を犯し、そしてうまく身を隠せるものかね?」とポオ。
「そう、頭のいい狂人なんです。狼だって悪知恵が働くでしょう?我々はまさに人狼のような人間を追っているわけですよ」
私たちが飲み食いする酒場では奇怪なショーが行われていた。首なし男が自分の服を開くとシャツのなかからもうひとりの男が現れ、続いて女が現れる。「頭はひとつ、目はふたつ、鼻はひとつ、口はひとつ、手はふたつ、心臓はひとつ、足はふたつ・・・」と男が歌い上げ、女が「そう思ってたら大間違い!」と声を張り上げる。
私はベトナム戦争の枯葉剤やチェルノブイリなどで生まれる奇形児を思い浮かべて、真犯人、真相に気が付いて、思わず震え上がった。泥酔したポオに肩を貸して帰路を辿りながら私は囁いた。「犯人はあなたなんですね。やたら物事を論理的に考えたがる、それはあなた自身の衝動を覆い隠すためのものです。あなたこそが人狼なんです。そしてあなたは生まれながらに頭が二つある奇形児なんですね、肉体的にではなく、精神的に・・・」ベッドにポオを横たえながら私は続けた。「こんなことは警察、裁判所に言っても誰も信じないでしょう、この時代じゃまだまだ・・・だからあなたは捕まりもせず、殺されもせず、死ぬまでさまよい続けるしかないのです。恐ろしい殺人を犯しながら・・・」
線路の上を走り続けるポオと美女。服が破れ落ち、上半身があらわになった。それを遠くから目を凝らしてみると、ポオと美女の上半身は腰のところで一体化していた。彼は単に自分の同類が欲しかっただけなのだ。
そんなユメであった。
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