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2013年11月05日17:23

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宮崎勤の部屋のアバウトさ。

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宮崎勤による連続幼女誘拐殺人事件が世を騒がせた1989年当時、私は二十歳の誕生日を迎えたばかりであった。
その時、犬神図書館の原型となるコレクションはすでに手がつけられないほどの量に達していたので、友人知人は半分冗談、半分本気で探りを入れるように「おまえ、大丈夫か」と聞いてきたものだ。上に貼ったような雑誌の記事を鵜呑みにするものにとっては当然の心配であろう。

私はきまってこう反論していた。

「宮崎は三倍速のテープにアニメと洋画を録画していたっていうぜ。そんなアバウトなやつと一緒にするんじゃねえ」

それを聞いて、私の部屋を訪れたことのない知人どまりはピンとこないようであったが、私の部屋に一度でも来たことのある友人たちは納得していた。録画テープはすべて標準、タイトルは手書きでも映画ポスターのロゴを丁寧に模写、着色するという凝りようだったからだ。それに本も吾妻ひでお、内山亜紀などロリコンに直結する漫画、アニメは大量にあったが、それは全体の蔵書のほんの一部にしか過ぎなかった。しかもレコード、カセットも大量にあった。そして、すべてきちんと整理整頓され、初めて来た人も本棚を興味深く眺められるようにしてあった。
だから、私はオタク以上の存在として見られ、マニアという名詞で認識されていた。

それでも世の中というものは、本の虫イコール欠陥のある人間イコール性犯罪者予備軍とカンタンに片付けたがるもので、私はこれまでにいわれのない偏見をずいぶん受けてきた。まあ、日頃の行いがアレだったし、女癖も非常に悪かったので、しょうがないと諦めていた。

でも酒鬼薔薇のハナシを書いている今、あらためて、宮崎のアバウトさは一体何だったのかと考えてみた。
あのアバウトさはマニアにはあるまじきもので、作品を高品質で残したいと考えるならノイズの入りやすい三倍速で録ることなどありえないことなのだ。しかも一本にアニメと洋画を混在させるという無神経。宮崎がもし私のクラスメイトだったら、指をさしてひどくバカにしていたことであろう。
従って、本命は作品そのものには全くなかったと考えるのが自然である。
では何が本命だったのだろう?
それは「持っていること」そのものだったのではないだろうか。とりあえず録った、買ったで満足するというやつだ。

その気持ちが暴走した結果が、幼女殺害という現実だったのだろうか?

そうだとしたら、大量の情報を前にしても、のめり込むことがついに出来なかった、結局、現実と空想の区別がついたままで、現実のなかに置いてきぼりにされた孤独な気持ちがああいう行動に走ったと考えられる。

要するに正しい妄想が出来なかったのである。上手に狂うことが出来なかったのである。自由にあっちとこっちの世界を行き来することが出来なかったのである。作家の橋本治は宮崎の部屋の写真をひと目見て、「頭の悪いヤツ」と切り捨てていたが、全くそのとおりだと思う。想像力が貧困な頭では、結局、短絡に走ることしか出来ないのだ。

犬神図書館の理念は本棚のなかに本を眠らせるな、誰でもいいから貸し与えて読んでもらえ、である。そうやって情報を共有することで、フィードバックを重ねて想像力を豊かにする。

最近、犬神図書館から本を借りていながら、紛失した上、本のタイトルを忘れたという信じがたい元マイミクさんがいたが、彼女のように「借りていること」で満足するのもまた想像力の乏しい人間といえよう。
私は本を持ち、読んでいても、想像力が働かない人間をものすごく嫌悪し、軽蔑する。読んでいかに自分の世界が拡がったか。その報告がなければ結局は所蔵の自慢話に終わってしまうのだ。

おまえには興味はない。興味があるのは、おまえがその本をどう読んだか、それだけだ。

宮崎はそういう意味で、オタクでもマニアでもない、自己顕示欲むきだしのさみしがりやのぼっちであった。死刑執行されて久しい今、ミンキーモモや007の感想を聞き出す機会は永久に失われてしまったが、おそらく一般人と同レベルの知識しか持ち合わせていなかったであろう。私は誰が声優をやっているか、キャラデザは誰か、そしてジェームズ・ボンドの好みのタバコの銘柄は何か、原作者のイアン・フレミングの児童向け「チキチキバンバン」がどんなハナシか・・・詳細に至るまでべらべらと喋ることが出来る。

かくしてアバウトな人間は人様に迷惑をかけたり、傷つけたりして、しまいには自滅してしまう。

道を極むるもの、善きかな。
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